みらい
数日お世話になった宮津家からお引越しは1時間もかからなかった。
僕の荷物はほとんどない。教科書やらは持って帰ったときのダンボールに入れてたし、そこに制服と洗面用具を突っ込めば荷づくりは完了だ。
時間がかかったことといえば、借りてた部屋の掃除くらいだ。掃除機をかけて、布団はカバーを外して畳んでおく。
旅館なら、布団は畳まずそのまま置いとけと言うけれど旅館じゃないし。
それから自分の部屋に戻って、ダンボールから教科書を出して、制服をハンガーにかければ荷解きも完了である。
私物のほとんどない部屋を見回しながら、どうカスタマイズしていこうかを考えていると、たんたんたんと軽快なリズムで階段を上ってくる足音がした。みらいだ。
「あやたー! 片付け終わった?」
「そもそも片付ける程のものがない」
「あはは! そりゃそっか! はいこれ、裾上げしてもらってたジーンズも入ってるよ」
「ああ、わざわざありがとう」
撫子からさっき買った服の入った紙袋を受け取る。
「いいって! あたしがあやたの部屋が見たかったから。入っていい?」
「どうぞ」
「お邪魔します。ってほんとに何もないな」
祖母の家には昔から何度も遊びに来ていたみらいだけど、リフォーム後、僕の部屋に入ったのは初めてだ。
「期待はずれで悪いな」
「そんなことないって。あたしフローリングの部屋に憧れてたから羨ましいぞ。ベッドいいなー」
ベッドに腰を下ろすみらいだが、色っぽい展開は期待しないで欲しい。マットレスも布団も今は干してる最中で屋根の上だ。
「ねえ?」
不意にみらいのトーンが変わる。
そこには真っ直ぐに僕を見つめる知らない少女がいた。
大人な表情を浮かべるようになった現在のみらい。幼馴染というフィルターが外れ、宮津みらいという少女が見せたその顔に、僕は見惚れた。
「なこのことどう思ってる?」
みらいの口から違う少女の名が出てぞくりとした。
なぜ、そこで撫子の名が?
だけどそれを口にするのはずるいと思った。
僕には義妹という大切な存在がいる。護り護られ共に未来へ歩むと決めたパートナーだ。
それにも関わらず、僕はふたりの魅力的な少女と良い関係を築いている。そのことで心の中には常に後ろめたさがあった。
だからこそ、関係ははっきりさせなければならない。
「大切な友人だと思ってるよ」
みらいが視線を外す。
「そっか。そりゃそうだよね」
「みらい?」
「ううん、何でもない!」
その時には、いつものみらいに戻っていた。
何故、みらいがそんなことを聞いてきたのか、引っかかったが追及はやめた。
聞いたところで、僕が進む未来は変わらないのだから。
「ねえ、あたしのことはどう思ってる?」
「うん?」
自分はおまけだというように聞いて来るみらい。
そんなの答えは決まってる。
僕が昔好きだった女の子で──
「みらい海」
「は?」
「強くて可愛い、僕の恩人かな?」
「なんだそりゃ?」
本当に感謝しているんだよ。
ありがとう。みらい。
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