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全四十話(とか言いつつ、まともにそうなったためしがない)
異世界系美醜逆転物語(なんで異世界系なんだろう?)
道路はいつしか、石畳が広がっている。仁志は顔を上げると、遠くに背の高い茶色の煉瓦造りであろう頑丈そうな壁と、その後ろにそびえる西洋風の白い城が見えた。
まさしくファンタジーだった。現代の日本人が見れば興奮して飛び上がるだろう――。しかし、仁志の顔色は優れない。先ほどのことが糸を引いているということは、誰が見ても歴然だ。
仁志の頭の中には、これまでのリーシャが走馬灯のように駆け巡っていた。リーシャの言葉や、態度を思い出して、違和感が膨れ上がっていくのを感じた。横で御者をするダンに見えない位置で、仁志はぐっと拳を握りしめた。
――リーシャは怖くない。彼女はいつだってどこか悲しそうだった。きっと、あの力で酷い目にあっていたに違いないのだ。
だからこそ、仁志は苛立った。心がぐつぐつと煮立った。握り締めた拳の力をさらに強めて、痛いほどに握り締める。苛立つ対象は自分であり、拭えない恐怖に対してだ。
焦げ付いた恐怖は、簡単には取ることができない。リーシャは怖くないと、自らに言い聞かせようと、拭えることはなかった。
――それでも、仁志の中で断言できることがある。リーシャを幸せにしたい、二度とあんな不安と恐怖の混じった表情をさせたくないということだ。
目をぎゅっと瞑り、ゆっくりと開いた。それだけで、世界が切り替わったようにクリアに映った。
「ダンさん」
「ん、なんだ?」
「俺、リーシャを笑顔にするために、がんばります」
「あぁ、がんばれよ」
ダンへ言ったのは、自分への戒めだった。少し悪いとは思いつつも、ハッキリと伝えた。ダンは優しげな表情で頷いた。
リーシャが話してくれるまで待とう、そしてリーシャが話してくれたとき、受け入れるために今をがんばろう、仁志はそう心に誓った。
王都へと続く、鎖に繋がれた橋が降りている。ダンは橋の隅に立つ二人の門番を抜けて、壁をトンネルで抜けた。
世界が一変する。石が敷き詰められた通路をゆっくりと走りながら、仁志は周囲を見まわした。
丸い広場にあるのは、市場だ。最初の街よりも大きい。人通りが多く、人々は明るい笑顔を浮かべていた。色とりどりの野菜や、肉、魚などが売られ、肉の焼ける音と、呼び込みの声が耳に入った。中心には噴水が水を噴き出しており、子供たちがはしゃぎまわっている。
荷馬車は人ごみを縫うようにして、市場を抜けた。
走り続けていると、だんだんと建物が大きく、豪華になっているのを感じた。
――もしかして凄い人のところに行くのだろうか。仁志はダンへと訊いた。
「どこにいくんでしたっけ?」
「ん、俺の友人の家だな。貴族だ」
「……貴族ですか」
貴族という言葉は、歴史の授業やゲーム上でしか聞けない言葉だ。現実の貴族ってのはどうなのだろうか、いくら考えても太った白人男性やら、ドリルな髪をした金髪お嬢様くらいしかでてこない。
「どんな人なんですか?」
仁志が訊くと、ダンは途端に苦虫でもかみつぶしたような表情になった。
「酒乱だ」
「酒乱?」と仁志は問い返すと、ダンは頷いた。
「紳士的だが、酒が入ると途端に暴れる。前に飲みに行ったら、全裸になって逆立ちして、足で俺の頭に抱きつこうとしてきやがった」
「あー……ノーコメントでいいですか」
ダンは頷いた。思い出したのか、顔が若干青い。
「それ以外はいいやつなんだ――ま、とりあえずあれだ」
