遺言
どうしよう。異世界転移してしまった。RPGゲームなんてやったこと無いのに。
どうしよう。僕は生物学的にも多分ちゃんとイエザルとして進化してきたはずなのに。(尾てい骨は座る時にちょっとぶつかるけれど、それでもミクロ的にはちょっとずつ変わってきたはず。多分。)
「種族名:ヒト」?違うだろ。人間だよ。いやいや違う。日本人だよ。だから日本でしか生きられないんだ。
「ねえ、一体何の権限で以て僕をそんな土地に追いやるんだ。バクってるんじゃないか?ちょっと確認してみてよ。」
「……おい、聞いてる?」
おいおい。やめてくれ。痛いのは無理だから。汚いのはもっと嫌だ。トイレットペーパーが無いなんて絶対……。
(意識は途絶えた。
とはならない。もう少し言わなければ気が済まない。)
だけれど異世界転生のことは知っていた。もっと言えば僕のこれが異世界転移だということも。なら誰に文句を付けたらいい。フロイト?違う。これは夢じゃない。
そりゃあ……自称鬱だったけれど、別に鬱病だと言いたい訳じゃないさ。鬱と言ったら鬱なんだ。鬱病じゃなくてもいい。そんなだから、死んだら何か有ってもいいとは思っていたけれど、別に死んだわけじゃないし。
僕のこれだって立派な病気だよ。これで死ねたならずっと良かったはずだ。つまり僕の行けたいところに行けたはずだ。だって絶対にそうだと思っていたんだから。
ああそうか。これはそれじゃないんだ。他の誰でもない僕の病気という訳じゃないんだ。じゃあ誰の病気だ?そいつを出せよ。
「ところで、ところでだよ?これが所謂「いわゆる」なら、何か凄い力とか、有る?」
「……おい、聞いてる?」
「ああ。分かった。死んだらまた来るからな。」