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4月9日(24) VS蜘蛛女の巻

 僅かに感じる敵意に導かれた俺は、町外れの廃墟へと辿り着く。

 元はホテルか何かだったのだろう。

 錆びた看板と朽ちたビル、そして、無駄に広い駐車場がこの土地の歴史を物語っていた。

 荒れ果てた駐車場──なのに、駐車場にある車数十台はまだ現役のように見える──の中を歩きながら、上から視線を送りつける何者かに声を掛ける。


「いるんだろ、出て来いよ」


 俺の呼びかけに応えるように、ビルの屋上から鉄骨が飛んでく来た。

 避けなければ直撃する一撃。

 不意を突かれた俺は大袈裟に地面を転がる事で辛うじて回避した。

 

「あら、避けちゃうのね。殺すつもりで投げたのに」


 ビルの屋上の方から女性の声が響き渡る。

 ビルの屋上に視線を送ると、そこには聖十字女子学園の制服を着た蜘蛛女──上半身は人間だが、下半身は蜘蛛の脚。身長は大体3メートル──と白い糸で腕をぐるぐる巻きされた四季咲がいた。

 四季咲は今にも罪悪感で死にそうな表情を浮かべながら、俺の方を一瞥すると、そのまま俯き始める。

 彼女の無事を確認した俺は心の中で安堵しながら、蜘蛛女に質問を投げかけた。


「……あんたも俺らを生捕りしに来たのか?」


「ええ、そうよ。あたしはあんたを生捕りにするわ。腕の1本2本は覚悟しなさい」


 そう言いながら、蜘蛛女は屋上にあった白い糸を巻き付けた鉄骨を次々に俺目掛けて投げ始める。

 俺は高速で落下する鉄塊を全力疾走する事で回避した。

 鉄骨が地面に突き刺さると共に轟音とアスファルトの破片が俺の身体を打ちつける。

 殺意しか秘められていない鉄の雨を目の当たりにした俺は思わず固唾を呑んでしまう。


(今までのお嬢様達と違う……!こいつ、俺を殺す気だ……!!)


 きっと殺す気で臨んで、初めて俺を生捕りにできると判断したのだろう。

 今まで相対して来た女子生徒と違い、厄介な事この上ない。

 だって、彼女は強過ぎるから。

 強過ぎて手加減する事が難しいから。

 蜘蛛女は拘束した四季咲と共に地上に降り立つ。

 着地した彼女は腕から発した白い糸を鞭のように扱うと、それを俺目掛けて振るった。

 鞭の一撃はまるで豆腐を切るかのようにアスファルトの地面を一刀両断してしまう。

 その一撃をみっともなく地面を転がる事で回避した俺は、急いで立ち上がった。

 ──だが、俺が攻撃に転ずるよりも蜘蛛女の攻撃の方が断然速い。

 蜘蛛女は地面を両断した白い糸を自ら断ち切ると、腕から新しく生成した糸で自分の近くで停まっていた車を巻きつけた。

 そして、糸で車体を軽々と持ち上げると、四輪車を俺の方へと投げつける。

 重さ数百キロある鉄塊が俺の方へ飛んで来る。

 落下地点を瞬時に想定した俺は、急いで降り落ちる鉄塊から逃げようとした。

 蜘蛛女は両腕の糸で次々に駐車場内にある車を宙に持ち上げると、俺を取り囲むように鉄塊を投げつける。

 次々に飛んで来る鉄の塊を全力疾走する事で何とか直撃を回避し続けた。

 が、隕石のように降り注ぐ車を避ける度に、剥げたアスファルトの破片が俺の身体を痛めつける。

 破片だけは先読みで避けられる代物じゃない。

 破片が顔面に当たらないように、両腕で顔を守りながら、致命的な一撃だけを避け続けた。

 地面から生じるアスファルトの散弾が徐々に俺の体力を──少しだけであるが──奪っていく。

 やっとの事で、鋼の雨を潜り抜けた俺が目にしたのは、蜘蛛女の腕から生じた白い糸に炎が纏わり付く光景だった。

 心臓の鼓動が跳ね上がる。

 俺は上から車が落ちてくるにも関わらず、本能的に足を止めた。

 蜘蛛女は躊躇う事なく、炎の鞭を横薙ぎに振るう。

 炎の鞭は降り落ちる鉄塊を焼き斬りながら、着実に確実に俺に迫り来る。

 直撃すれば、間違いなく溶けて死ぬ一撃を俺は地面に伏せる事で何とか避けた。

 急いで立ち上がり、蜘蛛女との間合いを詰めようとする。

 が、駆け出すよりも先に炎の鞭で焼き斬られた鉄塊が爆発してしまった。

 爆炎と爆風が十何年も手入れされていないであろう駐車場内を埋め尽くす。

 立ち上がろうとした俺の身体は爆風に煽られ、無様に地面を転がってしまう。


「くそ……!」


 火の粉が付いた学ランを脱ぎ捨てた俺は、この猛攻を仕掛けた蜘蛛女を睨みつける。

 彼女は不敵な笑みを浮かべると、両腕から白い糸を出した。


「本当、あんたって不思議よね。女王みたいに魔法を使える訳じゃないのに、あの攻撃をほぼ無傷で切り抜けるなんて。本当、煩わしい」


 息を切らしながら、蜘蛛女の言葉に耳を傾ける。

 たったこれだけの攻防で、擦り傷レベルではあるが、ちょっとダメージを貰ってしまった。

 つまり、今目の前にいる蜘蛛女は今まで相対して来た半人半魔の少女達よりも、かなり魔法と怪物の力を使いこなしていると言える。

 とてもじゃないが、手加減したままの状態だと勝てそうにない。


「……悪いけど、本気で行かせてもらうぞ」


 覚悟を決めた俺は息を短く吐き出すと、右の拳を力強く握り締めた。



 いつも読んでくれてありがとうございます。

 今日もブックマークが増えていたので、この場を借りてお礼を申し上げます。

 そして、いつも読んでくれている方、変わらずブックマークしてくれている方、厚くお礼申し上げます。

 本当にありがとうございます。


 今週の金曜日に5話分更新する件についてですが、時間が決まりました。

 8時・9時・11時・12時・13時頃に1話ずつ更新します。

 バレンタインデー用の小説も現在用意中なので、今後もよろしくお願い致します。

 

 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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