表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/34

先輩とさらにバナナ

 と、あたしがバナナの仇を討ってやるかどうか真剣に葛藤しているところ、ドアがガラガラと音を鳴らして横に滑った。


「きたよ~」


 入ってきたのは料理先輩。


「よっす」「こんにちは~」

 と、こっちも挨拶を返した。


 何の用事かは知らないけど、今のあたしにそんなこと気にかけてる暇はない。また吹きすさぶ嵐のように教科書をめくり、逆巻く怒涛の如くシャーペンを走らせた。


 料理先輩は先輩の隣に座ると、


「バナナだねぇ」


 物欲しげな様子。


「おう。食べるか?」

 先輩は机の上に一本だけとなったバナナに手を伸ばしかけたんだけど、


「うん。でもそんなにいらないねぇ。ひとくちだけちょーだい」

 んあっと料理先輩は口を開いた。


 先輩はバナナを彼女の口に差し込んだ。


「ありがとぉ」

 料理先輩は微笑みながらもぐもぐ。


 修羅場のあたしもこれは見逃せない。教科書を睨みつけるのとノートを書き殴るのの向こうで繰り広げられる麗しい天使たちの戯れを一ピクセルも漏らさず眼球に焼き付けた。


「お前バナナ好きなの?」

 部長はまたそれを頬張りながら尋ねた。


「うん。好きだよ~」


 そう料理先輩がにっこり笑うと、先輩が会心の笑顔で、


「だよねーーーーっ!! バナナおいしーよねーーーーーーーっ!!」


 !?


「うん」

「食べやすいし! 甘いし!」


 !?


「うん」

「安いし! 柔らかいし!」


 !?


「そだねぇ」

「私も大好きなんだ! 十本ぐらいのやつ買ってきたんだけどもう八本も食べちゃった!」


 !?


「へえ~」

「そっかー。お前もバナナ好きかぁ」


 !?


『も』って!? 『も』って!? あんだけ文句言っときながら『も』って!? 


 満面にっこにこの先輩。料理先輩大好きなのは分かるけど、どの口がそんなこと言ってんの!?


 でもノリノリの先輩に対し、ただにこやかにうんうんと答えていただけの料理先輩なんだけど、


「あ~……ん~……、私もバナナ好きといえば好きなんだけど~、でもやっぱりそこまでじゃないかも~」

 彼女は首をちょっとかしげた。


「そうなの?」

 先輩もちょっとトーンダウン。


 でも、


「果物はもっとジューシーな方が好きなんだよねぇ」

「だよねーーーーっ!! やっぱ果物は果汁だよねーーーーーーーっ!!」


 !?


「あと、もうちょっと酸味があったほうがいいかも~」

「だよねーーーーっ!! 後味さっぱりするよねーーーーーーーっ!!」


 !?


「あと、食感もシャリシャリしてる方が好きかなぁ」

「だよねーーーーっ!! このもっさい感触はイマイチだよねーーーーーーーっ!!」


 !?


「皮がむきやすいのはいいけど、すぐ傷んじゃうのもちょっと嫌かも~」

「だよねーーーーっ!! 黒くなったところキモいよねーーーーーーーっ!!」


 !?


「だから私やっぱりバナナそんな好きじゃないかも~」

「だよねーーーーっ!! バナナダメだよねーーーーーーーっ!!」


 !?


「でもなんか話してたらもうちょっと食べたくなっちゃったかも~。やっぱりそれちょ~だい」


 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?

 

 料理先輩いいいいいいィィィィ!!!!!!!!!!!!


 あああああああああああああ!!!! 全然宿題終わんねーーーーー!!!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