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筆談

 「アリシア様、アリシア様恐れ入ります、起きてくださいませ」

フレイアがアリシアとミアの部屋のドアをノックした。

ミアは疲れきったのだろう、よく寝ている。


 アリシアは自分の名前だけ呼ばれていることにやや緊張しながらドアを開けた。


 「フレイアさん、どうしましたか?」

憲兵が通報者である貴族からアリシアに辿り着いて話を聞きたいと言っているか?

憲兵がオリバーの服の隠し魔記録に気が付いたか?


それならミアに聞かれても困らない。


 「先程の『虫』についてです。私の部屋に来ていただけますか?この建物にも妨害魔法が掛けてあるのです。患者さんたちは免疫『など』が弱っている方も多いので、それが入ってしまったということは良くありませんから、院長に報告するのに、今日新しく来られたお二人が事前に立ち寄ったところなどをお聞きできればと」


全身の毛が逆立ち、ゾッと体温が下がった。

何故気付かなかったのだろう。当たり前だ。特に気を使う患者を診ている病院と隣接する施設だ。


居住しているのは女性ばかりだし、働き始めた時は住所のない訳ありの女性も多いとエドガーが言っていたではないか。

防犯魔法が掛けられているに違いない。


 それでもあの「虫」は入ってきたのだ。


◇◇◇


 フレイアの部屋に再度入るまでに、フレイアはアリシアに流行りの恋愛小説について訊ねた。

「絶対お好きだと思ったんです!ミア様は分かりませんが、アリシア様は城の待機室でお読みになっていると噂を聞いたことがあって……。お好きですよね?実は私の部屋に全巻あるんです、この後少しお読みになります?」


「まあ、実はそうなの。見られていたのね、少し恥ずかしいわ」


勿論真っ赤な嘘だ。アリシアが登城した機会は少なく、当時はオリバーに仕事を押し付けられていたため、待機室でも仕事ばかりしていた。


本を読んだことなど一度もないと断言出来る。


 フレイアとアリシアは部屋に入る。

「ええと、確かここに……さっき散らかしちゃったから分かりづらいわ」

そう言って二人は部屋中の虫を確認すると、本を読んでいるという体で無言のまま筆談を開始した。


 「この施設に『虫』を入れた人物がいます。きっと看護師の中に」

「実家のことですから、お金で買収したのでしょう、申し訳ありません」


「そうだとすると居場所が分かっているのにお迎えが遅めですね。看護師の証言だけで迎えに来ても良い筈なのに」

フレイアの文字にアリシアは青褪めた。


 「魔法使いの方は、お家の方と別の目的をお持ちかもしれませんね」

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