♯04 恋する乙女
私は恋をしている。
想い人は魔王様。
その気持ちに気が付いたのは、神官様に指1本で吹き飛ばされたあの日。
私なんかが想うのも失礼極まり無い、たかがメデューサ族の1匹に過ぎない。しかも、四天王の中では最弱中の最弱。
だけど、好きになってしまった。
あのキリっとした瞳、シュッとした眉、皆を魅了する口(あくまで本人主観)全てが、ス・キ。
日に日に想いが膨らみ続けているのが分かる。
でも、恋は実らない。だって、魔王様はデーモン族、背は2メートル程、私はメデューサ族で背が低い方だけど3メートルちょい。
それに、生殖器官からして違うから、夜の相手も出来ない。
だから、神官様に魔王様の想いを打ち明け、魔王様の気持ちに終止符を打とうと思った。
「乙女っすねぇ〜、しゃーなし、あーしがひと肌脱ごうじゃないっすかぁ〜」
と、笑顔で答えてくれた。実はあの日以来、想いとは別に、神官様とも仲良くなった。今回も定期訪問中だった。
「ほんとですか!?」
想いを終わらせようと思ってたのに、どうにかしてくださると言う。
「もちのロンっしょ〜!でも、ちょっと大変すよ〜」
「大丈夫です!何でもします」
魔王様の為なら火の中、水の中、何でもやってみせる!
「多分っすけど、メデューサとしてのチカラも無くなるっすよぉ〜、もーまんたいすかー?」
「もーまん?元々たいしたチカラは持っていない、何故私が四天王になれたかも分からないぐらいだ、それならば魔王様の側に居て、魔王様の………女になりたい……」
恥ずかしくなった。そう、私は魔王様の女になりたいのだ!言葉にしてハッキリと理解した。
「やっぱ、乙女だなぁ〜、かーいいよぉ〜メデュちゃん」
「余り煽てないでくれ、恥ずかしい」
「くぅ〜かーいい!!」
と言う訳で、身体の改造魔法を唱えてくれると言う。
ただし、一度実行すると元に戻れなくなる。チカラも多分無くなる。
それでも私は良いと思った。
魔王様のチカラでは無く、魔王様の支えになりたい。
「ちちんぷいぷいのぉぉおおお!ぷぅーーーーーいい!!!」
良く分からない呪文、得に何か変わった様子はない。
「1ヶ月はかかるっすよぉ〜、あーしからマオちゃんにメデュちゃんの休み貰っとくっすよぉ〜」
「ありがとう」
礼は言ったが、何があると言うのだ?
とりあえず今日は家に帰って休んだのが良いって言われたので帰る事にした。
「!?」
魔王城の外れにある私の巣に帰り、しばらくしての事だった!
急に身体が熱くなった、燃えるように熱い!
「くはっ!!」
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!
私は一晩中のたうち回る。
次の日も、そのまた次の日も……
神官様は毎日来ては、回復してくれた。
脱皮が2日事に起こる。いつもならゆっくりと脱皮をするが、異様な早さで脱皮が終わる。
そして、1か月が経った。
私は生まれ変わった。
とても辛い1か月だった、でも、その甲斐があり、全てが変わった。
3メートル以上あった背も、2メートル以下になった。
頭の蛇は全て巣立ち、黒髪に変わった。
蛇の尻尾が無くなり、2つの足になった。始めは立つのに苦労した。まだ歩くのに慣れない。
「メデュちゃん、ちょー美人さんっすよぉ〜、人間基準でも、めちゃくちゃ美人っす!」
親指を立てる神官様。
そう、私はメデューサ族じゃなく、人族になったのだ。
「神官様、本当にありがとう」
「どいたまぁ〜」
これで、魔王様の側に居られる、妾になれる。
「さっそく想いを伝えに行くっすよぉ〜、善はイソフラボンっす!」
私は神官様に急かされ、魔王様に想いを告げに行く事になった。
【魔王城・執務室】
ドキドキが止まらない。この扉の向こうに魔王様が居る。
あ、ダメだ、やっぱり無理だ、私の想いを告げるなんて出来ない……
「メデュちゃん、いっくよぉ〜ん」
「えっ、ま、まって……」
私の葛藤なんてどうでも良いのか、私の手を引き、決心がつく前に扉を開ける。
「マオちゃーーん、来ったよぉーん」
魔王様が居た。
椅子に座わり書類を整理している。
ああ、ダメダメダメ、カッコ良過ぎて直視できない。
「良く来てくださいました神官様」
書類をトントンと軽く叩き脇に寄せた。
ゆっくりと椅子から立ち、こちらに歩いてくる。逃げたい、でも、神官様が私の手を握っていて逃げれない。
「マオちゃん見て見てぇ、新生メデュちゃんだよぉ〜」
「あ、あの……」
ドキ!!魔王様と目が合う。その瞬間。
「す、好きです」
言葉に出てしまった。魔王様は優しく微笑んだ。
「話しは聞いていた」
魔王様が私の前に来る。
心臓が飛びでそう、緊張の余り吐きそう。
「我の為に身体の構造を変えたと聞いている」
神官様が魔王様に説明してくださっていたみたい。
「大変だったであろう」
そう言って私を抱きしめてくれる。思わず涙が出た。
「今の姿はとても美しく、我の妾になるにふさわしい」
私はこの為に生まれ変わったのだ。あの苦労も、魔王様の為と思えば苦労では無かった。
魔王様の側に居続けれるなら、何でもできた。
「ああ、魔王様……」
私も魔王様に手を回す、背の低くなった私は、魔王様の胸に顔を埋めた。
「えがったぁ〜えがったぁ〜」
神官様、空気を読んで帰って欲しい。と、思った。でも、恩人だから言えない。
「しかし、我はメデューサのが好みだったがな」
えっ!?涙が止まった。
「マオちゃん、そりゃ無いぜぇ〜」