ダンは指し示した場所を辿ると、黒い檻のような塀が見えた。その先にはやぼったくない程度の木々の群れが続き、遠目にひょっこりと屋敷が見える。
煉瓦で出来た道。美しく管理された庭。さらに遠くに、黒い屋根、白い壁の屋敷がある。仁志が評価場所を探さずとも、綺麗な家だなぁと感嘆させた。
塀を沿っていくと、正門へとたどり着いた。そこには初老の男性が立っており、ダンの荷馬車が現れるや否や、礼儀正しく一礼をした。
ダンは少しずつ荷馬車の速度を落とすと、初老の男性の前でぴたりと止めた。仁志に降りる様に促し、流されるままに降りると同時に、ダンも地面へと降り立った。
そして、ダンはすっと自然に頭を下げ、あげると同時に頬笑みを浮かべて、言った。
「お久しぶりです。アルフレッド殿」
気品を感じさせる声色に、仁志は目を丸くした。
アルフレッドはダンをまっすぐとみて、嬉しそうに笑うと、頷いた。
「えぇ、えぇ、お久しぶりです。それで……こちらのかたは?」
「私の取引相手です。ヒトシ、といいます」
紹介されて、戸惑いつつも一礼をする。
「ほう、この若さで貴方の取引相手ですか。顔立ちからも誠実さがうかがえますし、貴方が選んだのですから、素晴らしいお方なのでしょうね」
「はは、もちろんです。ヒトシは優しく、誠実な少年です」
「あ、ありがとうございます」
何と言っていいのかわからなくて、苦し紛れに礼を言った。アルフレッドはそんな仁志をみて、頬笑みを浮かべると、後ろを振り向き、「門を開けなさい」と言い放った。
キィと金属音を立てながら、門が開いていく。門の向こう側から、鎧を纏った青年がこちらへと近付いてくるのが見えた。
「では、この青年に馬車を移動させましょう」
ダンは頷くと、「よろしく頼むね」と青年に手綱を渡した。青年は「はい、お任せください」と笑顔で受け取ると、荷馬車前部へと飛び乗った。
ダンは口元に手を当てて、荷台へと声を張り上げた。
「おい、四人とも降りてくれ!」
四人の姿が現れた。アイリスは気絶から立ち直ったようだ。
ダンは姿を見るや、すぐに青年へと「いってくれ」と声をかけた。
手綱の鋭い音が空気を裂いたかと思うと、馬の嘶きと、蹄の地面をたたく音が起こり、車輪の音と共に去って行った。青年を乗せた荷馬車を見届けると、仁志はリーシャの姿を探した。
彼女は目の前に居ればすぐに抱きついてくるため、姿を探すのは珍しい。
「リーシャ」
口をきゅっと結んで、お腹の前で手を手を握り締めあう姿を見つけ、仁志は声をかけた。
リーシャはビクリと肩を揺らしたかと思うと、仁志をまっすぐとみた。そこへ、アイリスが肩をがしぃっと少し強めに掴むと、リーシャを巻き込んで、こちらへと歩き始めた。
「はい、どーん」
アイリスは、リーシャの定位置へと突き飛ばしたかと思うと、ぎゅっとリーシャを抱きしめる。
「――怖くないわよ」
ポツリと漏らしたかと思うと、アイリスは反対側へと回り、仁志の手を握り締めた。
とたん、リーシャは、がばりと腕へと抱きついた。顔をうずめて、ずっと動かない。
仁志は最初は戸惑ったが、すぐにアイリスの言葉の意味を思いついて、笑顔を浮かべた。
「その、私たちはどうすればいいのでしょうか?」
そこへメルラドの声が聞こえた。仁志は視線を感じて振り向くと、まっすぐと冒険者の二人が見つめてきているのに気がついた。
ダンに問うべきだと思うのだが――と思いつつ、ダンへ首をねじり、視線を向けると、彼は悪い笑みを浮かべていた。
「おっと、オークションまでの護衛が欲しかったんだなぁ、もう一度募集はいやだなぁ、どうしようかなぁ? 信頼できる人がいいなぁ?」
