真夜中ストレンジャー
-出会い-
とある日の深夜のこと。
私、笠原 彩乃は家を抜け出してコンビニへ行き、その帰路にあった。
(徹夜のお供を買いに来ただけだけど、店員イケメンでちょっと得したー)
その時だった。
「そこのキミ!」
「のわっ!!?」
後ろから声をかけられて驚く。
そこにいたのは・・・おっさん。
「えっ・・・」
-自白-
「きゃ・・・」
「ちょっと待った!」
「私はただのおじさんじゃない!!」
なんか必死そうなおっさん。
「不審者だ!!」
(おまわりさーん!!)
「あ!間違った!!逆!」
「何が?」
-要するに-
「不審者じゃなくてただのおじさんだよ!」
「ただのおじさんはそんなこと言いませんし話しかけてきませんよ」
疑いの眼差しを向ける。
「そう・・・なのか・・・?」
ハッと深刻そうな表情のおっさん。
(その歳までなにしてたんだよ)
「まぁともかく私はただ深夜にコンビ二帰りの少女に声をかけたおじさんだ!」
「そういうのを不審者っていうんですよ!」
そこでもう一つ気づく。
「ってか、いつから見てたんだよ!?」
-玄関出てすぐ-
「ほんの・・・」
そういっておっさんは指を四つほど折る。
(なんだ、四分くらい前か。)
「四十分前?」
ニッコリと微笑むおっさん。
「おまわりさーん」
-お呼びでない-
「呼んだ?」
きょとんと自分を指差すおっさん。
「おまわりさんだったんですか!」
「うん、そうだよ?」
ハッと気づく。
(ってことは・・・)
血の気が引く。
「もしかしてこれって・・・?」
「うん。職務───」
(ほらやっぱり補導ー!!)
「怠慢だよ?」
「仕事しろ」
-そういうオチ-
「いやー、実はそこのコンビニでバイトしてるんだけどさ」
と後ろ指で示したのは私が今出たコンビニ。
「え?さっき警察だって───」
「け、警察!!?どど、どこ!?」
慌てるおっさん。
「まさか・・・林くん、これの事通報したのか・・・?」
キョロキョロするおっさんが手に持つのはピンクの本。
(・・・最低!)
するとコンビニから店員が出てきた。
「緒馬割さーん!」
おっさんが振り返る。
「って緒馬割って名字か───!」
突っ込まずにはいられなかった。
-さっさと-
たったったっと軽い足取りでコンビニ店員が走り寄ってきた。
(ってさっきのイケメン店員ー!)
「は、林くん」
おっさんはイケメンの方を振り返ると同時にサッとピンクの本を背中に隠す。
(って、見えてるよ!本の表紙が丸見えだから!!)
顔を手のひらで覆う。
「もう、なにしてるんですか!」
イケメンの説教。
「いや、だってお客来ないし在庫とかいろいろしなきゃいけないし」
「夜勤ですから仕方ないんですよ!!」
「可愛い女の子居たし」
「警察行きましょう」
-邪魔-
「申し訳ありませんでしたお客様!」
『林くん』が頭を下げる。
「い、いえ、べ、別に・・・」
「それではこれで」
『林くん』はおっさんを引きずって行く。
と、突然振り返った。
「またのお越しをお待ちしております」
ニッコリ。
「は・・・」
はい、と答えようとした。
そのとき
「また来てねー!」
と引きずられながら叫ぶおっさん。
(・・・絶対行かない。)