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やっと復讐の時が来た

 フレイアは積み上げた資料から適宜、必要な画像や文章を提示し、概要部分を指で指し示すなどして分かりやすく説明した。


 そのおかげでフレイアが身体にどのような傷を負ったのか、外傷やその治療知識のない記者でも分かった。その場にいた他の人間にも分かった。


 レイナルドの友人の一人は申し訳ないと言いつつ、一旦お手洗いに行かざるを得なかった。


 「このカルテは患者本人である私と主治医エドガー院長の許可を得て開示しています。その旨は読者の方が誰でも気付くように書いてくださいね。これ以上このクリニックが情報漏洩を起こすような施設と思われてはいけないので」


「ええ……、その、レディーがこのような傷を受けたと、どこまで書いて良いものでしょうか。これ以上あなたが傷つく可能性がある記事を書きたくはありませんので」


 先のスキャンダルばかり報じる新聞と異なり、貴族向けの情報をまとめている新聞の記者は、その身なり振る舞いから、恐らくは良い育ちなのだろう。


 フレイアの提示した資料、特に酒に酔ったオリバーに襲われ、クリニックに駆け込んだ当日の写真に言葉を失った様子だった。


 「全てです。どのような方でも分かるように具体的な表記を望みます。これ以上同じような被害に遭う女性が増えてはいけません。そのために真実をそのまま伝えていただきたいのです」


唸るような声を喉で発した記者に、フレイアはスッと手紙の束を差し出した。


「これはオリバー・ブラウンから送られてきた口止めを求める手紙です」


「拝見します」

手紙を読み進めた記者は、額に手を当てて深くため息を吐いた。

「……口止め、あんなに女性を心身痛めつける行いをして、よくこのような上から要求するばかりの手紙を送れますね」


余計なことを誰かに言えば、王城にいられないと思え、オリバーの仲間と共にもっと酷い目に遭わせるぞ、そういうことには慣れていて貴族だから罪にはならないから憲兵に書き込んでも無駄だ……などなど。


 「微塵も悪いと思っていないのでしょうね。余計なことを誰かに言えば、王城にいられないと思えと書かれていましたが、私はまず上司に相談しました。

 高位のお貴族様が相手でしたし、何より王城の休憩室で酒を飲んで女性に無体をしたなど、王城側にも、なんなら王家の方々にも醜聞になることがありますから、憲兵ではなくまずは上司に相談し、ブラウン公爵に伝えてもらおうと思ったのです。……判断を誤りました」


「ブラウン公爵は我が子可愛さに私の上司を抱き込み、私はこのように冤罪で解雇されました」


解雇通知書にはフレイアが備品を盗んだと書いてあるが、もし本当であっても急に解雇となるかは疑問が残る罪であるし、そもそも魔法使いでないフレイアが魔力がないと起動しない魔具を盗んだというのもおかしい。


 「魔法を学んでいて、魔力が使える人材でないと起動できない古い魔具ですから、使用出来る場面が限られていて、なくなっても問題ないと上司が判断したものを隠し、私が盗んだことにしたのでしょうね」


フレイアは変わらず淡々と伝えるが、それは何度も何度も何度も台詞を練習したかのように澱みなく、今度こそは被害をなかったことになどしないというフレイアの強い思いを感じさせた。


 「これ、憲兵には……?」

レイナルドの質問にフレイアは顔を横に振る。

「警察でも裁判所でも、上司のように金で抱き込まれる人がいます。

何か無視できないほどのきっかけが必要でした。私一人ではなく大勢の被害の声や、貴族男性が女性を物のように扱うことを悪とするような風潮といった……」


 ツウとフレイアの頬を涙が流れた。

「やっと……、やっと私の声が届くかもしれない……」

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