♯09 オール・ナイト王国の神官
この世界に5つの大国が存在する。
北に位置する『アール・ブレイド王国』
西に位置する『イール・アーチャー王国』
東に位置する『エール・ランサー王国』
南に位置する『ウール・ウィッチ王国』
そして
中央に位置する『オール・ナイト王国』
それぞれの大陸に担当する神官が存在する。
今回はオール・ナイト王国の神官のお話し。
「あ・な・た!それはダメです、勇者たるもの、常に最前線に立ち、皆を先導しなくてはなりません、ですが、今のは何ですか?後ろから指示するだけで、1番安全な場所にいましたね」
腰下まである黒髪にキレ長の目、小顔にたいして少し大きめな黒縁メガネ、襟をきっちり折り、1番上のボタンまで止めたシャツに、ロングタイトスカートを履き、上下一体の神官服を着た美少女。
彼女がこの大陸、オール・ナイト王国の神官。
「え、いや、だって今のは指揮したのが効率よ「はいダメです。今回のでペナルティー3になりました。本日を持ちまして勇者の称号が消滅いたします。本日最後の勇者ライフを満喫して下さい」
「そんなぁ〜」
神官は勇者に興味を無くし、去って行った。
残された勇者とその仲間は、唖然と立ち尽くすしか無かった。
神官が求めるのは『規律と秩序』、人でも魔物でも、それぞれ役目が存在する。
それを反すればペナルティーを与え、その数に応じて罰を与えた。
「あなた、今、道端でトイレしましたね」
「にゃ!」
猫は神官の姿を見て恐怖を覚える。逃げようとするが脚が震えて逃げる事が出来ない。
「あれほど道端ではダメと言っておいた筈です。残念です。今回のでペナルティー5になりました。あなたは今日で猫の人生が終わり、明日からはネズミに産まれ変わります。最後の猫人生を満喫して下さい」
神官はステータスを見る事が出来る、ペナルティーを犯せばステータスにペナルティーの数を書いた。
オール・ナイト王国の神官は完璧を求める。そこに妥協は許さない。
「神官様」
1人の商人が神官に泣きついてきた。
「どうされました?」
さっとステータスを確認する。
『オール・ナイト王国の商人、王国の80%をシェア、他国に販路を広げ、この国の素晴らしさを説こうとしている』
素晴らしい商人ですね。
「ウール・ウィッチ王国に我が商会を薦めたのですが、全くとり合って貰えず、挙句のはてに、2度と来るなと言われました」
「それは、由々しき事態ですね、分かりました。私が抗議致しましょう」
クイっと黒縁メガネを人差し指で上げた。
【中央教会】
「「「神官様」」」
教会の中に入ると信者の方達が頭を下げ、一歩後ろに下がり道を開ける。
「皆、お勤めご苦労様です」
片手を頭上にかざす。パァと光を発した。
教会内の信者達の体力を回復したのだ。
「「「ありがとうございます」」」
「「「何たる幸せ」」」
皆、神官に祈りを捧げた。その光景に満足して頷く。
「私は今から南の神官に会いに行きます。私が居なくても励んで下さい」
神官は女神像の前に立ち、祈る。すると、シュっ!と姿が消えた。
信者はその光景を目の当たりにして『神の御業』を見たと騒ぎたてた。
【ウール・ウィッチ王国の教会】
黒髪の少女が突然現れた。気が付いた子供は声をあげる。
「うおっ!びっくりした!何だねーちゃん、いきなり現れてすげーな」
その子供はスカート捲りの常習犯、突然現れた少女のスカートが長くて残念だと思った。
「相変わらず騒々しい場所ですね」
眉間に皺を寄せ歩き始めた。
「ねーちゃん!ねーちゃん!どうやって来たの?」
ああもう!うるさい。思わずステータスを確認しようとしたが、担当大陸以外では見る事が出来ない。
シカトして歩き続ける。子供はずっと話しかけ、無視されるのが楽しいのか
「ねーちゃんのパンツは何色?」
ハレンチな!