チラリチラリと二人の姿を見た。彼女たちはその視線にハッとして、自分の胸へと手を当てて、身を前に乗り出していった。
「で、では、継続でよろしいでしょうか、そうなるとお安くなりますね」
「銀貨数枚で十分ですね!」
「おお安い、お買い得だ! ヒトシ、どう思う!」
「――え、えぇ、いいと思いますけど」
「じゃあ決まりだな!」
流れる様に会話がなされ、継続が決定されていった。終わるとすぐにダンはアルフレッドへと振り向いた。
「申し訳ない、会話を中断しました」
「いえ、いいんですよ」
と、アルフレッドは頭を振って答えると、周囲を見まわして言葉を続ける。
「では、ダン様は、旦那様がお待ちなので、本館へ、後の皆様は別館のほうになります」
バラバラであるが、その言葉に全員が頷きを返した。
「途中までは同じ道のりですので、分かれ道からは、お嬢様のお付きのメイドに案内させますので……」
そう言って、アルフレッドは踵を返して歩き始めた。その後ろへと全員がついていく。
煉瓦の通路を歩き続ける、数分ほどではあるが、敷地の大きさに仁志は口を半開きにして驚いた。頭の中で自分の家と比較をする。――比較できなかった。端から端まで三歩ですむ庭を思い出しただけで馬鹿らしくなってきて、さっさとやめた。
景色を眺めていると、前に居るアルフレッドが立ち止った。仁志はそれに倣い立ち止り、分かれ道であろうかと前方へと視線を移すと、思った通り道が二本に分かれている。看板が置かれているが、文字がわからない。好奇心を無暗に出したら、庭で迷うことになるだろう――。仁志はここにいる間はおとなしくしよう、と心に誓った。
「それではもう片方を――おや、ルナリアはまだでしょうか――」
アルフレッドは周囲を見まわしている。仁志も、誰が来るのか気になって、周囲を見まわしていると、ふと視線を感じた。
「うん?」
視線の主を探していると、庭に生えている木々に、半分顔を出してこちらを見つめる姿があった。仁志が見つめていると、その人影はすっと消えたかと思うと、すぐに表れた。
メイド服、女性のようだ。髪色は藍色で、肩まである。――顔はわからない、仮面を被って――
仮面!?
白い笑った顔の仮面だ。ミステリーにでてきそうだ。
仁志はパクパクと口を開閉してそれをみつめていると、アルフレッドはそれに気づき、視線を辿った。
そして仮面とメイド服の女性へと、笑顔――確実に背後に修羅が見えるが――を浮かべた。
「……ルナリアさん、何をやっているんですか?」
「……仮面のメイド、ルナリア――ごめんなさい」
決め台詞のように言い放ったかと思うと、素直に謝るルナリア。アルフレッドは頭が痛そうに、軽く頭を手で押さえながら、はぁとため息をついた。
「とにかく仮面を取ってください、家の礼儀を疑われます」
「執事長、お言葉ですが、私の顔こそ礼儀の腐海です。言わばすべての礼儀を腐らせる、地獄の釜すら劣ると言われる場所なのです。礼儀を纏おうとも、すべてが腐り落ちてしまうのです」
何を言っているんだこの人は。
「いいですか、この敷地内では、何があろうとも礼儀は必要不可欠です」
咎めるようにアルフレッドは言った。ルナリアは少し呻いたかと思うと、仮面へと両手をかけた。仁志も思わず、仮面の下が気になってしまい、身を乗り出すと、彼女はそれに気づき、ばね仕掛けの玩具のように、ぐりんと首をまわしてこちらを見た。
「うわ!?」
「――仮面越しに天使が恐怖に顔をゆがませる、これを礼儀知らずとして何と言いましょうか」
「いや、いきなりこっちを見たから……」
そもそもその仮面でいきなり振り向かれて、驚くなというのが無茶だ。
