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4月9日(35) VS四足歩行の獣の巻

 予め言っておこう。

 俺は人型の奴としか喧嘩した事がない。

 今までの人生、4足歩行の奴と殴り合った事なんか1度もない。


「にゃあああああ!!!!」


 右の籠手を使いながら、魔女の左前脚を受け流す。

 魔女は勢いを殺さず、そのまま俺に丸太のように太い尾を打つける。

 一瞬だけ反応が遅れてしまった。

 慌てて籠手で尾を受け止める。

 魔力でできた尾に白雷が流し込まれた。

 が、右手から骨の軋む音が聞こえて来たため、俺は反射的にバックステップしてしまった。

 その行為が隙を生んでしまう。

 魔女はもう1回転加えると、再び俺に尾を打ちつけた。

 魔女の尾はさっき白雷を流し込まれた事により弱体化していた筈。

 なのに、魔女は再度尾で攻撃して来た。

 魔女が繰り出す非合理な攻撃に戸惑った俺は、ほんの一瞬だけ反応が遅れてしまう。

 その所為で魔女の尻尾をギリギリの所で防いでしまった。


「くっ……!」


 右の籠手から生じた白雷が魔女の尻尾を食い尽くす。

 しかし、尾がなくなったにも関わらず、魔女は特に気に止める事なく、頭突きを仕掛けて来た。

 走行中のトラック並みのスピードで迫り来る魔女を何とか避ける。

 魔女の頭が地面に直撃した途端、衝撃によって身体が吹き飛ばされてしまった。

 地面を派手に転がりながら、心の中で舌打ちする。


(くそ……!攻撃が全然読めねえ……!!)


 人間との喧嘩に慣れている俺は、構えや目の動きなどで、何処にどんな攻撃が飛んでくるのか経験則で大体分かる。

 だが、4足歩行の奴と喧嘩した事がないため、何処に何が飛んで来るのか全然分からなかった。

 加えて、魔女は頭に血が昇った状態。

 だから、殆ど本能任せに攻撃している。

 そのため、攻撃を先読みする事ができない。

 獣と喧嘩した事がない俺は直感任せでしか奴の攻撃を防ぐしか術がない。


「にゃあああああ!!!」


 魔女は無造作に前脚を振り下ろす。

 たったそれだけで地面に亀裂が走り、奴の足跡が刻み込まれる。

 1発1発はとても重く、凄まじい破壊力だった。

 もし直撃でもしたら、1発で異世界転生……いや、そんの悠長な事を言っている場合じゃない。

 間違いなく死んでしてしまうだろう。

 魔女の攻撃は右の籠手である程度半減できる。

 そのため、蛇女の攻撃と比べると、防ぎやすいっちゃ防ぎやすい。

 が、重さは右の籠手で防ぎようがないため、受け流す以外方法がない。

 受け止めたら間違いなく、右腕は折れてしまうから。

 かと言って、ちょっとずつ触れる程度では、魔女の身体に白雷を満足に流し込む事ができない。


(どうすれば良い……!?どうすれば……!?)


 魔女の突風と言っても過言ではない猛襲を風に吹かれる木葉のように揺れながら避け続ける。

 躱せなかった一撃は右の籠手で受け流し、隙を見ては電撃を流し込む。

 だが、ちょっと触る程度では、魔女が身に纏う魔力の鎧を剥がす事なんてできやしない。

 まさに八方塞がり。

 奴の動きを止めない限り、俺に勝ち目はない。


(全力の右ストレートを叩き込めば倒せるかもしれないが、………クソ、隙がなさ過ぎる!)


 心の中で毒吐きながら、魔女から大きく距離を取る。

 魔女は喉を鳴らしながら俺を威嚇した。

 その姿に隙らしい隙は見当たらない。

 否、考えを改める。

 隙がないのではない。

 俺が隙を見出す事ができていないだけだ。経験値が足りてない故に迂闊に攻められない。ただ、それだけの話だ。


(奴の動きさえ読めれば、いや、動きさえ封じれば……!)


