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4月9日(30) 「言っただろ、盗賊女帝」の巻

 本日最後の投稿です。

 押し寄せて来る炎の波を地面スレスレまで身を屈める事で何とか避け切る。

 

「にゃ……!?」


 魔女は目を大きく見開くと、あと一歩まで迫った俺と距離を空けるため、一歩後退した。

 俺は激痛が走る腹部に構う事なく、大きく地面を踏み込むと、魔女の顔面に右の拳を叩きつけた。

 

「ぎゃ……!」

 

 魔女は短い断末魔を発すると、無様に地面を転がる。


「──力の差が、何だって?」


 腹部の傷を押さえながら、俺は魔女を挑発する。

 さっきの攻防だけで再び腹部に血が滲み始めた。

「ちょ、……調子に乗るなよ!無価値な人間如きが……!!」


 魔女は鼻血を垂れ流しながら、両掌を俺に向けると、巨大な光の塊を俺目掛けてぶっ放す。高密度のエネルギーの塊を右に大きく跳ぶ事で回避した。

 それと同時に天から無数の黒い剣が降り落ちる。

 地面を思いっきり蹴り上げた俺は、落ちて来る剣を紙一重で躱しながら、魔女に殴りかかった。

 魔女は怯えたような表情を浮かべると、瞬時に肉体を石に変換する。

 拳を開いた俺は魔女の腹部に掌底打ち── 掌の手首に近い肉厚の部分または付け根の堅い部分を使用した突き技──を放つ。

 俺の掌底打ちをまともに喰らった彼女は石化を解くと、腹部を押さえながら、その場に蹲った。


「ぐ、にゃあああああ!!!!」


 魔女は腹を押さえながら絶叫する。

 追撃を与えようとするが、腹部の傷の所為で上手く動けなかった。

 

「お前、……!一体なにを……!!身体を石にした筈なのに……!!」


「表面が石になったからって内臓まで石になってる訳じゃないだろ?そんな事をしたら生命活動に支障が生じるからな」


「な、なにを言って……」


 本気で俺の言っている事が分かっていないのか、魔女は顔を青褪める。


「あんたの内臓に直接打撃を与えたんだよ」


「……は?」


 腹部から生じる痛みに耐えながら、俺は違和感を抱く。


(……おかしい)