子供ならではの話しをするのだった。
「あっれぇ〜、スーちゃんじゃん」
教会の外に金髪の神官が居た。
「相変わらずだらしない格好ですね」
「え〜そうかなぁ?かーいーっしょ?」
「神に支える者としてダメです、それに何ですかここの教会は、子供の遊び場じゃありませんか」
周りを見渡せば子供で溢れかえっている。彼女からすれば教会は静寂で無ければならない。大声でキャっキャと遊ぶ子供達はありえなく見えた。
「皆んなと居ると楽しいっしょ〜」
「教会は楽しむ処じゃありません!それにあの方はなんですか!」
ビシっと指をさす方向に、隠れてこちらを伺う勇者が居た。
「勇者っすよぉ〜」
「あんなのが勇者ですってぇ?ふざけてます?あんなひょろっとした、なよっとした、影に隠れてコソコソするヤツがです?」
「あはは、スーちゃん言い過ぎっしょ〜」
まさか自分の事を言われてるとは思っていない勇者は、やはり柱から出ようとしない。
「うちのコーちゃんは凄いっすよぉ〜、あーしが思うには過去いちっしょ〜」
「コーちゃん?」
「コーちゃんは勇者っすよ〜」
チラっと目線を勇者に向けた。どう見ても凄いとは思えない。
「へー、あんたがそこまで言うなら実力を見て見たいわね」
「ん〜、見せてもいいっすけどぉ〜」
「何よ、歯切れが悪いわね、やっぱり弱いのよね」
腕を組み、考えるギャル神官。
「スーちゃん、やっちゃいますぅ??」
「やる?いいわ、私が直々に強さを見てあげるわ」
「うんじゃあ〜さぁ〜、やってもあーしに当たらないでよぉ〜」
「ふん、私をみくびらないで、私が言った事です。何があってもあなたには当たらないわ」
言質はとったとギャル神官は頷いた。
そうして始まった。
『南の勇者』VS『中央神官』
「ななななな!!なんですとぉぉぉーーーーー!!!!!こんなの聞いてませんんんんんんがぁぁ!!!???」
教会ではさすがに子供達には早いと言うことで、町外れのちょっと高級な宿に移動した。
「はぎゃゃゃやや!!!わ、私は神官です!!負ける訳ありませんんんんん!ふぎゃあ!回復!回復!回復!はにゃああ!!」
宿は貸切になった。思いの外、神官の声が大きかったのだ。それに気を効かせ、第1姫もまた、この一帯の立ち入りを禁止した。
中に立ち行った者は、性欲が通常の10倍に跳ね上がるぞっと、脅し?をした。
「ふはははは!私!完全ふっ……ぎゃああ!あっ!あっ!あっ!あっ!待って!待てって!はぎゃああ!!」
それを聞き付けた下に悩みを持つ者、レスになった夫婦などが足を踏み入れるようになった。
「ダメダメ!ダメじゃない私!私!負けないんだからぁ〜めぇ〜はうっ!ちょ!ちょ!あああ!!」
3日目にはその地は、『いつか終わる地』として18歳未満禁止な神聖の場とされた。お祈りを捧げる者も現れた。
「らぁ〜めぇ〜、わぁ〜たぁ〜しぃ〜はぁ〜、神官なのよぉ〜!はうあっっ!!」
5日目、その時がやってきた。
『ギギギ』と5日ぶりに開く宿の扉。
出て来たのは勇者。
その地に居た者は、勇者の背中に後光が差していたと言う。
無意識に頭を下げた者も居る。
涙が溢れ、地面を濡らす者も居る。
祈りを捧げる者も居る。
5日間、飲まず食わずで繰り広げられた死闘は、勇者の勝利で幕を閉じた。
【中央教会】
屈辱だわ、まさか私が負けるなんて!
私達神官は神から直接魔力が送り込まれているのよ!それが、足腰が砕けたようになり、まったく動かせなくなった。体力も魔力も空っぽになる。初めての経験だった。
それでも快楽だけが全身を駆け巡る。5日目に突入した時点でヤバいと思った。
気力でどうにか意識を繋ぎ止めていたに過ぎなかった。そんな状況で起きるのは『無』
私は『無』になって全てを受け入れてしまった。
規律も秩序も関係ない、ただ、私は感じるままになってしまった。逆らえない、もう私に出来るのは受け入れるだけ。
そうして、悟り安らかに眠りについた。
あの日から1週間経つのに、ちょっと触れられただけで逝ってしまう身体。敏感になり過ぎて教会の外に出れない。風が顔に当たるだけでイクってどういう事よ。
「……………ほしい」ボソ
くっ!私を律さないと、南の勇者に抱いて欲しいと思ってしまいそうだ。
「あ、あの神官様?聞いてらっしゃいますか?」
目の前に商人が居た。私がウール・ウィッチ王国に出向くきっかけになった者。
あの勇者で、すっかり忘れていたとは言えない。
「聞いています。しかし、今はまだ時期では無いようです」
と、はぐらかす。
ああ!そうか、商人の事情を聞きにもう1度出向き、そして、リベンジと言う形にすればいいのかではないか?
神官は、律する難しさを身にしみて知ってしまっていた。
【南教会】
「あはは!コーちゃんマジぱねぇっす!」
「???」
勇者は言ってる意味が良く分からなかった。今回も全力で勇者の仕事をしたに過ぎない。
まぁでも、神官様が楽しそうだからと、一緒に笑った。




