魔王襲来
定規と鉛筆で設計図を書く。人が住みやすい環境を考えると穏やかな気持ちになる。圧政に苦しんだ人々が幸せに暮らせる家を建てたい。
食料は国交が回復した隣の国、あの歌って踊ってる隣国から輸入させてもらい、国民は飢えの心配はなくなった。農地の作物も順調に育っている。
あとは安心して暮らせる家だ。
「サワムラ女王、大変です!」
ドアを勢いよく開けて、タロウちゃんが言った。
「魔王って人がきてます!」
「は? 魔王??」
私は自分が異世界に転生したことを思い出す。私は落ち着いて立ち上がり、焦ってるタロウちゃんをなだめて外に出た。
「ぎゃーははは! 出てきたな、女王!」
空に魔王がいた。コウモリのような大きな羽根、ツノ、ツリ目の若い男の顔にレザーの服。めちゃくちゃ魔王っぽいの来たな。
「オレサマは魔王トガリ! おまえの国を滅ぼしてやる! しょせんおまえはガタイがいいだけの女、オレサマには逆らえない!」
魔王は高らかに言うと、目からビームを出して建物の一部を破壊した。
「どうだ、見たか! はっははは」
「ありがとう」
私は魔王トガリに言った。
「あの建物は老朽化で壊す予定だった。壊す手間が省けたよ」
私が言うと、魔王トガリは目を丸くした。
「ふっ、知っておったわ!」
魔王トガリが顔を真っ赤にして叫ぶ。
絶対に嘘だ。
「つ、次は壊されて困る建物を·····えっと、ど、どこにしよう·····」
私はハッ!と掛け声をあげてジャンプして、魔王トガリ捕まえて地面に着地した。
魔王トガリにチョークスリーパーのお仕置をする。
「いいかい。建造物というのはまずは設計し材木を集め大工さんが作り上げる、ありとあらゆる人の力が集結している。それを壊すというのはとても罪深い」
チョークスリーパーをかけられて、目を白黒させている魔王トガリに私は説教した。
「ずみまぜん、もう、もうしまぜん」
魔王トガリが謝ったので、離してやると地面に手をついてぜぇぜぇと息している。
「では、もう帰ってもらおう。私は仕事の途中だ」
「姉御!!!」
トガリが叫んで額を地面につけた。
「こんな強い人に出会ったのは初めてです! どうか姉御、俺を弟子にしてください! 手と足となって働きます!」
魔王トガリは翼を畳んで、そう懇願した。
「えー··········」
魔王を舎弟? Why???
「どうしよう、タロウちゃん」
「弱い魔王だし、利用すればいいと思います!」
二パッと笑ってタロウちゃんはえぐいことを言う。
「わかった。舎弟にしてやろう。まずは自分が壊した建物の瓦礫を片付けなさい」
「ありがとうございます!」
ペコペコ頭を下げながら、魔王は崩れた建物へと飛んでいった。
「はぁ、異世界。何が起きるかわからない」
私は呟き設計の仕事に戻った。