 本来なら手負いの俺と魔女は喧嘩にならない程の実力差があった筈だ。

 俺に放った魔法もフェイントさえ入れれば、魔法の雨嵐を無傷で切り抜ける事はできなかった。

 そもそも俺は既に満身創痍の状態。

 冷静になれば、或いは魔法を上手く使えば、手負いの俺を狩るなんて動作もなかった筈だ。

 なのに、何故か俺は魔女を圧倒している。


「な、何を勝ち誇っている……!?余裕振るにはまだ早いぞ!!」


 魔女は炎剣を生み出すと、それを俺目掛けて振るう。

 直情的な一撃を回避するのは容易だった。

 全てが俺を殺すための一撃。

 だから、全部躱してしまえば問題ない。

 後方にステップしながら、彼女の拙い剣捌きを避ける。

 躱してはいけない攻撃がない上、熟練されていない剣を避けるのは、今の俺にとって、とても容易な事だった。

 たとえ腹部から絶え間なく激痛が走っていたとしても。

 それがハンデにならないくらい、魔女は"弱かった"。

 魔女が炎剣を振り回すのに疲れ始めるのと同時に、俺は魔女の顎目掛けてアッパーを繰り出す。

 俺の攻撃は面白いくらいに魔女の顎に突き刺さった。

 無様に地面に背中をつける魔女を見て、俺はここまで遭遇した半人半魔の少女達を思い出す。

 みんな魔女から与えられた異形の力を使いこなせず、自滅してしまった。

 十二分に力を使いこなせていたら、喧嘩が滅法強いだけの手負いの俺なんて瞬殺できただろう。

 けど、彼女達は魔女から与えられた力を使いこなせなかった。

 むしろ、その力が彼女達の足を引っ張っていた。だから、俺なんかにやられた。 


「天使の力、人から奪った力、ねえ……」


 拳を鳴らしながら、怯えた目で俺を見つめる魔女を睨みつける。


「だから、あんたは弱いんだ。与えられた力も人から奪った力を自分のものにできていない。そんな付け焼き刃じゃ俺には届かねえよ」


「く、来るな!!」


 彼女の足元の地面から土砂が噴出する。

 それを身を低く屈める事で回避すると、隙だらけだった魔女の鳩尾に全力の右ストレートを叩き込んだ。


「が、あっ……!」


 魔女の身体はみっともなく地面を転がる。

 魔女は短い断末魔を漏らしながら、魔法を使う事なく、両手を使って俺から距離を取ろうとした。

 俺はゆっくりと歩み寄りながら、右の拳を握り締める。

 魔女は怯えた顔で右の手を振り上げると、俺の周囲を影で取り囲んだ。

 この影は見覚えがある。

 女子生徒達から人間性を奪った魔法だ。

 そして、魔女と初遭遇した時、俺の視界を真っ黒に染め上げた魔法だ。

 右手で俺を取り囲んだ影を振り払う。

 たったそれだけの動作で影は霧散てしまった。


「な、なんでお前から奪い取れないんだよ!?」


 魔女が俺の事を必要以上に俺を警戒した事、そして、俺の事を無価値と罵った理由を完璧に理解する。

 初遭遇の際、魔女は俺から要素を奪い取ろうとして失敗したのだ。

 魔女は奪い取れなかった理由を俺に価値がなかったからと結論づけた。

 だが、次々に仕向けた刺客を俺に撃退された事で、奴はその結論が間違っている事に気づいてしまった。

 だから、俺を排除しようとしたのだ。

 不確定要素である俺を。


「お前が俺より格下だった。それだけの話だろ?」


 俺の挑発に乗った魔女は怒りで我を忘れたような表情を浮かべると、一瞬でその場から消える。

 背後から強烈な殺意を感じ取った俺は振り返る事なく、右の裏拳を俺の背後を取った魔女に浴びせた。


「にゃ……!」


 魔女は再び姿を晦ます。

 芸もなく、また俺の死角に移動したのだろう。

 そう予想した俺は、瞬時に振り返ると、瞬間移動し終えた魔女にアイアンクローを喰らわせる。


「ぶにゃ……!?」


 両頬を俺の指によって潰された魔女は驚きの声を上げる。

 そのまま俺は魔女の頭を地面に叩きつけた。

 魔女は受け身を取る事なく、地面に叩きつけられると、あまり効いていなかったのか、よろよろと立ち上がる。


「──もう1度聞くぞ」


 サンドバッグと言っても過言じゃないくらい俺の攻撃を浴びに浴びた魔女を眺めながら、特に感情を込める事なく、俺は先程した質問と全く同じ事を魔女に聞き返した。


「──力の差が、何だって?」


 魔女の意識を確実に刈り取るため、後退る彼女に少しずつ近寄る。

 その時だった。

 焼いて塞いだ筈の傷口から血が噴出し出したのは。


「ぐっ……!」


 俺は両手で腹部を押さえながら、膝を地面につける。

 無理に動き過ぎた代償はとても重かった。

 自身の血液で両手は真っ赤に染め上げられる。

 それを見た魔女は渇いた笑みを浮かべると、瞬時に瞬間移動して、俺から大きく距離を取った。


「そうか……そうか……!お前の攻撃手段は拳しかない!そして、身体能力も人間の領域を出ていない!なら、拳が届かない距離から避けられない攻撃を撃ち続ければ、お前に勝てる……!!」


 単純だが、俺にとってはかなり有効的な作戦を思いついた魔女は遠距離から無数の光弾を放ち始める。

 俺は傷の痛みに耐えながら、即座に立ち上がると、降り注ぐ光弾を避けるため、全力疾走し始めた。

 だが、今の俺の状態では真の意味での全力疾走はできず。


「っ………!」


 万全な状態ならともかく、今の傷だらけの状態で、腹から血を垂れ流している状態で、回転式機関銃のように放たれる光弾を避ける事はできない。

 1発2発程度なら避けられるが、避けたら他の弾の餌食になってしまう。

 結局、俺はどうする事もできないまま、ダメ元で迫り来る光弾の1つを右の拳で殴った。

 爆炎が俺の皮膚を軽く炙る。

 爆音が俺の骨に響く。

 爆風はいとも簡単に俺の身体を吹き飛ばす。

 光弾の爆風をモロに浴びた俺は地面の上を勢い良く転がりながら、傷1つついていない右腕を不思議がる。

 他の箇所は爆炎により大なり小なり火傷を負った。

 なのに、右腕だけはカッターシャツの袖が燃え尽きただけで傷1つない。


(どう、……して)


