ちょん切りたいわね
「ねえ、彼女たちなら証言してくれそうじゃない?」
「そうね、多分……モモヒキ公爵とその仲間の仕業よね」
恰幅の良い茶髪の女性が隣に座る女性に声を掛けると、その女性は頷いた。
「モモヒキ公爵と仲間の仕業……?」
その言葉にアリシアが、手元のクッキーからブリキの人形のようにギギギ、と視線を上げた。
看護師の女性たちは一瞬目を上の方に逃した。
恰幅の良い女性が出来るだけマイルドになるように言葉を選びながら言った。
「その、一応ね、私も夫が死ぬまでは貴族だったの。だからね、恐らくの当たりなんだけど、オリバー・ブラウンとそのオトモダチかなと思っただけなんだけど……」
隣の猫のような釣り目の女性が腹を括ったように言葉を引き継いだ。
「船上パーティーと謳って、カフェの女給たちを招待して、そこで服を脱がせて男だけに都合の良いパーティーをしたらしいわ。周りは海だし、当然女性たちは泳ぎを習ったこともないし魔法も使えないから逃げようが……」
「アリシア様!アリシア様しっかり!ダメです!机に頭を打ち付けないで!せっかく賢いのに阿呆になります!」
「あのクソ野郎……!煮えたぎった油で泳ぐ間もなく揚げてやろうか……」
「ちなみに、無礼講だーって言って自分たちも服を脱いで、『そういう雰囲気の会だった』『皆んな船の上で逃げられないのが分かった上で、男の誘いに乗って来た』『女性たちは同意の上でニコニコして脱いでいた』と宣っているらし……」
「アリシア様!アリシア様!油を持たないで!一旦置きましょう!その瓶一旦置きましょう!」
ミアがアリシアの腰にしがみついて止めていると、キッチンに一番近い椅子でクッキーを頬張っていた女性が、口元のカスを舐めながら言った。
「そうよ〜、あんなやつの肉なんて嫌だわ。美味しくなさそう」
「食べたら病気になりそうね、頭スカスカになるやつ」
近くにいた女性も頷く。
「何だっけ、俺の大砲が火を吹くぜって言ったんだっけ?」
「え!?それ言われたの私だけじゃないんですか!?」
ミアが悲鳴を上げるとアリシアは床に倒れ込んだ。
「嘘でしょう!?良い加減にしてよ、そんなダサい……ああああ!私未だにそんな奴の婚約者になっているの!?もう嫌ぁあああ!」
アリシアが髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き回しているのを見て、その場にいた全員が同情した。
「女遊びだの女泣かせだのが格好良いって言うんなら、せめて格好良く見せる努力くらいしてほしいもんだわね……」
「大砲とは似ても似つかないくせにねぇ」
クッキーの女性はまだサクサクと食べている。
「ん?あんた何でモモヒキ太郎の大きさ知ってんの?」
猫の釣り目の女性が聞くと、クッキーの女性は何でもないことのように言った。
「ああ、王城秘書官を首になった理由が、そのモモヒキクソ太郎が私に言い寄ってそういうことして、上司に訴えたら親父の公爵に伝わっていて、冤罪でクビにされたのよ」
皆が虚をつかれて沈黙が下りると、女性はクッキーを食べ終わったからという自然な感じで
「ちょん切りたいわね」と言った。




