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魔剣拾った。同居した。  作者: 山外大河
1-3 新しい日常 新しい非日常

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23/111

1 完全復活

「あのーご容体の方はどんな感じっすかね……って、思ったよりピンピンしてる!?」


 篠原からウィザードに勧誘された日の夕方、異界管理局内の医務室にて、近隣の高校の制服に身を包んだポニーテールの少女が驚きの声を上げる。


「ぶ、無事でーす」


 色々とフラッシュバックして情けない返答になりながらも、鉄平は腰掛けていたベッドから立ち上がってそう返答する。


「お、誰かと思えば柚子じゃな……いや、柚子さんって言うべきなのかの」


「いや柚子でいいっすよ柚子で、急にどうした……いや、どうしたってのは杉浦さんの方なんすけど」


 こちらに歩み寄りながら、柚子と呼ばれた少女は問いかけてくる。


「私朝の時点で意識が戻ってないって聞いてたし、そこそこ重い怪我をしてるって話だったと思うんすけど……どしたんすかマジで。いや色々な意味で元気なのは良い事なんすけど」


「まあそりゃ驚くか。俺も正直驚いてるよ」


 彼女が驚いている通り、鉄平の怪我は著しく回復している。

 まだ完治とは言い難いが、既にある程度動きまわれる程には回復している。

 その要因は……ユイの存在だ。


「ワシが天才で良かったの鉄平」


「ああ、マジで大天才」


「えーっと、何か特別な事でもしたんすか?」


 柚子の問いにユイが答える。


「今の鉄平にはワシの力が供給され、自然治癒の速度も上がっておる。じゃがそれでも何日かは治るまで掛かるとの話じゃったが……よくよく考えればワシが剣の姿になれば鉄平に供給される力は一気に上がる訳じゃ」


「それで書類とか用意してくれてた神崎さんに許可を貰ってユイを剣の形態にした訳だ。そしたらほら、この通りだ。ある程度元気元気」


 もっとも今のユイが剣の形態を作るのは燃費が悪いから、此処まで回復するのに何度か食事休憩を挟む必要がある。

 故にしっかり何食も食事ができる環境でしかできない荒業だが、此処ならそれができる訳で結果大成功だ。


「マジか……凄いっすね。フルパワーで敵に回るような事が無くて良かったぁ」


「そうじゃろう!」


 そう言って胸を張りドヤ顔を浮かべるユイ。

 実際凄い力だ。

 もし弱体化していなかったら、戦闘中でも目に見えて傷が治っていく化物が爆誕していたのではないだろうか?

 それこそ洒落にならない程強い侵略者が。


 柚子の心底安堵した表情がそれを物語っている。


「ま、そんな訳で俺は大丈夫。悪いな、なんか心配してくれたみたいで」


「そりゃそうっすよ! 私がぶん殴った結果昏睡状態になってた訳っすから! 完全に解析ミスっちゃったのかと! マジでよかったぁ」


 改めてそう言って胸を撫で下ろす。


 解析。

 おそらく自分達絡みの事で多忙になっている篠原の代わりに契約書などの用意や、ウィザードとして知っておかなければならない事を説明してくれていた神崎曰く、あの場で彼女が使った結界は、内部に閉じ込めた相手の肉体強度などを測る魔術らしい。

 それを用いて、民間人が肉体を乗っ取られたりした場合に、どの程度の攻撃なら被害者を殺害してしまわないかと測るそうだ。


 そのプロセスを経由しなければならない程、彼女の一撃は他のウィザードのものより重いのだとか。

 ……まあそれは鉄平も身を持って知っているが。


 敵に回せば恐ろしい。

 だが味方になってくれればとても頼りになりそうで、そしてもう味方だ。


「そういえば書類ってなんすか? ユイちゃん絡みの奴っすか? それともこっちの攻撃で大怪我負ったから慰謝料的な話っすか」


「んー前者寄りかな。ていうか慰謝料とか流石にもらえねえよあの状態で怪我しても。誰も悪くねえし」


「そう言ってくれると気ぃ楽になるっすよ……ああ、そうだ。ああいう戦い方をしてくれてありがとうっす」


「こちらこそ止まってくれてありがとう」


 お互いに頭を下げあった後、柚子は言う。


「で、なんの書類っすか。まあ個人的に気になるだけで、人に話しちゃまずいタイプの奴だったら全然言わなくていいんすけど」


「ああ、俺ウィザードになる事になったから、その為に必要な書類一式って感じだな」


「あー雇用契約書とかっすね……って今そんな事になってんすか!?」


「まあ色々有って、それがユイの安全を確保するのに一番良いなって事に」


「これでワシの安全はある程度確保され、鉄平の給料も上がる。色々と良い感じじゃ」


「後ろ半分は言わなくていい。そんな訳で宜しくお願いします、風間先輩」


「わ、私が知らない内に話進み過ぎじゃないっすか? ま、まあえっと、よろしくっす、杉浦さん」


 そんな訳で滅茶苦茶後輩みたいな喋り方をする年下の女の子の後輩になったのだった。

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