 勢いを失った俺の身体は地面を転がるのを止めると、体勢を整える。

 光弾を殴ったからなのか、俺の身体は思ったよりダメージを受けていなかった。

 軽い火傷と地面を転がった際に生じた打撲・擦り傷のみ。

 腹の傷さえなければ、すぐにでも立ち上がれるくらいの軽傷だった。


(そうか……消えた訳じゃなかったのか)


 全身の力を振り絞りながら、俺は再び立ち上がる。


「……な、何をした、お前……!!」


 魔女も俺の異変に気づいたらしく、声を荒上げる。

 敢えて俺は何も答えなかった。

 魔女は怯えたような表情を浮かべたかと思いきや、俺の後方に視線を向けると、ニヤリと嫌らしく微笑む。


「いや、お前が何をしようと、あの搾りカスを狙えば、お前はあいつを守らざるを得なくなる………!B専だったのが仇になったな、人間……!!」


 俺はB専じゃねえよという否定の言葉を飲み込み、慌てて背後にいるであろう四季咲の元へ駆け寄る。

 彼女は校舎の影に隠れて、俺らの喧嘩を見ていた。


「……!神宮、うしろっ!!」

 

 四季咲は俺の背後を指差す。

 俺は何が起きようと、彼女を守れるまでの距離まで近寄ると、彼女の指差す方向を振り向いた。

 魔女が放ったのは炎の獅子。全長60m程の獣の形を象った炎は雄叫びを上げながら、大地を駆け抜ける。


「逃げられるもんなら逃げてみろ!その場合、背後にいる搾りカスは確実に焼け死ぬだろうけどな!」


 魔女の勝利宣言が夜の学校に響き渡る。俺は四季咲のすぐ近くまで近寄ると、彼女の前に立った。

 確証はない。

 根拠もない。

 それでも、俺は右の拳を握り締める。

 まだ俺の闘志が消えていない事を確認した四季咲は、着ていた俺のボロになったカッターシャツをギュッと握り締める。


「頼む、……もう無理をしないでくれ。私を見捨てて助かるなら、遠慮なく、その道をを…………頼む、私は、君を死なせたくないんだ……」


「四季咲。お前さ、最初会った時、私の事を信じてくれって言ったよな?」


 炎の獅子が俺達の下に近づく度、俺の右腕に熱が篭り始める。

 この感覚を俺は知っている。

 腹の傷が急速に癒え、全身に走っていた痛みは瞬く間に消失してしまう。


「ならさ、お前も信じてくれないか?俺の事を。──俺は最後まで走り切る。そして、化け物にされた人達も何とかする。お前もお前が大事に思っている人も全部まとめて救い上げてみせる」


 迫り来る巨大な獅子を右腕1本で払い除ける。

 獅子に触れた途端、膨大な量の白雷が夜の校庭に迸った。


「な、なんだと……!?」


 漆黒に包まれた校舎が白雷に照らされる。

 体内に入り込んだ雷により、その身を冒された獅子は瞬く間に霧散してしまう。

 白雷は火の粉1つ残さない勢いで獅子を喰らい尽くしてしまった。


「言っただろ、盗賊女帝」


 右腕に纏わり付く籠手の感触を噛み締めながら、俺は呆然と立ち竦む魔女を睨みつける。


「──あんたじゃ俺には勝てねぇよ」


 この場を借りて、新しくブックマークしてくれた人にお礼を申し上げます。

 そして、いつも読んでくださる人、過去にブックマークしてくれた人、心より感謝いたします。

 本当にありがとうございます。

 皆さんのお陰でそろそろ累計1万PV突破しそうなので、累計1万PV突破記念用の短編を現在執筆中です。

 まだ書き始めたばかりなので、あまり大きな声で言えませんが、1万PV突破するであろう来週辺りに投稿する予定です。

 また、重ね重ね告知しますが、バレンタインデー用に異世界から追放された悪役令嬢と普通の大学生のバレンタインデーを巡るお話を投稿しています。

(https://ncode.syosetu.com/n1448gu/)

 こちらの方も読んでくれると嬉しいです。

 これからも引き続き、よろしくお願いいたします。


 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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