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魔剣拾った。同居した。  作者: 山外大河
1-3 新しい日常 新しい非日常

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18 起爆剤

 ユイがこちら側でいてくれるに至ったそもそもの入り口は、原因不明だが契約を結んだ鉄平から吸い上げるエネルギーが、必要最低限以下の水準で留まってしまったからである。


 故にユイは本来行う筈だった世界征服を行う事ができず、それどころか自身の生命活動の維持すら危うくなり、それを鉄平がどうにかした事で会話する余地が生まれた。


 そんな偶然が生んだ先にある未来が今だ。


「多分あの化物が体を再生したりするのには物凄い膨大なエネルギーが必要だった訳じゃな。これだけ膨大なエネルギーが体内に残っていても生かせないのは流石に燃費悪すぎじゃないかの。人一人から供給されるエネルギーで動けるワシとは大違いじゃな」 


 そう言ってちょっとドヤ顔を浮かべるユイがもし、そのエネルギーの塊を取り込むことができるのだとすれば……この状況を作り出した最初の要因が崩れて無くなってしまう。


 そうしたら……一体、どうなるのだろうか。



 と、少しだけ不安に駆られた。

 そう、少しだけだ。



「ほんと大違いで助かるよ。コイツ並みに燃費悪かったら、どれだけ飯食っても足りねえだろ」


「じゃな。鉄平が大変な事になる。小食で良かったのじゃ」


「いや別に小食じゃねえよお前……」


 そんな軽口を叩ける位には、そんな不安はすぐにどうでも良くなった。


(……というか俺はそれを否定してやる側だったな)


 流石にこうしてパズルのピースを嵌めるように、ピンポイントで足りなかった物が提示されれば、少し嫌な事を連想してしまう。

 その位の事は許して欲しいと思う。

 だけどそこから先の事を考える気にはならない。


 そういうリスクが無い相手だと信用したから今がある。

 信用に応えてくれるような相手だから今がある。


 もう最初の入り口は。分岐路は通り過ぎた後だ。

 今更あの時を基準に物事を考えたところで、本当に無駄でしかない。


 それを無駄だと思わない相手に対して、説得の一つや二つを考えてやる方がよっぽど有意義だ。


 と、そんなやり取りをしていると結界の外から柚子の声が聞こえて来る。


「あの、とりあえずこの結界は消して良いんすか? 駄目なんすか? その辺早い所決めたいんすけど……神崎さん、どうなんすかこれ!?」


「いや……俺は大丈夫だと思うけどな……」


 二人もユイがそうした物を手にしたという話が聞こえている筈なのに追及する事は無い。

 二人にとっても。

 あの時止まってくれたウィザード達にとっても、鉄平と同じくだからどうしたという話なのだろう。

 ……あの時あの場に居たウィザード達にとっては。


「消して良いよ柚子。もうジェノサイドボックスの反応は完全に消えてる……ああ、皆お疲れ様」


 そう言いながらゆっくりと歩いて来たのは重い足取りでなんとか此処まで来た事が伺える杏だった。


「あ、お姉ちゃん! 大丈夫!?」


「まあこうしてなんとか歩いて来れる位にはね。眩暈も倦怠感も結構酷いけど……でもそれだけ。私よりもマコっちゃんの方がヤバいよ。外に医務班が待機してるから、結界が解体されたらすぐ診て貰って」


「いや現在進行形で倒れそうなアンタに言われたくないんですけど……」


「いや俺が見る限り神崎さんが一番重症ですよどう見ても」


「そうじゃの。血でびちゃびちゃじゃ」


「明らかに大怪我なのにその反応なのを見る限り、神崎さんって健康診断でヤバい判定出ても無視しそうっすよね」


「お前だけなんか馬鹿にしてねえか俺の事」


「冗談っすよ。でもマジで普通に出血酷いんで早いと治療した方が良いっすよ。ああ、勿論お姉ちゃんも」


 杏と溜息を吐く神崎にそう言った後、柚子は鉄平達に言う。


「じゃあとりあえず床以外の所消すんで、そしたら跳び下りて欲しいっす」


「あいよ」


「了解じゃ」


「一人で飛べるか?」


「楽勝じゃ、子供じゃあるまいし」


(子供じゃん)


 宙に浮いた結界の高さは二メートル程度で、言われた通り鉄平もユイも普通に飛び降りた。

 そして床に着地したところで、直前まで戦っていた専用の部隊から降りた事で、改めて一段落ついたと、そう思う事が出来た。


 あくまでジェノサイドボックスとの一件については。


「さて……ユイちゃん」


 少し軽くなっていた空気を断ち切るように、戦いが終わったにも関わらず最大限の警戒心を滲み出しながら杏が言う。


「まずはその手の物を、今すぐ柚子かマコっちゃんに渡してくれないかな」


 あの時、初めて挨拶した時に感じた壁が……今、より強固な物となって立ち塞がっていたように感じた。


 今この場において風間杏だけがおそらく、最悪なシナリオを想定している。

 どこか怯えが混じった視線と声音を向けながら。

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