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先輩とコーンスープ

「せんぱぁい、それはさすがにズルいっすわ~」


「なにがよ」

 そう笑った目のままで口と眉毛をへの字にした顔も相当にズルい。


「いやいや~、それはさすがにあざとすぎですわ~」

「だからなにがよ」


「そのコーンスープですよ。そんなんめちゃくちゃあざといじゃないっすか~」


 今日の先輩の飲み物は缶のコーンスープ。ここの自販機のはなぜか尋常ではない熱さなので、この季節、非常に人気の飲み物ではあるんだけど。


「なにがだよ。意味分かんねえし全然普通じゃん」

 なので、当然先輩の顔は全部呆れ笑いになった。


「いやコーンスープってめちゃくちゃ美少女映えする飲み物じゃないですか。あとおしるこも」

「いや知らんし。だとしてもだからなんだよ」


「だから両手萌え袖のもこもこのグレーのカーディガンでそれを口へ持っていく様だけでも反則すれすれの悶絶もんじゃないですか」

「いや知らんて」


「んで飲んだあと舌で上唇ちょっとぺろってしたじゃないですか。唇をぺろって。いやマジなんなんですかもう」

「お前がもうなんなんだよ。私ただ普通にコーンスープ飲んだだけじゃん」


 先輩の笑いは呆れを通り越して吹き出すまでになった。


「いやちょっとかわいすぎるんですよ。なんですかそれは。あざといにも程がある」

「だからお前これ直で触れんぐらいあっつあつだから袖伸ばして、飲んだ時唇にちょっと付いちゃったから舐めただけじゃん。全然普通じゃん」


「それがズルいってんですよ。そんなんかわいすぎて絶対笑っちゃうじゃないですか」


 あったか~いちっちゃい缶の飲み物と美少女の相性は抜群である。


 お茶や紅茶なんかだと缶がアルミで大きくなったり、ペットボトルになったりする。ちっちゃい缶なら他にコーヒーや甘酒もあるけど、なんかスレた感じになる。


 その点、コーンスープとおしるこの純朴さは素晴らしい。


 ちっちゃいかわいい女の子がほかほかあったか~いあま~いそれらをちっちゃいかわいいお手てに幸せいっぱいほくほくしてるなんていう図、ズルいと言わずしてなんと言う。


 しかもその上さらにぺろってするなんて。

 そんなの時代が時代なら磔刑に処されてもいいぐらいの大罪だよ。


 とはいえ。


 まあ先輩だもん。彼女に限って計算なんか無いのは分かってるけど。


「じゃあお前どうしたらいいんだよ。そんなん私コーンスープ飲めないじゃん」

「いやあたしは飲むななんて一言も言ってませんよ。ちょっとそれかわいすぎておかしいって言ってるだけですよ」


「あーそうなの」


 かわいいなんて言葉、聞き飽きただろう先輩だけど、こんだけ盛大な持てはやされ方だったらさすがにまずまず響いたらしい。ご機嫌がにじみ出ている。


「そうなんです。って、あ!」

「ん?」


「せっかくなんでさらにアレンジしましょう」

「ん?」


 かわいい先輩をもっとかわいく。


 あたしは机に置いていた自分のマフラーを先輩の首にふんわり巻いた。


 口元まで迫った淡いピンクのマフラー。萌え袖には湯気を立ち昇らせているコーンスープ。悶死もんである。


「飲みづれえんだが」


 そうは言いながらもご満悦ぶりが隠しきれていない。


「ふひひひ。これやっばいっす」


 そんな先輩の最強に愛くるしい姿をこれでもかとばかりに撮りまくった。


 やっぱりちんまり素直にしてるときのこの人ダメだ。

 いや、もはや人じゃない。

 このかわいさはもはや化け物だ。

 どうにかして物言わぬお人形さんにして永遠のものにしてやる方法は何かないかしら。

 ちょっと本気でそう思いかけてしまった。


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