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魔剣拾った。同居した。  作者: 山外大河
1-1 魔剣少女との出会いについて
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4 質疑応答

 そして方向性を定めたのならば、後は少しでも適切な形で前へと進んで行く為に最低限知っておくべき情報を搔き集める必要がある。


「じゃあユイ。二つ目の質問だ」


「うむ、どんと来るがよい」


「さっきから度々出てる契約ってのは一体何だ? とりあえずその辺周りの話を教えてくれるか?」


 とにかくユイの事を知る必要がある。

 動機は分かった。その動機に至るまでの経緯は分からない事が分かった。

 だとすれば後は、ユイという存在そのものについて。


 そしてユイは嫌な顔一つせず答えてくれる。


「簡単に纏めるとお主に触れられる前のワシは省エネモードだった訳じゃな。内包された僅かなエネルギーを少しづつ消費し……言い方は悪いが寄生先の人間が現れるのを待つ。そして触れた人間に対して力を与える代わりにワシが意のままに操れる状態にしエネルギー源にもする。そういう取引を一方的にする訳じゃ。それが契約。ちなみにワシからも鉄平からも切れんぞ」


「うわぁ、悪質」


「そうじゃよな。マジで悪質すぎんかワシの手口」


「俺が触れた瞬間テンションブチ上げてたのはどこのどいつだよ」


「あの時は使命感とかが思いっきり前に出てたからの。そこに首を傾げ始めた今、ワシってとんでもなくヤバい奴なんじゃないかって思い始めておるよ。本当によくこんな奴を助けようと思ったのう鉄平は。まさかそれがこの世界では普通なのか?」


「いや、俺達の世界の常識を考えたら、結構頭のネジ飛んでるみたいな行動してると思うよ俺は」


「なるほど、つまり鉄平は世間一般的に考えれば頭がおかしいんじゃな」


「その言い方はなんか嫌だから止めてくれね?」


 ……あながち間違ってはいないかもしれないが。


「まあとにかくお前が言う契約ってのがどういう事かは分かったよ。後お前がどういうタイプの道具……って言ったらおかしいけど、まあその辺の事は分かった」


 ユイに触れた直後に考えていたように、彼女は触れた人間に寄生しエネルギーを吸い上げ活動するタイプの存在だ。

 乗っ取る云々というのも直接乗り移ったりするのではなく、好きなように動かせる人形のようにするという意味合いだろう。


 一般的に話が出回っている事例として良く聞くポピュラーなタイプだ。


 だから本来であればユイの意思通りに自身の力を使わせ暴れまわらせる人形のようになっている筈だったのだろう。

 結果、ならなかった訳だが。


 とにかく、そういう一般的に最悪な状況に人間を陥らせる事を、彼女の言葉では契約と呼ぶわけだ。


「……で、結局俺とお前の関係性ってどうなってんの?」


「命の恩人と助けられた側の女じゃが?」


「いやそういう事じゃなくてだな……なんか良く分からねえけど、弱体化とかしちゃってんだろ。これ変な感じに契約しちゃってるって事で良いのか俺達」


「いや、契約自体は正常に行われておるよ。だからこそ意味が分からんわけじゃ」


 軽く溜息を吐いてからユイは言う。


「実際鉄平から微弱ながらエネルギーは流れてきておるし、鉄平の方も多少は力とかが強くなってる筈じゃ」


「……そうか?」


 軽く手を握ってみるが……全然実感が湧かない。


「実感が湧かん位微弱という訳じゃな。で、それに引っ張られるようにワシ自身の力も大幅に弱体化しておる。これでは剣の姿に戻っても切れ味や力の出力共に最悪じゃろうし、ワシ単体での力では話にならん」


「あ、普通ならお前その状態でも戦えたりするんだ」


「うむ。この状態でもそこそこやれた筈じゃぞ。それが今ではこれじゃ」


 そう言ってユイが軽く手を振ると次の瞬間。


「こんな程度じゃ。多分切れ味も最悪じゃぞ」


 そう言って見せてくるユイの人差し指は……刃零れだらけのボロいナイフのようになる。


「どうじゃ。しょぼいじゃろ」


「ユイ」


「なんじゃ」


「一応刃物だから人に向けないでくれ」


「あ、ごめん」


 素直に謝って指を元に戻すユイ。


(……まあコイツ剣だから人に向けるのが多分正しいんだろうけど)


 そんな事を考えているとユイは言う。


「あ、一応剣のフォルムも見ておくかの? 燃費悪いからすぐに解除しないとまた倒れるかもしれんが……」


「いや、倒れるなら良い。無駄な体力使うな」


「じゃあ見せるのはワシの力が必要になった時じゃな……とはいえまともな力も無くなって目的意識も微妙な今、必要な時など無さそうじゃが……ああ、鉄平が使いたいなら言ってくれれば力を貸すぞ」


