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魔剣拾った。同居した。  作者: 山外大河
1-1 魔剣少女との出会いについて
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6 今夜の話、明日からの話

 お互いに聞きたいことを聞き終えたところで、自然と緊張感の無いあくびが溢れ出た。


「なんだか眠そうじゃな」


「眠いんだよ、もう深夜の三時前だぞ。何事も無きゃもう寝てる時間だ」


 そして何事があったとはいえそろそろ眠りについておきたい。

 情報交換を終えた上でまだ色々と考えていかなければならない事は山積みだが、その辺を考えるのは起床後でも良い筈だ。

 と、軽くシャワーを浴びて眠る方向に思考をシフトさせる鉄平にユイが言う。


「そうだ。もう一つ鉄平に聞いておかねばならん事があったのじゃが良いか?」


「いいけど、どした?」


「とりあえずワシは此処で世話になっていいのかの? 元々鉄平はワシを助けるために此処に連れてきただけで、寝泊まりさせる為という訳ではないのじゃろうし」


「あーいいよその辺は。この部屋好きに使ってくれ」


 最初からそのつもりだった。だからあえて何も言及していなかった。

 現状ユイを預けられるところなんて無いし、外に追い出す訳にもいかない。

 というかそもそも自分の目の届かない所に居られる方が困る。


 だから助けるために此処に連れてきた時点で、その辺は確定事項だ。


「そうか……ありがとう」


 ユイは静かに礼を言う。


(本当に素直に礼とかも言える辺り、まともなんだよなユイは)


 世界征服から本当に程遠い。


 そんなギャップを感じながら、鉄平は立ち上がる。


「どこか行くのか?」


「いや、寝る前にシャワーだけ浴びようって思っただけ。眠いしさっさと済ませてしまおうかなって」


「ワシになにか手伝える事とかあるか?」


「いやねえよ流石に」


 シャワーを浴びるプロセスにユイが入り込むと、いよいよ犯罪臭しかしなくなる。


「ま、とにかく好きに寝ててくれ。お前も飯食って復活したとはいえ万全じゃねえんじゃねえか?」


「いや結構万全ではある気がするが……まあ余計な体力は使わないに越した事は無いじゃろう。では好きに使わせて貰うのじゃ」


「あいよ」


 言いながら脱衣所へ。

 そして一人になった所で少し考える。


(さて……何気にしんどい事になったな。明日からどうするよ)


 考える事は山積みだが明日に回そうと、先程そう考えた。

 だがウィザードからユイのような存在を匿う事についてなどの複雑な事はすぐに答えが出せない事もあり明日に回せるが、より身近な問題は嫌でも不意に不安と混ざって浮かんでくる。


(今の財政状況で同居人が出来ると……色々と終わらないか?)


 元々一人でもあまり裕福とは言えない生活を送っているのだ。

 そこに一人乗っかる。それも多分一、二日では無くてもっと長いスパンでだ。


(シフト増やすかもう一個バイト増やすか……やっべえ今の現状で一番頭悩ませる要因金じゃん)


 結構とんでもない事に巻き込まれたというか、巻き込まれに行ったのに、結局一番の問題は酷く現実的だ。


「宝くじでも当たらねえかなぁ……」


 そして緊張感の無い発言やため息を垂れ流しながら、異世界から世界征服をしに来た剣の少女との出会いの夜は静かに過ぎていったのだった。




 ……少なくとも彼らの周囲では静かに。

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