エイプリルフールの嘘と砂時計
時が止まって欲しい。
そう思ったら、僕はわかった気がした。
彼女から渡された砂時計を眺めた。
普通に在る砂時計とは少し違っていて凝ったデザインのお洒落なそれ。
片手に収まるほどの大きさのその砂時計を握って、僕は夜の公園のベンチに座り長方形で少し使い古された木材で出来た机にもたれ掛かっていた。
夜風が吹き、髪がなびく。顔にかかるそれを鬱陶しいとは思わなかった。
今日の出勤前彼女に渡されたもの。帰り道にふと気付く。
いつも通る公園に吸い込まれるように、僕は足を運んだ。
特に割れたりはしない。仕舞っておいたそれを取り出すと仄かな温かさを感じた。
砂時計。か。
随分と……。
暫く思考に耽っていた。
ぼんやりと意識が戻ってくる。
そろそろ帰らないとな。
僕は携帯を取り出そうとした。
手に持っている砂時計に目が行く。
瞬間間を置いて僕は砂時計を横向きにして置いた。
日付が変わる頃だ。
立ち上がり、並木道を歩き出す。街灯が僕の背中を照らす。
ただいま。貰った砂時計を自分のデスクの側に置いた。
ーーコーヒーを一口啜る。
部屋の電気を付けないまま、眺めたパソコンの電源を落とす。
暗闇の中佇むそれと共に、僕は今日も日常を繰り返す。
秒針がずれる。
日付が変わる音がした。