新しい味方登場!
「それが僕ですね」
「ええ!?エドガー様、そんな男尊女卑おじさんだったんですか!!?」
ミアが、もし言葉が物理的な重さを持っていたら、きっとエドガーを壁まで飛ばせるほどの、素直な豪速球を投げかけた。
レイナルドもゴミを見るような目でエドガーを見ている。
「いや違うよ!誤解しないで!派閥と言っても子供の頃みたいに誰々が好きだから嫌いだからという話じゃないんだよ!」
「シルバー子爵様が子爵になられたばかりの頃で、皆さんエドガー様をお身内に入れようとされていたんです。
前シルバー子爵と仲が良かった方がたまたま例の派閥の末端にいらっしゃって、エドガー様は恐らく義理で来てくださっていました」
「そうそう、旗色が悪いから人数が多いように見せたいって泣きつかれたんだよ。彼も別に派閥のやりたい放題が正しいとは思っていなくて、貴族のしがらみで来ていただけだった」
アリシアのフォローで名誉を守ったたエドガーは胸を撫で下ろした。
「ただ私は子爵になったばかりで、貴族社会にそこまで影響力はなかった。当時の店長のハロルドという男性の名義で、アリシア様が相談に来られた時、力になりたいとは思いましたが、単独では難しかったので、派閥のトップに助言出来そうな知人を紹介しました」
「そう。そしてエドガー様は紹介だけでなく、わざわざ同席してくださったのです。
その方も、さらに次の方を紹介してくれました。その時も私だけでは不安だろうと仰って……、エドガー様は都合が付く限り同席してくださいました」
アリシアは指を折りながら数える。
「その知人、更にその知人……と、まるで蜘蛛の糸を辿るように、どんどん上の階層の人々に繋がっていったのです」
「すごい……。始まりが子爵様ですよね、ですと……」
ミアが感嘆の声を上げる。
「五人目で、ゴイル公爵家の当主に繋がりました。そしてゴイル公爵が、さらに上を紹介してくださった」
「まさか……」
レイナルドの目が見開かれる。
「ええ。最終的には、公爵すら黙らせる権威を持つ方に辿り着いたのです」
「公爵の上って、王様じゃないですか!」
ミアが驚きのあまり立ち上がりそうになる。
「その通りです。もうこんなことになるなんて思わなくて、直接陛下にお伝えする時はスカートの中で足がタップダンスを踊っているみたいに震えたわ。
でも陛下は真摯に話を聞いてくださった。そして静かに激怒されたわ。
貴族たる者が、議論の場を私物化するなど、愚かでダサいことだって」
「ダサい……」
レイナルドが思わず笑った。
「王様が『ダサい』って言ったのは本当だったのね? あの時は噂だから半信半疑だったけど」
「ええ。どうも敢えてそういうお言葉を使ってくださったみたいです。
正論をぶつけても例のお客様たちは屁理屈を捏ねるので、感情論で黙らせてくださったようです。
すぐに貴族社会に広まって、民の模範たる貴族が店を私物化するなんてダサいという雰囲気が瞬く間に浸透しました。そして例の常連たちは……」
「居場所を失った?」
「その通りです。彼らは翌週から、ぱったりと来なくなりました」
アリシアが満足げに頷く。
「素晴らしい作戦だったよ、グレイ嬢」
エドガーが称賛する。
「表の戦略で若者を呼び込み、裏の工作で邪魔者を排除する。見事だった」
「でも、それはエドガー様や皆様のご協力があったからです」
アリシアが謙虚に答える。
「それでは」
ミアが真剣な表情で聞いた。
「その時に助けてくれた方々に、今回も協力してもらえるということですか?」
「ええ」
エドガーが力強く頷いた。
「あれ以来、陛下とは良いお付き合いが出来ていまして、僕の女性たちの心身を守ろうという施策を後押ししてくれています。
国の未来を守るためには、子供とその母である女性を守らなければと仰っていました。
なので今回、オリバーがゲーム感覚でしていることをお聞きになったら相当お怒りになると思いますよ」
「王様が味方に!?」