鶴の恩返し 〜鶴奮闘編〜
※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。
「私がはたを織っている間は、部屋をのぞかないでくださいね」
「え、うちワンルームなんだけど?」
「………」
助けてくれた若者へ、恩返しをしにきた鶴。いきなり初手から大ピンチです。
「えぇっと…広いおうちに引っ越しません?」
「え、なんで?君、不動産の営業?
僕そんなお金無いよ?」
「いえいえいえ!断じてそういう者ではございません!
えぇっと…、ではこのお家を改装などは〜?」
「嫌だよ。なんで突然そんなことしなきゃいけないのさ?」
「私も一人になりたいと言いますか〜、見ず知らずの若い男の人と同室というのは、いかがなものかな〜と言いますか〜。」
「きみ、めっちゃ厚かましいよね。一人っ子かな?
てかさ、道に迷ったから一晩泊めてくれってだけだったよね?なに?ここに住み着くつもり?」
「それ全国の一人っ子に謝ってください!
って、いやそうじゃなくて、ええと…ええと…そう!先行投資!
先行投資って、大事だと思うんですよ!」
「何に対する先行投資よ?」
「デスヨネー……
じゃ、じゃあ分かりました!。目をつぶってください!
私が良いと言うまで、目をつぶっていてください!」
「良いと言うまでって、どのくらいなの?」
「ええと…半日、くらい…?」
「無理に決まってるだろぉがあぁーーっ!!」チャブ台ガエシー!!
「うわぁああ〜!!」
「一体なんなんだよさっきから、わけの分からないことばかり。
…あぁ……わかったぞ。君、泥棒だろ?」
「えぇっ!!?
ち、違います。そんなんじゃありません!!」
「いいや。あからさまに僕を部屋から遠ざけようとするその言動…怪しすぎる!
さあ吐け。白状しろ!吐かないならくすぐりの刑だ〜」コショコショコショ~
「!!?、うわちょっとやめて!それセクハラ、って、ウヒャヒャ!ウヒヒヒ!
わ、わかりました!言います!!
全部正直に話しますからやめて〜っ!!」
ウヒヒヒ〜ッ
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「ハァ、ハァ…というわけでカクカクシカジカ恩返し。」
「あー、なるほどね。君、あの時の鶴だったのか。」
「ハァ…ハァ。理解が早くて助かります。
ということで、お礼にはたを織らせていただこうかと。」
「それは無理だよ。」
「え、どうして?」
「そもそも、鳥の羽や羽毛は、糸を紡ぐのには向きません。一部伝統工芸としてあるにはあるけどね。それには熟練の技術が必要なの。簡単にできる代物ではないの。
そして、そんな事も知らないと言うことは、君は糸を使って織物を織ったことがほとんど無いんだろう?
そんな子が頑張ってはたを織ったところで、売り物になるとは思えないな。」
「そ、そんな〜。それじゃあ恩返しが…どうしよう。」ションボリ
「気持ちは嬉しいけどね。
それに、僕はあの時君を助けたいと思ったから助けたんだよ。
別に見返りが欲しくて助けたんじゃないし、今でもその気持ちは変わらないよ。」
「!!」
「むしろ、そのことで君が文字通り身を削るような真似をしたら…僕は見ていて辛い思いをすると思う。
だからお礼は要らないよ。」
「………好き。」ボソッ
「え?」
「私を、あなたの、お嫁さんにしてくださぁーーーーーーーーいっ!!!」
「ええぇぇぇっ〜!?」
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そうして、二人(一人と一羽)はめでたく夫婦になったのでした。
「まさかとは思っていたけど、子どもって卵で生まれてくるんだね〜。」
「えへ♡」
おしまい