 会心の一撃さえ与えれば確実に勝てる。

 今の俺には全ての魔を払い除ける籠手があるのだから。


「司!10分だ!!10分さえ時間を稼げば、魔女の魔力は尽きる!!それまで何とか耐えてくれ!!」


 校舎の陰から啓太郎の声が聞こえて来る。

 振り向く余裕がなかったので、何処にいるのか具体的に分からないが、まだ近くにいるみたいだ。


「うっせー!無茶言うな!!このペースで10分も持つかっての!!」


 俺がそう叫んだ瞬間、魔女は大地に尻尾を叩きつけた。

 俺は魔女の攻撃を連続バク転により何とか回避する。

 すると、魔女は地面を引っ掻くように前脚を振り上げると、剥いだ土砂を俺目掛けて飛ばし始めた。


「ちょ、…….まっ……!」


 全ての魔を払い退ける籠手でも、魔力の"ま"の字さえない攻撃は防ぎようがない。

 降り落ちてくる土の塊を避けるため、俺は魔女に背を向けると、全速力で駆け出した。

 隕石のように落ちてくる土塊と津波のように押し寄せてくる土砂が俺に襲いかかる。

 俺は校舎の窓を突き破ると、そのまま校舎の中に侵入した。

 土岩が校舎を揺さぶったかと思いきや土砂の波が建物を押し潰し始める。

 足を止める事なく、俺は運動場とは正反対側にある中庭側の窓を突き破ると、中庭に出た。

 振り返る。

 俺を追っかけていた土の波は呆気なく校舎を押し潰してしまった。


「逃すか……!!」


 空高く跳び上がった魔女は、余裕で校舎だったものを飛び越えると、口から無数の魔弾を吐き出す。

 雨のように降り注ぐ魔弾を右の籠手で弾き飛ばしながら、落ちて来る魔女から必死に逃げる。

 文字通り宙を蹴った魔女は加速しながら落下すると、躊躇う事なく尾を俺の頭目掛けて振り下ろした。

 それを横に大きく跳ぶ事で回避した俺は再び校舎の中に入ろうとする。

 平地よりも遮蔽物が沢山ある校舎の方が隙を作れるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱きながら、校舎の窓をもう1回突き破る。

 女子校の廊下は俺が通っている学校の廊下よりも豪華だった。

 ドラマなどでよく見かけるお金持ちの家みたいな空間を必死こいて走り抜ける。

 すると、背後から爆音が聞こえ出した。

 振り返る。

 俺を焼き殺そうとする爆炎が物凄い速さで接近していた。

 

「うおっ……!!」


 中庭側の窓目掛けてダイブする。

 爆風が背中を炙るのを感じ取りながら、窓ガラスを突き破ると、俺は中庭の上を転がりまくる。

 それを狙ってたかのように、魔女は俺に飛びつこうと地面を4本足で蹴り上げた。

 上下左右何処に逃げても攻撃を喰らってしまう。

 そう判断した俺は勢い良く立ち上がると、右の籠手で受け流しながら、奴の攻撃を躱す。

 奴の前脚が地面に直撃した途端、衝撃波が俺の身体を呆気なく吹き飛ばした。

 俺の身体は再度地面の上を跳ねる。


「こにょ、ちょこまかと逃げ回りやがって……!!」


 魔女は肩で息をしながら、俺を睨みつける。

 俺はようやくここで魔女の身体──巨大な化け猫みたいな姿がさっきより縮んでいる事に気づいた。



 


 いつも読んでくださる人、過去にブックマークしてくれた人に厚くお礼を申し上げます。

 昨日は久しぶりに足を攣って大半な目に遭いましたが、皆さんがこの小説を読んでくれているお陰で心だけはめちゃくちゃ元気です。

 本当にいつも読んでくれてありがとうございます。

 

 金曜日の更新についてですが、話の都合上、11時・12時・13時に更新する予定です。

 また、具体的な日時は決めていませんが来週も複数話連続投稿する予定である事もこの場を借りてご報告させていただきます。

 これからもよろしくお願い致します。


[追記] 2月17日16:25分

 2月17日12時更新時に金曜日に複数話投稿すると書きましたが、私情により明日木曜日に複数話投稿させて貰います。

 本当に申し訳ありません。

 時間は10時・11時・12時・13時に予定する予定です。

 これからも何卒よろしくお願い致します。



 

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