今日はワガママを言わないことにしましたの♡
「私もよ、ミア。ミアの言葉はいつもスッキリするわ。それでね、私は今日の夕方の商談は同席しないことにしました!」
一拍置いてミアはええええええええ!と「え」の発声練習のように叫んだ。
「え、あ、え!?凄い、それって……」
「あらあらあら……」
ミアとレイナルドは姉妹のように口を両手で覆って目を瞬かせている。
「ブラウン家は大損害を被りそうな気がしますね……。グレイ嬢、貴方が責任を問われたりしませんか?」
結末は分かっていると言わんばかりのスマイルで、念のためにエドガーが聞いてくる。
「ええ大丈夫です。何しろいつも私は『どうしても私が同席したいとワガママを言って』参加していることになっていたので、今日はワガママを言わないことにしましたの♡」
途端に個室は笑いに包まれた。
「おかしい!おかしすぎる!」
「アリシア様!最高です!」
アリシアは小首を傾げて可愛い子ぶった仕草が恥ずかしくなり、赤い顔をパタパタと手で仰いだ。
「ああ、あのクズはどうするのか……。可哀想にふふっ」
「隠し魔記録はないんですか?こっそり見てみたいです、何も答えられずに汗を垂らしているところを!」
「ああミア!そうね、こっそり仕込めば良かったわ!」
ひとしきり笑った後、四人はますます気合が入った。
◇◇◇
「証言が必要だと思うんだけど、私、実は少し心当たりがあるの」
「レイナルド様、本当ですか!?」
「証言を集めるのは難しいんじゃないのかい? 皆様、貞操に関する評判は気にするだろうし……」
エドガーが真剣な顔で言う。
しかしレイナルドは褐色の肌によく映えるピンクの唇をキュッと引き上げて自信がある笑みを浮かべた。
「ええ。高級娼館を経営している女性でね、マダム・ロザリンドっていうの。
彼女なら、貴族の男たちの素行を全部把握しているわ、きっとエドガー、貴方のこともね」
「娼館!」
ミアが目を丸くする。
「そうよ。女を下に見る男たちは酒が入ると何でも喋るものなの。
特に娼館はお互い詮索されたくないことを行う場所でしょう?
口が緩んで今行っている業務の内容を含んだ自慢話も、悪行も何でもベラベラ言うんですって。
しかもロザリンドは頭が切れる人で、お店の女の子の信頼も厚いから、全部記録してるって聞いたわ。」
エドガーのまだ疑うような視線に、レイナルドは肩をすくめて言った。
「ああいうお店を守るためには、そういう権力から身を守る力が必要だからね」
「成程……、でも僕の情報はないと思うんだけど……、レディ二人が僕をまたゴミみたいな目で見ているから訂正してくれないかな」
エドガーが眉をこれ以上ないほど下げて言ったが、レイナルドはしれっとした表情でコーヒーを飲んでいる。
「僕はそういうところに行ったことはないよ!」
「えぇ〜?寮時代に先輩に引きずられてなかった?勉強させてやるって」
「あれはちゃんと寮を出る前に寮監に見つかって止められたよ!」
「それは……もしご協力いただけたら有難いですが……」
アリシアがエドガーの訴えはひとまず傍に置いて話を進めた。
「でも、その、やはりまだ彼女たちを認めてくれる人は少ないです。……彼女達を傷つけてはしまわないかと……」
「あと、娼館の信用問題にならないでしょうか。顧客の話を外部に出してしまうとなると、お客様が離れてしまうのでは?」
ミアも商家の娘らしい視点から懸念点を挙げた。
「忌憚のない意見、素晴らしいわ。まずアリシア嬢、ロザリンドは元伯爵令嬢なのよ」
レイナルドがにやりと笑う。




