うちのダンジョンは色々可笑しいらしい
他の作者の方の小説を読んでいて勢いで書いてしまいました。
第4弾。
テーマは『ダンジョンマスター』『ヘタレもどき』『女嫌い』『日本人?』です。
明るい話を書きたくて書きました。
『つぶやき@異世界なう!』より
コラボに伴ってエピソードを追加(二行だけ)
注意事項
*彼は女嫌いですが男に恋愛感情を抱くという訳ではありません。
(トラウマをいろいろと思い出すそうなのでそっとしておいてあげましょう)
*彼は人間で無いと自分で言いますが、魔物である事を自覚してもいない様です。
(見た目に反して生まれて数年の子供なので暖かく見守ってあげましょう)
*彼は基本気弱ですが、変な所で気が強いです。
(警戒心はすぐ解けるのでがまんして優しく接してあげましょう)
*彼は基本部屋では浴衣もどきを着ています。
(他の人は前合わせの服又は前合服と呼んでいます)
*彼の行動にやましい所は一切ありません。
(もう一度言いますが中身は人の温もりを恋しがる子供です)
人の手が入れない森の少し開けたそこで。
その人物は光で作られた薄い板の様な物を見て首をかしげた。
「<スキル:ダンジョン制作>?」
少し緑がかった黒の、フード付きローブを着た小柄な少年。
少年から大人へ変わる二歩目を踏み出した位の顔つきをしていた。
画面越しにこの物語を覗くあなたが、彼を見る事が叶ったらこう思うでしょう。
『うん。普通に日本人だ』と。
しかし残念ながら彼は、この世界生まれ、この世界育ちです。
その少年は両腕を突き上げて喜びの限りを叫んだ。
「これでもう襲われる心配も無く屋根の下で寝れるぞ!!!!!!」
そもそも彼は人間じゃございませんが。
とある木属性中位精霊の一言(疑)
ー僕ら精霊に君が契約を持ちかけると言うの?
とあるBランクチームリーダーの一言(驚愕)
ーこれが……家、だと?
とあるギルドマスターの一言(呆)
ーお前、本当に魔物か?
とある元貴族の一言(嘆願)
ー私をここで雇って頂けないでしょうか?
とある結構偉い神官の一言(唖然)
ー浄化しても大丈夫なんですか!?
とある女冒険者の一言(怒)
ーあんた私に何をしたっ!?
とある元孤児の一言(呆然)
ーえっと……これ、何?
とあるSランク冒険者の一言(眠)
ーう、うわぁぁあああああ!?
とある異世界人の一言(困)
ーそれ、何時の時代のナンパですか?
とあるダンジョンマスターの一言(号泣)
ー女なんて……女なんて大っ嫌いだあぁぁあああああああ!!!!!
「うっ…う゛…ぐすっ」
冒険者ギルドの一角、ギルドマスターの部屋にて。
「俺が悪かった、お前が悪い事をした様に言った俺が悪かった」
ソファーに座るその少年は、えぐえぐとのどをならしながら泣いていた。
「う…俺はっ、俺は!ただ助けただけなのにっ!ひぐっ」
そして隣に座る子供に泣かれそうな強面の人物に慰められていた。
「前はいきなりほっぺ叩かれるし、今度は襲われかけるしっ!
