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4月11日(2) お久しぶりです、美鈴さんの巻

 桑原病院近くにある桑原南商店街を歩いていると、籠を持った美鈴と遭遇した。

 彼女は俺を見た途端、顔を青くしながら質問を投げかける。


「……お、お兄ちゃん、全治6ヶ月の大怪我負って、入院したんじゃないの?」


「ああ、それなら、もうとっくの昔に治った挙句病院から追い出されたぞ」


「……外の人間って、傷の治り早いんだね」


 何か致命的な勘違いをしているようだが、敢えて指摘しなかった。

 説明しようにも、どう説明したら良いのか分からないし。


「ん?その籠に入ってるのって、もしかしてお見舞いの品か?」


「うん、そうだよ。お兄ちゃん達が入院しているってお姉ちゃんから聞いたから」


 美鈴が持っていた籠の中を見る。中には色取り取りの果物が入っていた。


「やっぱ、果物か……」


「ん?もしかして、果物って駄目なの?」

 

「いや、正解だよ。王道って言っても過言じゃない。けど、……今の俺にお嬢様の舌を唸らせる果物を買うお金がねえんだよなあ」


「……お嬢様?」


「ああ、ちょっと縁があってな。俺の不祥事の所為で入院させちまったから、お詫びついでにお見舞い行こうかなと思って」 


「何があったら、お嬢様を病院送りする状況に陥るの!?」


 美鈴に魔女騒動に関して話すつもりは毛頭ない。

 この騒動のそもそものきっかけは、美鈴の身に降りたガイア神の所為なのだ。

 遠因が自分である事に気づいたら、間違いなく彼女は自分の事を責めてしまうだろう。

 ならば、話さない方が良い。

 もう終わった事なのだから。


「なあ、美鈴。予算2000円でお嬢様の機嫌を良くするお見舞い品用意する事できねえかな?」


「お兄ちゃん。私、まだお金の価値について分かってないから聞くけど、2000円あったら何ができるの?」


「ファミレスステーキ2人前」


「2000円ってかなりの価値があるんだね」


 ファミレスステーキ以上の食べ物を食べた事がない美鈴は目を丸くする。


「美鈴、外の世界は広いんだ。お嬢様学校の奴らにとって、ファミレスステーキは高級品でも何でもない。あいつらは時価ステーキを腹一杯食える程の金を持ってるんだからな」


「時価ステーキ?何それ」


「時と場合によって価値が変動する幻のステーキだ。ファミレスステーキの100倍美味しいと言っても過言じゃない。まあ、俺も食べた事ないんだけど」


「ファミレスステーキの100倍!?人間の味覚が耐え切れるレベルじゃないじゃん!!」


「お前、ナチュラルに人間舐めてる所あるよな」


「お兄ちゃんの事情は"だいたいしょうち"したよ。でも、その話が本当なら2000円でお嬢様を満足するものを用意するなんて無理なんじゃないの?」


「そうだよなあ、お嬢様にとって2000円なんて端金も同然だし」


「でも、やる事に意味があるってお姉ちゃんは言ってたよ。大切なのは気持ちだって」


「へえ、バイトリーダーもキマイラ津奈木と同じこと言ってたのか」 


「それ程、気持ちは大事って事なんだと思う。大切なのは誠意なんだよ」


「なるほど、誠意を見せれば良いんだな」


 蛇女に馬女に鳥女に蜘蛛女。

 そして、交番を襲撃した女子生徒達に蜂女達。

 幾ら事件を解決するのが最優先だったにしろ、罪のない彼女達を殴った事には変わりない。

 俺は彼女達に謝罪せねばならないのだ。

 特に蜘蛛女。

 他の奴等は手加減する事ができたが、あいつだけは本気でいかないと死んでいたため、仕方ないと言えば仕方ないのだが、それでも骨を折るのはやり過ぎた。

 土下座の1つ2つしなければ、高い慰謝料を取られかねない。

 そういや、女優の卵とか何とか言ってたような気がする。

 あり?下手したら芸能事務所に訴えられるんじゃねえの、俺。


「よっし!気持ち篭ったプレゼントを探すか!2000円で!!」


「で、お兄ちゃんは何人くらいに謝らなきゃいけないの?」


「最高1000人」


「何があったら1000人のお嬢様を病院送りにできるの!?」


「1人辺り2円か。もうモヤシ1本1本手渡すしか方法ねえな」


「モヤシ1本1本手渡すくらいなら何もやらない方がマシだよ!!」


「まあ、とりあえず最低5人は謝罪しないといけねえ事には変わりない。美鈴、お見舞い品選びを手伝ってくれ」


 俺の頼みに嫌な顔をする事なく、美鈴は俺の申し出を受け入れる。


「だいたいしょうち。何ができるか分からないけど、私にできる事があるなら手伝うよ」


 気持ち良い返事だった。

 初めて美鈴に頼もしさを感じる。

 俺よりちっこい癖に。


「じゃあ、とりあえず一軒一軒回るか」


 かくして、俺と美鈴は四季咲達のお見舞いの品を探すため、商店街を練り歩く事にした。


 新しくブックマークしてくれた人、そして、評価してくれた人、そして、いつも読んでくださる人、過去にブックマークしてくれた人にこの場を借りてお礼を申し上げます。

 本当にありがとうございます。

 来週から始まる新章の準備であたふたしていますが、皆さんが読んでくれているので、モチベーションは高い状態で保たれています。本当にありがとうございます。

 これからも毎日更新し続けるので、よろしくお願い致します。

 

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