25 エリートのやり方 上
それから驚く程あっけなく、巨大なアンノウンを地上に降ろす事が出来た。
市街地の上から移動させ、海岸へ着陸。
そんな事をどんでん返しも何も無く、無事に完遂できてしまった。
「……皆さん揃ってそんな訝しむ表情を向けないでくれ。気持ちは分かるが本当に今の僕にはこれ以上戦う意思も手段も無いんだ」
ディルバインの言うとり、本当に現時点ではその意思は無いのだろう。
当然このアンノウン内部に居る間は完全には気を抜けないし、油断させておいて一気に状況を変えられるような何かを所持していたりしないか身体検査を行ったりなども行わなければ安心できないだろうが、普通にこの中も既に安全で、身体検査でも危険物は出てこないのではないかと思う。
だから今気を張らなければならないのは、ディルバインに対してではなく赤坂の方にだ。
赤坂を除いたこの場の全員に、神崎から通信が有った。
内容は今後のディルバインの扱いについて。
彼に関する情報はひとまず北陸第一の外には出さない。
その為、杏が説得するまでの間、赤坂に東京本部への連絡はさせてはならない。
理由はユイの安全の為だそうだ。
それが正しい事なのかどうかはうまく判断できないが、少なくともその観点で考えればそうせざるを得ないという理屈は理解できて、鉄平はひとまずそれに乗っておく事にした。
鉄平だけでなく柚子も篠原も腹の内こそ分からないが了承したようで、三人共ディルバインに向けるのと同じ位の注意を赤坂に向けていた。
そんな中で赤坂はディルバインに視線を向けながら篠原に言う。
「……篠原さん、これはあくまで部外者からの提案。ウィザードとして間違った事を言うかもしれないけど、一応考えの一つとして頭の片隅に置いておいて欲しい」
「なんだ?」
少々警戒するようにそう言う篠原に、助言するように赤坂は言う。
「しばらくの間ディルバインの存在は本部や他の支部、その他省庁の何処にも報告しない方がいいと思うわ」
鉄平達が止めようとした事を、彼女自身が。
「理由を聞こうか」
篠原が探るように言った言葉に赤坂は答える。
「流石に馬鹿正直に報告すれば、ディルバインは少なくとも本部に移送される事になると思う。そこで止まるかは分からないけどね」
「その可能性は高いな」
「ええ。で、イマイチこいつの言動は読めない所はあるけど、ユイを破壊する為にそこの二人と戦った事は事実でしょ。そして北陸第一以外がこいつの身柄を預かっていた場合、遠回しにそれを実行できてしまう」
「「「……」」」
言っている内容は理解できた。
ディルバインが自発的にそれを狙うかはともかく、神崎や杏が危惧したのはつまりそういう事で、だからこそディルバインという捕虜の存在を隠蔽しようという話になった訳だ。
だけど分からないのはその言葉の意味だ。
(……なんで赤坂さんがユイに助け船を出すような事を言うんだ?)
だってそうだ。
彼女は言ってしまえば一応デイルバインとは別のベクトルで、ユイの敵である筈なのだから。




