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ショートショート4月〜4回目

グラス

作者: たかさば
掲載日:2023/04/30

私には、お気に入りのグラスがある。


随分昔に、娘と一緒に子供会のイベントで作ったガラスのコップ。

透明で、水色とマリンブルーの模様が入った、やや重たいグラス。


夏、たっぷり氷を入れてサイダーを注ぎ、ぐびぐびと飲み干した。

夜、大きなロックアイスを一つ入れて、お気に入りのお酒を入れてちびちび飲んだ。


グラスを見るたびに思い出す、キラキラとした日々。


サイダーを飲まなくなって、久しい。

お酒を飲まなくなって、随分経った。


今、私は、グラスに水道水を注いで、薬を飲む。


若くて健康そのものだった時代は終わり、身体に薬を与えて癒すことが必要となったのだ。

自力では回復しない体をサポートするため、薬が不可欠となったのだ。


苦い薬を、お気に入りのグラスで飲む。


グラスの水を飲み干すとき、天井のライトがキラキラと光って見えるのが好きだ。

飲み干したグラスをあわあわのスポンジで洗って、布巾で雫を拭うのが好きだ。

ピカピカになったグラスを、戸棚の定位置にそっと置く瞬間が好きだ。


手作り感の溢れる、クールなくせに温かみを感じるグラス。

キラキラと輝く、思い出の染み込んだ重みのあるグラス。

どっしり構えたような、ちょうどいいサイズのグラス。


今から薬を飲むのだという、意気込みをもらえるグラス。


お腹を壊した時も、アレルギーを起こした時も。

頭が痛くなった時も、風邪を引いた時も。

血圧が上がった時も、めまいがした時も。


薬を飲む時専用のグラスとして、活躍してきた。


このグラスで飲めば、薬が効いた。

このグラスで飲めば、良くなった。


私にとって、このグラスはマジックアイテムなのだ。


いつまでも使っていきたい、お気に入りのグラス。


いつまで使う事になるのか、わからないけれど。


……大丈夫。

私は、大丈夫。


必ず 、薬は効くはずだから。


私はグラスの水をゴクリと飲み干し、そっと…目を閉じた。


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