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予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~  作者: 桃月 とと


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4 未来予知

 美しい真っ白な髪を軽く結んだ男性が、ゆっくりとこちらの方に振り向いた。相変わらず年齢はわからない。背はアレンより高く、ほっそりとした体型だった。


「ああ! 良く来たね。直接会うのは初めてだ」


 レミリアはジークボルトに出来るだけ好感を持ってもらえるように丁寧にお辞儀をした。


「レミリア・ディーヴァでございます。ジークボルト様、このような時間に申し訳ございません。実はお願いがござ……」

「いいよいいよ! 今日から僕の弟子ってことでよろしく!」

「えっ!?」

「水臭いな~! 先生って呼んでくれてたじゃないか!」

「いや! その……はい……ありがとうございます」


 かなり気合を入れていたのに空回った気分だ。レミリアとジークボルトは5年前から付き合いがあるが、実際会うのは今日が初めてだった。


「あの、先生は……私が来ることをどのようにして?」

「どうしたの~? あの……うるせぇ! ばーーか! って言ってる君の方が面白くって好きだよ」

「そ、その言葉をどこで!?」


 レミリアはあからさまにうろたえた。流石にあの言葉使いが世間的に褒められたものではないと知っている。あの時は自分を貶めた相手に出来る限り仕返しをしたくて使ったのだ。


「そのペンダント、一方的にも通信出来るんだよね! 今日が例の日だって前に言っていただろう? 面白そうだなって見物させてもらってた!」

「なんだよそれ! 俺も見たかった!」


 彼に今日この日のことを伝えたのはだいぶ昔の話だったので、覚えているとは思っていなかったのだ。どうやら見物は彼の満足いくものだったようで、満面の笑みの彼を見て、レミリアは少し力が抜けてしまった。


(一方的に通信出来るなんて、今初めて聞いたんだけど!)


「覚えていていただけて嬉しいです……」

 

 いつもの彼女なら、プライバシーの侵害だー! とハッキリ批難し文句を言うところだが、今日はすでにビッグイベントを終え、さらに自分の身の置き所を確保しようと気合を入れこの屋敷を訪ねていたので、その気力は残っていなかった。


 そっと彼から受け取ったペンダントに触れる。このネックレスは5年前、彼女が前世の記憶を思い出してからしばらくして、ある日窓際にプレゼントのようにして置かれていた。何かわからない大きな卵も一緒にだ。

 10歳のレミリアがその綺麗なネックレスに触れると、急に映像が空中に浮かびあがり、その中にジークボルトがいたのだ。


「あれ? 全然驚かないね」

「いえ……驚きましたが」


 レミリアにしてみれば、これは前世で使っていたテレビ電話とあまり変わりのないものだ。しかしこれがこの世界に存在することは驚くべきことだというのは分かっていた。


「僕は賢者ジークボルト! 君の秘密を教えてくれないかな?」

「え? ……嫌ですが!?」


 最初は胡散臭い変質者というイメージだった。


「そんなぁ! 飛竜の卵までプレゼントしたのに!」

「あれそんな危ない生き物の卵だったの!?」

「大丈夫大丈夫! 君の言うことを聞くくらい波長が合わなきゃ孵化はしないし」


 けど絶対孵化するけどね~、と呟いているのをレミリアは聞き逃さなかった。


「僕今、魂の研究にハマっててさ~占いで君に聞くと良いって出たから連絡したのに~」


 話を聞くと、彼の言う『占い』は未来予知と言ってもいいくらい精度の高いものだった。


「僕に恩を売ってて損はないよ! どう? いっぱい売らない!?」


 好奇心旺盛な少年のようなキラキラとした顔で、通信画面がいっぱいになった。

 レミリアはちょうど将来に不安を感じていたし、どうしても魔術の訓練は不可欠だった。大賢者ジークボルトのことは知識として知っており、彼以上の師はいないとも直感で分かった。


(なんせこんな魔道具作ってるわけだし)


「いっぱい買ってください」

「やったーー!」


 そこからジークボルトとの()()講座が始まった。彼は結局魂の話よりも、レミリアの前世の世界に興味が移っていった。通信は毎日のようにあったり、週に1回だったり……と思ったら1ヶ月音沙汰がなかったりとバラバラだったが、この5年間で彼女が一番真実を話せ、そして信頼できたのはジークボルトだった。

 魔術の指導も上手く、またレミリアが真面目に取り組んだのもあって、彼女の実力はメキメキと上がっていった。

 


(あの喋り方がいいって……ラフでいいってことかな)


 師と仰ぐ人にあの砕けすぎた口調は憚られるが、アレンも似た感じなのはわかっていたので、意識して前世の話し方を再現する。


「先生って物好きですよね~」

「だから賢者なんてやってるんだよ~!」


 そう言って笑いあった。

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