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4月9日(33) 「ただのお巡りさんだ」の巻


「蜂って外骨格があるらしいな」


 息を軽く吸い込み、迫り来る蜂女達と向かい合う。


「怪我したくない奴は去れ。──手加減なんか一切しないからな」


 そう言って、蜂女達の群れに突撃する。

 彼女達は俺の右の籠手を警戒していた。

 だから、右の拳を囮にして、右手以外で彼女達に打撃を浴びせる。

 右手のフェイントは笑えるくらい彼女達に効果的だった。

 左手で繰り広げた掌底打ちを1番近くにいた蜂女に浴びせる。

 右の拳を恐れるあまり、蜂女の回避はワンテンポ遅れた。

 俺の背後を取った蜂女達が拳を振り上げようとする。

 それを察知した俺は右の籠手を後方目掛けて振り回した。

 彼女達の動きが一瞬だけ止まる。

 その隙に俺は背後から攻撃を仕掛けようとした彼女達に横蹴りを浴びせた。

 全力の蹴りをモロに浴びた彼女達は悲鳴を上げる事なく、その場に伏せる。


「怯むな!!数で押せば、絶対に勝てる筈だ!!」


 魔女に言われるがまま、押し寄せる蜂軍団。

 右の拳でフェイントを入れながら、手刀と足刀を浴びせる事で、確実に彼女達の意識を刈り取る。

 彼女達が右の籠手を非常に恐れているお陰で、彼女達が魔女に与えられた力を使いこなせていないお陰で、彼女達が仲間を傷つけないように力をセーブしてくれているお陰で、俺は何とか圧倒する事ができた。

 拳を避けては肘打ちを喰らわせ、蹴りを避けては蹴りを浴びせ、タックルを浴びせようとした蜂女を跳んで回避し、そのまま踵落としを落下地点にいた蜂女に喰らわせる。

 

「な、なんで、……お前は、そんなに強いんだ!?それもその籠手の力なのか……!?」


 俺を取り囲むように襲いかかる蜂女達の殴打を最低限の動きで避けると、すれ違い様に彼女達の身体に手刀を浴びせる。

 そして、彼女達を気絶させると、俺は戦闘不能状態に陥った蜂女達を喧嘩に巻き込まないよう、他の所に移動しながら答えた。


「俺が強いんじゃない。あんたらが長所を潰し合っているだけだ」


 何もかも噛み合っていない。

 故に1000人相手でも五分以上に闘えている。

 もし魔女が力を使いこなしていたら、蜂女達が力を使いこなした上で上手に連携が取れていたら、蜂女達が仲間を傷つけないように力を抑えていなかったら、勝負にさえならなかった。

 が、それも今この時だけ。

 この調子で喧嘩し続けていたら、俺の方が先にバテてしまう。


(こりゃまずいな)


 まだ800人弱残っている蜂女達を見つめながら、苦笑いを浮かべる。

 多分、どんだけ頑張っても残り200人くらいが限度だろう。

 現に蜂女達との喧嘩で生じた疲労が肉体に蓄積されている。

 休憩を挟みながら喧嘩すれば6時間くらいで全員倒せるだろうが、この調子で続けて行ったら先に体力が尽きてしまう。

 どうしたものかと考えていると、魔女の視線が俺の背後に移った。


「見ろ、クソガキ!私の駒が搾りカスを捕まえたぞ!!」


 振り返る。

 魔女の言った通り、四季咲は蜂女の1人に捕まっていた。


「下手に動くなよ!!動いたら、その搾りカスをぶっ殺すからな!!」


「神宮!私に構うな!!私は見殺しにしていい!!だから、彼女達を……!」


 魔女の脅しに屈する事なく、今にも蜂女に首を絞められそうな四季咲は自分を見殺せと平然に言ってのける。


「黙らせろ」


 魔女は蜂女に彼女を気絶させるように命じた。

 四季咲を拘束していた蜂女は一瞬だけ躊躇うと、最終的には彼女の意識を刈り取る。

 俺は四季咲の言動と蜂女達の何もかも諦めているような瞳に半ば呆れながら、次の手をぼんやり頭の中で模索した。

 が、俺の低レベルの頭ではロクな策が浮かび上がって来ない。

 この状況に少し焦りながら、佇んでいると、何処からか男の人の声が聞こえてきた。


「どっかの偉い人はこう言ってたよ"人を救うのは人しかいない"って」


 突然、聴き慣れた男の声が校庭中に響き渡る。

 魔女は勿論、蜂女達も、そして、勿論俺もその声の主により困惑してしまった。


「僕も最初聞いた時その通りだと思っていたよ。だって、人は他の動物と違って、言葉さえ扱えれば、他人に助けを求める事ができるんだから。それに人間には相手の気持ちを思い遣る事ができる知能も持っている。他の動物を貶しめる訳じゃないけど、人はどんな動物よりも確実に助けを求めれる生き物だって思い込んでいた」


「誰だ!?」


「が、その考え自体、人間の傲りだって事に最近気づかされたよ」


 校庭に見慣れた警官と魔法を奪われたアホが現れる。彼等が現れた瞬間、校庭を包んでいた雰囲気がガラリと変わった。


「幾ら言葉を巧みに扱えようが、幾ら相手を思い遣る事ができる知能を持っていようが、救われる気が最初からない奴を救う事なんてできっこない。救いを求めていない人を強引に救った所で、ただのありがた迷惑になるからね。結局、自分を救えるのは自分しかいないんだからね」


「お前は誰だ!?」


 魔女は堂々と校庭に入って来た警官──松島啓太郎はつまらなそうに魔女の質問に答える。


「ただのお巡りさんだ」


 かなりブックマーク数が伸びた上に評価もめちゃくちゃ伸びました。

 新しくブックマークしてくれた人、そして、評価してくれた人にお礼を申し上げます。

 本当にありがとうございます。

 昨日は嬉し過ぎて、自分の部屋の中で歓喜の舞を踊っていたら、弟から奇声発するなと注意されました。

 今度は無言で踊ろうと思います。

 そして、いつも読んでくださる人、過去にブックマークしてくれた人にもお礼を申し上げます。

 みなさんが毎日読んでくれているお陰で累計PVが1万超えました。

 投稿開始して明日で1ヶ月。

 まさか累計PV1万超えるとは思っていなかったので、めちゃくちゃ嬉しいです。

 本当にありがとうございます。

 また、皆さんのお陰で「価値あるものに花束を」が文芸アクション部門の日刊ランキング20位以内に入っていました。

 本当、みなさんが読んでくれているお陰です。

 本当にありがとうございます。


 累計1万達成を記念して後日短編を掲載する予定です。

 内容は本編から一年前の話になると思います。

 また、本日13時から「価値あるものに花束を」のバレンタインデー前日のお話を掲載するつもりです。

 これも本編前の2月13日のお話です。

 ついうっかり食べてしまった寮長のチョコを司・委員長・伊紙丸・布留川が隠蔽しようとして頑張るお話です。

 もしよろしければ、以下のURLで掲載していますので、ぜひ読んでください。

(https://ncode.syosetu.com/n3259gu/)


 これからも完結するまで毎日更新しますのでよろしくお願い致します。

 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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