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おむすび

「真崎さんも? お休みなのにいいの?」

「もともとみーちゃんとは土曜日に行こうって話してたんだよ」

「そうなん?」

「まあね」


 どうやら、みらいと真崎さんはふたりで祖母の面会に行くつもりでいたらしい。僕の方がふたりの予定に割り込んでしまったみたいだ。


「なんか悪かったな」

「いいよ。あやたも暇そうだったら強制的に連れてくつもりだったからさ」

「うんうん。引っ越しやら、授業遅れた分の補習とかで忙しいかもしれないからから、様子を見て誘うつもりだったんだよ」

「補習があったらもちろんそっちを優先で」


 確かに、受けれなかった授業の分の補習は何かしらあるだろう。とはいえ、まだ始まったばかりだし、基礎的なところしかやっていないはずだ。


 昨日寝る前に、軽く課題に手を付けてみたけど、英語は余裕。理数系も問題無く解けた。難しかったのは古文や歴史だけど、暗記系なら日々の学習で挽回可能だろう。


「わかった。補習の話が出たら断る事にする」

「おい。人の話聞いてたか?」

「先生に休日出勤させるのも悪いよ。引っ越しも終わってなくて家には寝床も無いって言い訳もできるし、5年ぶりに祖母の面会に行くと言えば納得してくれるはずだ」

「留年してもしらないぞ?」


 大丈夫だろう。たぶん。


「みらいや真崎さんだって忙しいのに、わざわざ面会に行ってくれるんだ。僕が行かないわけにはいかないよ」

「ああ、私達はね……」

「なこ! その話はまだ駄目だって!」

「あ、うん。ごめん、みーちゃん」


 真崎さんが何か言いかけて、みらいが慌ててその口を塞ぐ。


 なんだ? 一体?


「ごめんあやた。おばあちゃん先生に了解を貰ったらちゃんと話すから」

「あ、うん」


 後日、話を聞かせれたとき、僕は相当面食らうことになるんだけれど、それはまた別に語ろうと思う。


「ところでみーちゃん。お腹空いた」

「あんたって子は……四の五の言わずにおむすび握れ。重箱いっぱいになったら余った分食べていいよ。あやたもね」

「おっけー!」

「お櫃に入ってるごはんにはもう塩振ってあるから、具材は好きなの使ってね」

「おう」


 テーブルの上には既にお櫃に入ったご飯と、海苔や具材が準備されていた。


 具材は梅干し、焼き鮭、塩こんぶ。自家製の梅干しは、見ただけで唾が溢れてくるくらい酸っぱそうだ。


 手のひらにラップを敷いてご飯を置いて、具材を乗せる。


 焼き鮭は指先くらいの切り身を、梅干しは箸で半分に割って、種をとり除く。


 具材を包むように軽く握ったら、一旦ラップを剥がして、海苔を巻いて握る。大きさは重箱に合わせて小さめで俵型。


 急がないと朝ごはんにありつけなくなる。僕と真崎さんはせっせとおむすびを握っていく。


「んーっ!」


 顔に似合わず食いしん坊の真崎さんがつまみ食いをしないはずがない。梅干しの種をしゃぶって口を*にしている。


 僕もひとつ果肉のついた種を口に入れる。梅干しは好きな方で、昔は祖母が漬けた自家製の梅干しをよく食べていた。


 すっぱーーっ!!


 たちまち口が*になる。


 そう、これ! 祖母の味だ!


「すっぱいだろ? 去年漬けたあやたんちの梅だよ」

「やっぱり! 懐かしい味だと思ったんだ」

「おばあちゃん先生の直伝だからね。梅も毎年とらせてもらってるんだ」


 重箱を一段おかずでいっぱいにしたみらいが、おむすび作りに参戦。3人で一心不乱に握り続け、重箱2段におむすびが詰め込まれた。


「多くない?」

「ひとつひとつが小さいし、今日は4限目に体育もあるからお腹すくよ?」

「そっか。そっちは洋介さん達の?」

「そうだよ」


 夜遅くまで働いていた、洋介さんと渚さんはまだ寝ているようだ。みらいは、起きてきたふたりの為に、自分で握った分をおかずと一緒に皿に取り分けて、ラップをかけている。


「みーひゃんは優しいね」


 自分用に握ったらしい特大おむすびを頬張っている真崎さん。


 それ、いつの間に握ったの?


 お櫃の中は見事に空っぽ。多少残っていた具材も、たぶんあのおむすびの中だろう。


「ほら、あやたも食べないと、なこに全部食べられちゃうよ?」

「ああ。みらいは?」

「あたしは、流しを片付けてからね」


 そう言って、みらいはおむすびをキープして流しへ向かう。


 僕も自分の分にかじりつく。


 塩こんぶ美味しい。まだ温かいご飯に、しっとり馴染んだ海苔の風味がたまらない。


 洗いものを終えて、みらいが戻って来る。手には急須。


「ふたり共お茶いる?」

「ください」

「私も」

「ん」


 僕と真崎さんは、湯呑を手に、みらいがいれてくれたお茶を啜ってほっと一息。


「みらいはまだ食べてないだろ? 時間大丈夫?」


 お弁当作りの後片付けに追われていたみらいは、まだ朝食を済ませていない。


 時間を見ると、もう7時半を過ぎている。バス停まですぐそこだが、あまり時間がない


「大丈夫。すぐ済ませちゃうから」


 余裕ありげなみらい。その手にはおむすびが入った茶碗がある。


 何を始めるのかと思ったら、上からお茶をかけて、おむすびを崩すと一気にかき込み始めた。


「ごちそうさまでした! じゃあ、行こうか!」


 絶対今度真似しよう。


 ※おむすびの早食いは、喉を詰まらせる恐れがあります。絶対にやめましょう。

読んで頂きましてありがとうございます。


皆さんの好きなおむすびの具材はなんですか? ぽにみゅらはカップ麺(塩系以外)の麺を啜った後、残ったスープに塩むすびか鮭むすびを入れておじやにするのが好きです。


おむすびはよく噛んで、よく味わって、塩分に気を付けて食べましょう。

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