しかも逆恨みであんな噂を立てるなんて!!」
「あぁ、お前は悪く無い。悪いのはあの女の方だ。だから落ち着け、な?」
「もういっその事、女性立ち入り禁止にしてやるっ!!」
「な!?さすがにそれはまずい!苦情が殺到するから思い直せ!!」
「そんなの知った事か!俺んちなんだから俺の自由にするだけだ!」
「男性のみ立ち入り許可なんてしたら!今度はお前が男色家だって噂流されるぞ!」
「…………なにそれありそうでいやだ」
~うちのダンジョンを利用して頂くにあたって~
・不法侵入は犯罪です。
*場合によってはそれ相応の処分をします。
・ダンジョン内において命の保証は一切いたしません。
*自分の命は自分で守りましょう。
・ゴミのポイ捨てはやめましょう。人の家を汚さないでください。
*利用態度があまりにも悪い場合は以後の利用をお断りする場合があります。
・夜は魔物が湧いて危険なので気をつけましょう。近づかない様に。
*人が寝てる時に勝手に死んだ事に文句を言われても困ります。
・”掃除係”および”お手伝い係”を攻撃してはいけません。
*蛍光色の制服と魔物よけの鈴が目印です。
・”掃除係”に回収された落とし物はすべてダンジョンマスターに所有権がうつります。
*貴重品の管理はしっかりしましょう。(買取可)
追加事項(●●/●●)
・俺に攻撃しないでください。
*正当防衛による損害の文句は一切受け付けません。
~ダンジョンマスター ビャクヤ ~
~Xランクダンジョン『守護迷宮』を利用するに際して~
限定誓約書類:強制力無し
ギルドで推薦される階層より下に無断で立ち入った場合、ギルドはいかなる保証も致しません。
5階以下はギルドによる救助は一切できません。
これを理解しこれを承諾します。
*重要注意事項
ダンジョンマスターは気まぐれに人を助ける事があります。その際の注意事項です。
ダンジョンマスターに遭遇しても普通に接してあげてください。
ダンジョンマスターを襲ってはいけません。
*場合によりギルドから処罰有り。
助けてもらったらきちんとお礼を言いましょう。
~冒険者ギルド マルク支部 ギルドマスター ジャン・マルク ~
銀の髪を血に染めた青年は忌々しげにその魔物を睨みつけた。
大きくは無い。一見ただの蛇に見える。だからと言って侮れるはずなど無い。
魔物同士が喰らい合う迷宮で第7層へ下るほど生き延びて来た化物なのだから。
青年は血を失いすぎた。
立つ力も失い意識が闇へと落ち行く青年は、ただ弱肉強食という単純明快な獣の理に沿って喰われるのを待つ餌だった。
蛇は青年が気を失った事を確認すると喰らわんと飛びつく。
いや、飛びつく前に自らの影から飛び出て覆う闇に、命を喰われてもの言わぬ骸となった。
命を喰らい終えた闇は、青年の前へと這うとそこの地面から盛り上がる様に人影を作り出した。
闇を切り抜いた様な漆黒のローブがゆらりとはためく。
青年は、強者こそが王と言うもう一つの単純明快な世界の理に沿って生かされたのだ。
青年は、それに壊れてしまわない様優しく抱きかかえられると、それと共に光の泡と成って消えた。
暖かな暗闇とまどろみの中で。
もぞりと何かが動いた。
「う……」
薄く目を開ける。
何処かから差し込む光が眩しい。
朝なのだろうか?
光源の方を向く。
シンプルな白い壁と上質な布で出来てあるだろうかけ布。
それと細やかな装飾が施された木の台。
そこに丁重に置かれた一冊の本が目に入った。
ぎゅ
「!?!?」
突然体を何かが締め付けた。
全身をしびれるような感覚が走り、拘束している原因を探れと命令を走らせる。
そしてさっきとは反対の方を向く。
そこに居たのは人
光を返す日焼けの無い健康的な黄色肌。
夜闇を切り取ったような細い髪がそよ風に揺れる。
警戒心も無く幸せそうに眠る顔。
俺と同じ白地にさり気ない金の装飾の入った
前合わせの薄着を着ていて
すその 間から 覗く 傷の 無い 手と
重なる 布から 覗く 細い 足が
俺の体を 拘束していた。
それは
大人になりきれていない
あどけなさと
愛らしさを残した
少年。
「う、うわぁぁあああああ!?」
世界で10人しか居ないSランクの中でも上位に属するその青年は、
守護迷宮に入ってから一番の恐怖から悲鳴を上げた。
異常に高性能な壁によってこの悲鳴がすべて吸収されたのは、彼にとって救いだったに違いない。
「と言う事だから抱き枕になってくれ」
「ふざけるな!」
「俺は悪人じゃないけど善人でもない。神殿に行って金札10枚は堅くないほど他所だと手間のかかる治療を、ただでするつもりは無いぞ」
「う゛、だからと言ってだな……」
「良いじゃん。ただ抱き枕になるだけで命が助かるんだから、儲けもんでしょ?」
「あ……ぅ」
「ね?」
「…………」
「とりあえず今は、おやすみなさい」
「私はこれで下がらせて頂きます」
「ああ。何かあった時の対応はよろしく」