弁解をしようと、仁志は声をかけたが、ルナリアは聞こえているか聞こえていないかはわからないが、言葉を推し進めていく。
「えぇ、私はわかっております。礼儀こそ人が持つべき必要なものであり、どんなかたにでも礼儀を尽くすべきであると、アルフレッド様は前々からおっしゃっている、えぇ、わかりますとも。それでもあってはならぬ時、というものがあります。それは今なのではないでしょうか、今でしょう!、今でしょう!」
「仮面を取りなさい」
ルナリアの言葉の軍勢は、一太刀で崩壊した。
「……はい」と聞き取りにくい声でルナリアは言った。そして、仮面へと手をかけるとゆっくりと外した。現れたのは、眼力の強い切れ長の瞳が特徴的な、整った顔立ちだ。
頬を染めた顔と、冷淡そうな真顔は、色っぽさとミステリアスな雰囲気を感じさせる。先ほどの言葉からして、自分の顔に対する卑下が極端だ。仁志はいつも通りの違和感に襲われ、考えるのが面倒なので、どこへやらと投げ飛ばした。
「例えるなら私の顔というものは、まさしくあってはならぬもの、エグゼレスの箱庭のようなものなのです。終焉を告げるものが住まいしその場所は、時をもってこの世界と繋がり、混沌を呼び込む。まさしくそうなのです。アルフレッド様、貴方は仮面という壁を取り外した。そして私の顔面という終焉が今」
「ルナリアさん、彼らを別宅へ」
「……はい」とルナリアはか細い声で言った。二度目となるそのシュールな光景に、仁志は吹き出しかけたが、奥歯をかみしめ踏みとどまった。
「では、こちらです」
ルナリアはそう言って分かれ道の右を歩き出す。仁志はついていこうと足を踏み出した。
その時、ダンはすれ違いざまに声をかけてくる。
「じゃあ、後で合流しよう――後でな」
「はい、後で」
仁志は薄らと理解した。ダンは、後で何が起こったか話を聞くと言っているのだろう、と。
ダンは仁志の返答に頷くと、歩みを進めていく、仁志はその様子を横目で見届けると、すぐにルナリアの背中へと視線を戻した。
どんどんと進んでいくと、ルナリアよりもはるか遠い前方に屋敷が現れた。恐らくはあれが別館なのだろう、と仁志が思っていると、ルナリアはぴたりと足をとめた。彼女はゆっくりとこちらを振り向くと、優雅に一礼をした。仁志は思わず礼を返した。
「自己紹介がまだでしたね、名前はアルフレッド様の仰ったとおり、ルナリアと申します。ルナというのは月という意味でありまして、私が生まれた時にはそれはそれは、大きなまぁるい満月だったそうです。あの月のような女性になるだろうと言われて、すくすくと育ってまいりました。――あら、いやだ、月はいつの間にやら、男を腐らせる光を放ち始めたようです。いつのまにやら男――いえ、父にすら顔を見せてもらえないのですから。――な・ん・ちゃ・って」
空気が凍った。和ませようとしていることは、最後の言葉でわかったが、問答無用の絶対零度で凍らせた後、ハンマーで砕かれた気分だった。
そんな様子を見て、ルナリアは首を傾げた。
「素晴らしいジョークだったのですがね、お嬢様などは、言うたびに涙を流し、絞り出すように「もうやめて……お願い」などと、笑いをこらえながら言うと言うのに」
「ルナリア……それ違うと思うわ」
アイリスが声をあげた。言葉を聞くに、どうやら既知の間柄のようだ。
「おや、アイリス様、おられたのですか。――いえ、荒れ地の月が明るすぎて、荒れ地が目に入らなかったのです。決して忘れてはおりません。大輪の水晶花の下に、毒々しい花が咲いていたとしましょう、人は本能的に上の美しい花をみるでしょう?」
