一網打尽!
「どうしましょう……感情の乱高下に自分でも追いついていけません」
「ええそうですね、とりあえずアリシア様、私と結婚してください」
ミアとフレイアは、隠し魔記録の様子を見て、顎が外れるほど驚いていた。
ミアは商売のために父親に売られたのだから、ある程度の覚悟はあった。
裏ではミアを買ったオリバーが同類の男たちと集まって、こういう会話をしているのだろうことは推測していたが、だからと言って、それを見聞きして平然としていられるかということは別問題だ。
強がってはいたものの、ミアはアリシアとフレイアがいたことで助けられた反面、二人がいる前で、ひどい辱めを受けたのだ。
身体は反射的に嘔吐してしまっていたし、頭はグラグラして意識が遠のいたり近くなったりした。涙が溢れて止まらなかった。
ただ、その身体的な反応が治まるまでの間に、アリシアはオリバーとその仲間を、店ごと憲兵に突き出したのだ。
一網打尽だった。
痛快とはまさにこのことだ。
それほどブラウン家のビジネスの失敗で損害を被った家は多く、それほどブラウン家に恨みを持っている家々に、アリシアを失ったブラウン家はまともな謝罪も出来ていないということだった。
必死でビジネスの巻き返しを図る人々を尻目に、戦犯であるオリバーは違法な風俗店で違法な人身売買の話をして、高額を使って遊んでいるのだから、関係者の頭の血管が切れるのは必至だった。
そしてアリシアの手紙が隠し魔記録の写真付きだったということもあるが、その真偽を疑うことなく通報されるくらいに、アリシアは日頃彼等から信頼を得ていた。
オリバーはまたどこかのブランドが泣くことになりそうな酷いコーディネートで、同じくらい酷い泣き顔で、屈強な憲兵に引き摺られて行った。
見かけだけの筋肉すらない薄っぺらな身体では、引き摺られる尻で床掃除くらいしか出来なかった。
◇◇◇
「っかぁー!お茶が美味いわあ!カッカッカッ!」
官軍アリシアは侯爵令嬢の肩書を疑われての仕方がないような脚の組み方で、大口を開けて笑いながら、酒のようにお茶を流し込んでいた。
「海賊みたいですね……」
フレイアが呟いた。
「否定出来ないですね」
ミアは頷いた。
「人身売買の隠し魔記録の証拠がある、その話題に出ていた被害者ミアの証言もある、王様には徹底的にこの下品な奴らを取り締まってもらいましょう……」
海賊アリシアは不敵に笑った。
ミアはアリシアに抱きつき、一生付いて行きます!と叫んだ。
フレイアもお嫁にほしい……と言ったが、少しだけドアの方を気にしていた。