「救助要請がきた場合はどうなさいますか?」
「というよりあらかじめ今日は引きこもるって言っといて」
「よろしいので?ギルドからの派遣員から苦情がくるかもしれませんよ?」
「ほっときゃいい。最近ギルドの冒険者、いざとなったら俺を頼れば良いって思っている様な節もあるしね。自分でどうにか出来ない様なら他で死ぬだけだ」
「それもそうですね」
「もとより救助は俺の自由意志によるものであって、誰に強制されるいわれは無い。俺は自分を守る為の自宅兼トラップを狩り場として貸し出しているだけだし救助をする役目で雇っている奴らを用意しているんだからそいつらにさせれば良い」
「そのように伝えておきます。では、おやすみなさいませ」
「おやすみ、セバス」
『白夜の書』から産まれた魔物。
魔物であるが故に人里におりる事の出来ない俺は樹海を渡り歩き、つねに魔物に襲われる危険性をはらんだ気の休まらない生活を送っていた。
ある日<スキル:ダンジョン制作>を得た俺はこれ幸いと森の精霊と交渉し、絶対安全な部屋を作り、万が一でも魔物が来ない様にする為のダンジョンを作り出した。
そっからまあいろいろあってギルド公認の中級・上級者用ダンジョンとなった。
冒険者の死体は冒険者達で掃除してもらっている。
うん。で、人肌っていいよねって話になるんだけど。
俺は魔物だから本体では人里におりれない訳で。
というより元が人に近い上に、俺の制作者が一人異世界で寂しい思いをしていたせいもあってか、本能的に人肌の暖かさを求めているのだと判明して。
とりあえず、抱き枕になってもらう対価として怪我を治す事にした。
ほとんど押し売りだけど、命あっての物種だからいいよな。うん。
ちなみに女性お断り、年上すぎるおっさんは怖いし、年下すぎると常識人としていろいろアウトなので自分より少し下から30以下に見える青年を自分の部屋へ連れ込む事にしている。
ちなみに青年以外の瀕死者を見つけた場合は、救護施設に命に支障が出ない程度に治療してから送る事にしている。別に見捨てる訳じゃ無い。
ちなみに偽善活動として、身寄りの無い孤児を拾って監視員として雇っていて、時々我慢できなくなって一番年上の子に抱きついて子供特有のプニプニほっぺを突ついている。最初は戸惑っていたけど、今では諦めた表情でおとなしくなすがままにされている。
うちのダンジョンはチキンな俺が魔物に襲われず雨風にさらされない為に作ったダンジョン。
だからダンジョンとマスターハウスは、隣接すれども繋がっていなかったりする。
転移魔法使えるのに、ダンジョンとつなげる扉を作るなんて魔物達に襲われる危険性を高める事なんてする訳無いじゃないか。
けど壁をぶち抜かれるといろいろまずいから、ありとあらゆる防御魔方陣を壁と床と天井全部にかけていたりする。ちなみに部屋の位置は入り口のほぼ真下で、誰にも教えてない。
皆何も知らずに通り過ぎて行くからここが一番安全だと思って。
日本のゲーマー達は『攻略できないとかどんなクソゲーだこのダンジョン!』とか思うかもしれないけどそれで良いんだよ。
だってこのダンジョンは攻略する為のものじゃなくて、
攻略されない為の『守護迷宮』なのだから。
とあるギルドマスターとSランク冒険者
「久しぶりです」
「おう。久しいな。お前も潜りに来たのか?」
「ダンジョンが出来るという事は、ここに魔物があふれて来る可能性がある。ここは俺の故郷だ、守ってみせる」
「あぁ、それなら心配しなくていいぞ。むしろ目撃数が減った位だしな」
「?そんな事あるのか?」
「その代わり夜はあのダンジョンの周り魔物だらけらしいから気をつけろよ」
「……あぁ」
「けど……お前ならダンジョンマスターに会えるかもな」
「階層自体はさほど多いと言う訳でも無いんだろ?最終階まで行くつもりだが」
「そういうつもりで言った訳じゃない」
「ならどういうつもりだ?」
「お前はダンジョンマスターの好みに合いそうだ」
「は?どういう事だ」
「それは言わないでおく、言っても無駄だろうが無茶するなよ」
「油断するつもりは無い」
強いから体に傷とか無いし筋肉質でもない。
見目も良いしゴツくないから怖く見えない。
白夜の好みっぽそうだから多少無茶しても大丈夫だろ。
と言うか十中八九無茶して拾われるな。
まぁ……会ったらがんばれよ。
「幸運を祈っといてやる」
ーいろんな意味で。
とあるギルドマスターとSランク冒険者を入れたのはなんか話がシリアス?になってしまうからです。
Sランク冒険者の文が途中おかしくなっているのは
思考速度の変化と混乱具合をうまく表そうとおもったからです。
うまく表せたでしょうか?
活動報告にて、没エピソードカット集・無駄設定を公開しました。
・エピソードカットの中でこの詳しい話を書いてほしいと希望あれば書くかもしれません。
・Sランク冒険者との細かいやり取りは別視点の短編として公開しました。
感想お待ちしております。