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魔剣拾った。同居した。  作者: 山外大河
1-3 新しい日常 新しい非日常

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22 魔法に掛かったように

「ふー満足じゃ! いやほんと、全部食べ終わった後に雑炊とかいう昨日のお粥のパワーアップ版みたいなのが出てくるの、控えめに言ってヤバいのじゃ!? いや昨日のお粥もアレはアレで優しい感じですきじゃがの」


「満足してくれたなら良かったよ……なんてまるで作った側みたいな事言ってるけど、結構な割合でユイが作ってたんだよな」


「ワシ天才じゃ!」


「はい天才天才」


(まあ天才なのはお手軽に美味しい鍋を作る出汁売ってる食品メーカーだとは思うけど……まあ良いか)


 雑炊までしっかり堪能して残す事無く完食大満足。


「いやーなんか凄い幸せな気分じゃ」


 そう言ってそのまま床に寝転がるユイ。


「おい、食ってすぐ寝るな。牛になるぞ」


「それめっちゃヤバくないかの!?」


 ガバっと起き上がったユイは、やや困惑した表情で鉄平に言う。


「ワシの体に人間の常識が当て嵌められるかどうかは分からんがヤバいのじゃ……というか人間の体どうなってるんじゃ!?」


「いやいや健康に良くないからそう言われてる感じだよ知らんけど。マジかと思ったか?」


「さ、流石に冗談だと分かっておったが?」


「じゃあそういう事にしといてやるよ」


「信じとらんな鉄平! ワシ本当に冗談だってわかってたもん!」


「ストップごめんユイ、壁薄いからちょっとボリューム抑えてな」


「あ、ごめん」


「ああ、そうだ。ちなみに食後のデザートにプリン買ってあるぞ」


「ほう、それどんなのじゃ?」


「甘い奴」


「やったー!」


 とまあ久々にした賑やかな食事に鉄平も満足しながら、冷蔵庫へと足取りを向ける。

 そうして先程一緒に購入してきた三パック入りのプリンを二つと小皿にスプーンを用意していると、部屋から先程まで付けていなかったテレビの音声が聞こえて来る。


「ん、テレビ付けたのか?」


「なんか近くにあった奴を適当に押したら付いたのじゃ」


「分かんねえもん適当に押すなよ……ほらよ、プリンだ」


「ありがとうなのじゃ……というか鉄平甘い物苦手とか言っておらんかったか?」


「この程度なら全然大丈夫。砂糖の塊みてえに甘い奴が駄目なんだよ俺は」


 言いながらパックに入ったプリンを皿に落す。


「おぉ……これそんな風になるのか。見た目良い感じじゃの!」


 そう言って目を輝かせるユイを見て自然と笑みを零した後、視線を反らしてテレビへと向ける。


(……まあやっぱこうなるよな)


 流れていたのはニュース番組。

 そこに映し出されているのは県内で起きた事件の話。

 それも地方ローカルなどではなく全国ニュースだ


「ん? 鉄平これワシらが戦ってた場所じゃないか?」


「ああ。最初に行ったショッピングモールの映像だな。今日起きた事は控えめに言って大事件だ。そりゃこうなるって」


 メディアの扱いは国内で大規模なテロが起きた場合に近い。

 当然だ。それだけの化物が出現して、致し方ないとはいえ大勢の人がショッピングモール内に閉じ込められ、ジェノサイドボックスの影響下でエネルギーを吸い取られ病院に搬送された人も大勢いるだろう。


 当然のように全国ニュースでどこの局も大々的に取り上げている。

 ……それだけ大きな事件だった。


(……しかしまあ、こういう立場でウィザード絡みのニュースを見る事になるとは思わなかったな)


 今までの自分は起きた事に対して心を痛めながらもどこか他人事のように感じてしまっていた訳だが……今回はその中心に居たのだ。違和感が凄い。

 だけどその違和感に不快感は無く、逆に普段感じる事が無いような達成感が湧いて来る。


「なあユイ」


「なんじゃ?」


「俺達さ、国中の結構な数の人が注目するような事件を解決したんだぜ」


 もっとも自分達の力だけでは無いし、鉄平の力の源は柚子や神崎や杏のように鍛錬で身に付けたものでは無く、ユイというある意味ぽっと出の力だ。

 別に杉浦鉄平という人間が何か凄い存在になった訳では決してない。

 それでも。


「……マジで頑張ったよな、俺達」


 少し位その達成感に浸ってもバチは当たらない筈だ。


「そうじゃな。滅茶苦茶頑張ったぞワシら。といっても、結局ワシがした事といえば鉄平に力の使い方をその都度伝える。その位じゃがの。頑張った比率を考えればワシ1割鉄平9割位じゃないかの」


「いやいやそんな事ねえって。その都度適切なの伝えてくれてるのがマジで助かってるんだから」


「でも前に出て力を振るっているのは鉄平じゃ。多分そういう訓練なんて受けていない筈なのに、当たれば死ぬかもしれない攻撃を前にしながら戦っていたのは鉄平なのじゃ……鉄平は多分自分が思っているより頑張ってたと思うぞ」


 そしてユイは手にしたプリンのパックを一旦置いて、真剣な声音で言う。


「あの化物との戦い云々の前に……ワシと出会った時からずっとじゃな。鉄平はずっと頑張っている。頑張り屋さんじゃな。凄いと思うよワシは」


「……ありがと」


 否定するのも何か違う気がして、ユイの言葉を素直に受け入れておく。

 受け入れて……ようやくプリンのプッチンに挑戦し始めたユイを見ながら考える。


(頑張り屋さん……か)


 そんな事を今まで言われた事がなかった。

 言われるような事を一切やってこなかった。


 面倒な事から逃げ、やりたくない事をのらりくらりと交わし、たまに動いても最低限で。

 何をどうするべきか自分なりの答えを出しても、それを実行に移す事はない。


 ユイが言ってくれた言葉は、そんな今までの自分にはまるで似合わない言葉だった。


 そう自覚して……静かに思う。


(よくやったよ本当に……まるで自分が自分じゃないみたいだ)


 昨日の深夜、ユイと出会ったあの瞬間から、まるで杉浦鉄平という人間が作り変わったみたいに。

 良い意味で自分が、まるで別人のように思えてきた。


「なあユイ」


「なんじゃ?」


「明日からも頑張ろうな」


「うん、勿論じゃ」


 そう、明日からも頑張ろう。

 ユイが生きていく為の立場を維持する為に。


 自分の中で悪くないと思ったこの二日間の杉浦鉄平を単発的なイレギュラーで終らせず、胸を張って自分だと言えるように。


 明日からも頑張っていこうと思った。



 まるで魔法にでも掛かったように、杉浦鉄平らしからぬ前向きさで。

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