「いやそんな物騒なトラブル抱えてねえよ……」


 言いながら、脳裏に浮かぶ。


(トラブルを抱えてない……か。だと良いがな)


 此処までユイを運ぶ過程は誰にも見られていない。


 だがウィザードが、ユイの存在を察知していたとしたら。

 ……出現ポイントから消えた彼女を捜索していたりするのならば。


 それはあまりに大きなトラブルだ。


(そうなったら……マジでどうしようかな)


 一応、現状乗り掛かった舟というより自分で浮かべてしまった船に乗っている訳で。

 その延長線上で生存しているユイを売り飛ばす真似はしたくない。

 だが……流石にウィザードとトラブルになりでもしたら、その時自分はどういう行動を取るべきなのだろうか。


 それは、分からない。

 実際その場に立ってみなければ、何も。


「……まあとにかく今すぐ俺が聞きてえ事は以上だよ」


「これだけで良いのか?」


「そもそもお前記憶喪失で何も分からねえだろ。一応他に話せる事あるなら聞いとくけど、なんかあるか?」


「いや、正直何も無い気がするの!」


「じゃあ俺のターンは終わりだ。なんかお前も聞きたい事があるんだろ? 次はお前の番」


「うむ。そうか……じゃあ単刀直入に聞くとするかの」


 そして一拍空けてからユイは鉄平に問いかける。


「鉄平。お主は……何故ワシを助けようとした。おかしいんじゃろ、この世界の常識で考えれば」


 ユイからすればずっと宙ぶらりんになっていたであろう、大きな疑問を。


「助けた理由……か」


「普通に考えて助けるメリットが鉄平には無い訳じゃ。そりゃ疑問の一つや二つ位湧くじゃろう」


「確かにお前から自分乗っ取ろうとした相手を助けようとした訳だから、そりゃ意味分からねえよな……とりあえずあの時俺はさ──」


 別に隠すような事でもないので答えようとすると。


「あーちょっと待つのじゃ。分かったぞ、何故鉄平がワシを助けたのか」


 そう言ってユイは親指で自分を指し、ドヤ顔を浮かべて言う。


「鉄平、お主ワシに惚れたな」


「はぁ!?」


(なーに言ってんだコイツ)


「キュートなお顔に魅惑のボディ。剣のフォルムと比べれば見劣りするが、それでもワシは最強じゃ! とっぷおぶびゅーてぃーなのじゃぁ……」


 疑いの余地がないと言わんばかりの完璧なドヤ顔を浮かべるユイだったが、鉄平の表情は険しい。


「どうじゃ! 正解じゃろ!」


「いやちげえよ、正解な訳ねえだろ馬鹿」


 真っ向から否定させてもらう。


「え、ち、違うのか?」


「違うな、全然違う」


 超々童顔のスーパー幼児体型。というかキッズそのもの。


「その理由で助けてたら俺完全にロリコンになるだろうが」


「え、なんか結構な侮辱をされている気がするのじゃが」


「いや侮辱じゃねえよ。人の容姿の事直接言いたかねえけど、多分一般的にそういう風に見るには童顔過ぎるし魅惑のボディーにも程遠いだろお前」


 確かにユイは滅茶苦茶可愛いくて、いわゆる美少女というカテゴリーに分類されるのは分かっているが、そういう対象として見るかと言われれば話は別だ。

 普通にそういう風に見ちゃいけない。


 そしてユイは凄く不機嫌そうにジト目を向けて言う。


「おいもしやお主ワシに喧嘩売っとるのか?」


「いや売ってない売ってない」


「いーや売られたの。だから見せてみい、そこまで言うなら」


「えっと……何を?」


「ワシを越える凄いのをじゃ!」


「……」


 さてどうしたものかと考える。


(ユイの精神年齢がいくつくらいなのか分からねえけど、こういうの見せて良いのか……?)


 一応見せろと言われれば見せられる物がある。


(まあR18とかではねえしな、出すかこれを)


 そう結論を出して、近くに置いてあった青年漫画雑誌に手を伸ばす。


「これが俺の答えだ!」


 そして開いて突き付ける。

 大人気アイドルの圧倒的水着グラビア特集……!


「よしきた。どっちが本物のとっぷおぶびゅーてぃーか勝負じゃ!」


 そう意気込んで雑誌を受けとるユイ。


「ほう……なるほど……なる……ほど? ……………………え、…………ナニコレェ…………こんなのエッチじゃん……え……えぇ…………」


 次第に顔を真っ赤にさせながらぶつぶつとそう呟いた後、静かに雑誌を閉じるユイ。

 そして賞状でも手渡すように丁寧とこちらに雑誌を返してから、目を反らして震えた声で呟く。


「……生意気な事言ってすみませんでした」


 ショック受けすぎて口調変わっちゃって、なんか申し訳ないなぁと鉄平は思った。

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