入念な復讐準備
「えー!王城秘書!?凄いじゃないですか!」
「いつもボケーっとしてるあんたが!?」
ミアがキラキラした瞳をさらに見開き、尊敬と好奇心の溢れる視線を向け、猫の目の女性は顎が外れるほど口を開けて驚いた。
「王城秘書って?」
パジャマ姿でパンを頬張っていた女性が訊くと、クッキーを食べていた女性は、のんびりとした口調ながらスラスラと答えた。
「そうね、王族がやることって山ほどあって、重要なことから小さいことまで色んな人に見られていて、気をつけないといけないじゃない?国の農業も漁業も軍も全部理解して、許可を出して、その時々のファッションにも気を配って…一人じゃとても無理。
だから複数の秘書が先回りして補助をするの。例えば書類を確認して、裏付けが必要なら専門家をリストアップしたり、外遊先の衣服文化を先に調べて無礼にならないようなファッションの指示を出したりとか…」
「わー!格好いいです!どうやって王城秘書になったのですか!?」
ミアの言葉に、女性は少し微笑んだ。
「他の国では分からないけど、この国ではザックリ言うと無個性な人が好まれるわね。
先回りして気を利かせすぎる秘書に王族が依存すると、秘書が国を動かしてしまうことになるし。
そういった意味合いで大きな派閥の貴族出身というよりも、広く門戸を開いているという文脈で民間人からの雇用することも多いわ」
「なるほど、一派閥に権力が集中しないようにするんですね」
「そう、そして私は女性王族の秘書として雇用されていたの。私は貴族の父の愛人の子で、世間的には母子家庭で貧しいから学校にも行けないし、母は子育てに向いてなくてほとんど帰ってこなくてね、暇だから父親の家の本ばかり読んでいたのよ。おかげで試験に受かったわ」
「愛人の子が本邸に入れるの?奥様にいじめられたりしなかった?」
恰幅の良い女性が幼子を見るような目線でクッキーの女性に聞くと、彼女はようやく笑った。
「奥様は凄く優しかったわ。私をその貴族の子だって認めなかった理由は奥様起因なのか分からないけど、多分違うと思う。
あの人は凄く優しくて、夫に逆らえない人だった。私に将来困らないようにって色々気を回してくれたわ。こっそりマナーの練習をさせてくれたりもしたの」
「良い奥様だったのね」
「そうよ、私の育てのお母さんなの」
一切の迷いのない言葉に、その場にいた皆が温かな気持ちに包まれた。
「私はお母さんの大事な子だから、あんな貴族のボンボンに舐めたことされて黙ってないし、仕事をクビになっても、アイツらが喜ぶような道は辿らない」
「それで看護師になったのね!」
猫の目の女性が合点が入った様子で言うと
「そう。あと復讐目的ね……」
クッキーの女性は途端に目に力を宿した。
「この国の腐った貴族野郎たちを豚箱にぶち込んでやるために、同じ思いをした女性たちから証言を集めたくて……ここが一番効率良いでしょう?」