「……まぁ、いいわ……」
「何はともあれ、お久しぶりでございます。ご健勝で何よりです。お嬢様が各地のお話を楽しみに待っております。できることなら、お時間を頂きたいところですが、よろしいでしょうか?」
ルナリアの言葉に、アイリスは少し考えたかと思うと、頷いて、仁志を見た。
「屋敷のほうについたら、私は少し離れることになります。友達に会いに行かなければなりませんので。……ルナリアは、まぁ色々とおかしなところがありますが、話してみるといい人ですし、メイドとしてもすごく優秀なので……」
アイリスはこの先のことを話しつつ、ルナリアのフォローをした。仁志はその言葉に、苦笑いを浮かべつつ頷くと、アイリスは「ありがとうございます」と言って頷いた。
「では、先に進みましょう。時間を取らせました。名前、覚えていただけると嬉しいです。いや、腐り落ちるのが嫌だと言うのなら、それは全く正統な理由なのです。私の名前などゴミ捨て場へと投げ捨ててもよろしいかと」
「えっと、ルナリアさん」
仁志が声をかけると、ルナリアの顔は一瞬のうちに紅潮し、蕩けるような表情になった。
「はぅぁ……何という脳髄痺れる甘美な――はっ、なんでございましょうか。私を直視してはいけませんよ、腐りますから」
「いえ、別に腐りませんから……」
「いえいえ、如何に光の衣に護られようとも死へのカウントダウンから逃れられないものなのです。エルフでも死から逃れられないということは、私の――」
真正面から言葉の軍勢を放たれている。一言言いたいだけだと言うのに、なぜこんなに難易度が高い。
仁志はふとアルフレッドとルナリアの会話を思い出した。
「ここにいる間よろしくお願いします!」
会話を倣い、引かれていく言葉の線路を叩き斬るように言い放った。指令ではないか、と不安に思いつつも、彼女の顔を見る。
「――お、おまかせくでゃ――こほん、ください」と、若干噛んでいるが、彼女は特に表情を変えることもなく、一礼すると、再び歩き出した。
ルナリアの耳が真っ赤に染まるのを、仁志は気付かない。失礼だったのかもしれないという後悔が、彼の中で渦巻いているためだ。
歩くに従って、屋敷の姿も大きくなっていく、庭は寒い季節だと言うのに、花壇に咲く色とりどりの花々に彩られ、それが白の淡白な、飾り気のない色合いの別館と相まって、幻想的に映った。
仁志は周囲を見まわすと、別館の二階部分に、人がいるのが映った。
遠目なので、詳しいことはわからない。白い陶磁器のような美しい肌と、青っぽい銀色の髪色だけははっきりと見て取れた。
――深窓の令嬢、という単語が仁志の頭の中に現れた。
その時だった、ふと、目があったような気がした。気がした、と思ったら、カーテンがしゃっと閉められて、姿が見えなくなってしまった。
目があったのだろうか、と仁志は考えた。ポジティヴに考えることが不得意な仁志は、顔が気味悪かっただろうか、と考えて、少しばかり鬱屈とした気持ちになった。
そんな気持ちは、ぐいとひっぱられた腕に打ち消された。
思わず腕に視線を向けると、リーシャが、目と鼻の先にまで近づいていた花壇へと手を伸ばした。咲き誇る花へと触れると、嬉しそうに顔をほころばせた。
「お兄ちゃん、綺麗だね」
瞳が些か赤く見えるリーシャは、花にも劣らない笑顔で仁志に笑いかけた。
仁志は先ほどの感情を忘れ、無邪気な笑顔を浮かべた。
全四十話(最初は平均四千文字で大丈夫だと思っていた)
異世界系美醜逆転物語(一応美醜逆転が柱になって終わります)
次は、幕間です。事件から王都までの、荷馬車の後部での女性の会話です。