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私、権力があります2

 「それで、あのスミス商会の子はどんなだったんですか?!」

鼻の下を伸ばして、その日を思い出しているのかボケっと固まったオリバーの肩を子爵令息が揺する。


「ああ、身体は背が小さい割に胸が大きくて……」

オリバーがミアの身体に言及した時、アリシアの怒りは天まで届く勢いだった。


 この隠し魔記録は、オリバーの浮気の証拠を残すために付けられた物だが、オリバーはその存在をスッキリ全て忘れているようだった。


 それほどまでにオリバーの中では浮気も、女性をモノのように扱うこともどうでも良いことで、証拠を押さえられ、またトラブルになってもどうにかなると思っていた。


 今までアリシアや父親に迷惑をかけたことへ罪悪感もなく、ちょっと遊んだだけなのにとしか考えていないのだ。皆んなやっていることなのに、と。


 その皆んなはオリバーの周りの連中のことなので、とんでもないバイアスが掛かっているのだが、オリバーの残念な頭では気づくことはない。


 「で、慣れてないから俺がこうすると、反応がさ……」

「おお!」

「ウッド様、僕たちにもご紹介していただけませんか!?」


 残念なオリバーの残念なお仲間は、オリバーの下品極まりなく、本人の服装と同じくらいゴテゴテに脚色された話を信じ、鼻の下を伸ばしてひどく興奮していた。


◇◇◇

 「うげええええぇぇえ!」

「ミア様!しっかり!」

 フレイアがミアの背中をさする。

自身の望まない夜の様子を、脚色されて複数人に話されるなど辛い以外にないだろう。


 一方頭の血管が切れたアリシアは、死ぬほどの速記で早手紙を仕上げて送っていた。

瞬き一つせず、元々大きな目を見開いて、恨みと怒りでドロドロと瞳を染め上げていた。


 「待っててミア、もう少しよ。私は侯爵令嬢で、隣国との重要な商談も成功させてきた。隣接領地の方々も各貴族の方とも縁がある。そう、オリバーのせいで迷惑を被っている隣接領地の方々ともね……」


 権力はここぞという時に、勿体ぶらずに使ってやる……!

◇◇◇

 「あー……スミス嬢は、仰る通り慣れていなかったので、今は家にこもっているようでして……」

まさか行方不明とは言えないウッド男爵は誤魔化した。


「可愛いな、怖くないよって僕が教えてあげたい」

「ふん、活発そうな外見だったが、そういう子が弱ったところを見るのも良いな」

オリバーとそのお仲間が残念で気持ち悪い感想を述べていると、突然店が騒がしくなった。


 女性従業員の悲鳴が響く。


「何だ!?」

「安心してください!ここは元お役人が経営していて、立ち入り捜査が入らないよう定期的な『山吹色のご連絡』もしているので……」


「へぇ〜そうなんですかぁ」

慌てふためくオリバーたちに、ウッド男爵が安心するよう伝える後ろに、黒い制服姿の男性たちが並んでいた。


 「この店がどういう店か知っていて訪れていたんですね、ウッド男爵様。それに……オリバー・ブラウン次期公爵様に……」

「お、俺は関係ない!」

「僕はブラウン様に強引に誘われただけです!」

「何で憲兵がこんなところに……!」


お仲間の絆はインクを染み込ませた紙よりも脆く、あっという間に千切れた。


 客たちは慌てて店から出ようとしていたが、女性たちをいかがわしい格好で働かせる店にいる時点で、この国では法律に反する。


 更に店の特性から、ウッド男爵のような法律に反する取引きに使われている場所で、客は大抵そういう話をしていた。


 賄賂に屈しなければ、あっという間に検挙される店だった。


 何故か今夜、主にブラウン家の領地に接する領地を持つ貴族たちから、オリバーがいかがわしい店でいかがわしい人身売買の話をしているという通報が相次いだ。


 山吹色の連絡を受け取っていた現役の役人は、OBの微々たる賄賂よりも、貴族たちからの正当な訴えとそれを無視した際の制裁を恐れて、店の検挙の許可を出した。


 「何で俺ばっかりこんな目に……!」

オリバーは涙目で暴れ、手錠を嫌がった。身をよじるたびにフリルが揺れて、周りの客や憲兵たちが笑いを噛み殺していた。

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