表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣拾った。同居した。  作者: 山外大河
2-1 招かれざる客

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/111

18 生温い戦い方を

 双方出方を疑うのではなく、三人同時に動いた。


 鉄平と柚子を撃ち抜くように、付き出された両腕から浮かび上がってきた銃口が弾丸を射出する。


 対する鉄平はその射線を潜り抜け距離を詰め、一方の柚子はバックステップを踏み距離を取りながら恐らくその銃撃を回避した。


 ……そう、基本接近しての徒手空拳が戦闘スタイルの柚子だが、まずは下がる。

 相手がアンノウンで無い以上、可能であればやっておきたいプロセスがある。


 打ち合わせはしていないが、やっているのはきっとそういう事だ。

 だからその前提で鉄平も動く。


「行くぞ!」


 一気にディルバインの正面まで躍り出た鉄平は勢いよくユイを振り抜く。

 とはいえ一撃で相手を沈めるような全力攻撃ではない。勢いは良いが言わば出方を探る様なジャブ。

 それをいかなる攻撃にも対応できるだけの耐性を維持する余力を残した状態で放った。


「なんだ、先程の戦いよりも攻撃が柔いじゃないか」


 言いながら軽くバックステップをして躱したディルバインは、キーボードを打ち込むように右腕のガントレットを左手でタップする。

 すると次の瞬間には、刃渡り三十センチ程度の光のブレードが握られていた。


「先程殺さないようにと言っていたな。それを甘えだとは言わない。そういう選択を命のやり取りの場で取れる事もまた強さだ。だが申し訳ないけど、僕はその強さに付け込むよ」


 そして再び距離を詰めた鉄平の剣撃を、光のブレードで受け止める。


「こちらは全力で行かせてもらうぞ!」


 そしてそこから、ユイの速度について来れるだけのスペックを持つディルバインとの攻防が始まった。

 どちらかが剣を振るい、どちらかが受け止める。

 一進一退の攻防。

 それを行いながら、鉄平は気付く。


 ……気付き、考えるだけの余裕があった。


(悪くない……だけど動きが素人だ)


 鉄平も人の事は言えない。

 だがそれでも本当に素人だった頃と比べれば、その技量に天と地程の差がある。


 だからこそディルバインの動きをみると、ジェノサイドボックスと戦った時の自分を思い出す。

 あの頃の自分も目の前のディルバインも、手にした強大な力とある程度の身体能力で一定以上の力を得られていただけに過ぎない。


 ではその力を過信して前に出て来たのか。きっとそれは違う。

 少し前にディルバイン自身が、勝算が薄いと言っていたから。相手を欺く為に弱者のフリをするような人間ではなさそうな事は、流石に分かっているから。

 だから、そこに過信は無い。

 あったのはきっと、勇気だ。


(こんな動きで俺達二人相手に……下手したらもっと増えるかもしれねえのに前に出てきたんだ。すげえよアンタ!)


 負ける訳にはいかないが、それでも賞賛に値する。

 きっとディルバインなりに強い信念が有って、拙いながらも武器を手にしたのだ。


 ……やはり情報云々以前に。こちらが人殺しをしたくないとか以前に。

 目の前の男を死なせるような戦いはしたくないと、そう思った。


 敵ではある。

 敵ではあるが……それでも。


 だからこそ、此処までの攻撃は多少危険を伴ってでも軽い物に留めていた。

 そこから最低限やっても良い範囲を探る為に動いていたであろう柚子の準備が終わるのを待っていた。


「閉じろ」


 柚子がそう言った瞬間、ディルバインの周囲に結界が展開される。

 最初に鉄平とユイがウィザードと戦った時に柚子に張られた結界と同じ。


 そう、同じだ。

 あの時鉄平達に向けてくれた良くも悪くも生温いやり方を、今度はディルバインにぶつけるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