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4月9日(21) おっぱい除いたら好みのタイプが言えなくなったの巻

 馬女の後始末を啓太郎達に押し付け、俺達は聖十字女子学園目指して突き進む。

 もう女子校がある町に着いたというのに、俺らは中々女子校に辿り着く事はできなかった。


「なあ、四季咲。本当にこの道で合ってんのか?」


「多分、合っていると思う。……おかしいな、いつもなら道に迷う事なんてないのに」


 土地勘のない俺は四季咲に女子校までの道案内をしてもらっている。

 が、中々到着しない。

 まるで、いや、比喩表現ではなく迷路の中にいるみたいだ。

 そもそも、この辺りは結構田舎で、2階以上の建物は学校の校舎以外ないと言っても過言ではない。

 にも関わらず、校舎の"こ"の文字さえ見えないのが現状だ。

 もしかしたら、魔女が何か魔法とかで細工をしたのだろうか。


「四季咲、これから知っている道だけを通ってくれ。町を満遍なく歩いた方が効率的だ」


「ん?どうしてだ?それだと時間の無駄ではないのか?」


「多分、お前が道に迷ってるのは魔女の仕業なんだと思う。女子校がこの町にあるのは確かなんだろ?なら、闇雲に探すよりも、道を思い出しながら歩くよりも、しらみ潰しにした方が遥かに効率的だ」


「…….ああ、なるほど。確かにそっちの方が効率的だな」


 彼女は少しだけ首を傾げながら、俺の意見に賛同する。

 その表情はかなり暗いものだった。


「どうした?パッケージ詐欺にあった男子高校生みたいな顔をして。俺から言わせてもらうと、表紙の女の子目当てで買うんじゃなくてシチュで買った方が後悔しないぞ」


「君は一体何の話をしているんだ?」


「エロ本の話だ」


「一体、何の話をしているんだ!!??」


 彼女はエロに免疫がないのか、顔を茹でタコみたいに真っ赤にしながら、声を張り上げる。


「俺も初めてエロ本買った時は失敗したよ。金髪爆乳外国人の女優が表紙だったのに中身は純和風熟女百合もののドロドロ寝取りものだったからな。いや、あれは今思い返しても、かなりのトラウマだった。そういや、鼻フックのシーン見て号泣したっけ。懐かしいな」


「何で君は18歳以上にしか購入できないエロ本を買っているんだ!?君は私と同じ高校2年生だろ!?まだ18じゃないだろ!?」


「大丈夫だ、心は18歳だから」


「大丈夫な訳あるか!」


「ていうか、そういうお前はどうやって性欲を解消してんだよ。どうせネットサーフィンしてるんだろ?電子の海からエロスの波動を感じ取ってるんだろ?知ってるからな、俺は」


「そんなはしたない真似、誰がするか!!」


「え?じゃあ、あれか?本とかネットとか使わずに妄想だけで致している系?」


「それ、ただのセクハラだぞ!?女の子相手にしていい話題じゃない!!」


 今までにないくらい顔を真っ赤にさせながら、彼女は興奮しまくる。

 エロ本というキーワードだけで興奮できる彼女が羨ましい。

 そういや、俺も小学生の頃はエロ本というワードを聞くだけで悶々してたっけ。


「じゃあ、女の子にして良い話題って具体的に何だよ」


「例えば……、そうだな。美味しい紅茶の話とか昨今の世界情勢とか勉強の話とかだな。……あと、好きな男性のタイプとか」


 "好きなタイプの男性"という部分を小声で呟きながら、彼女は顔を更に真っ赤にさせる。

 どうやら、俺が思っている以上に彼女という人間は結構初心らしい。

 まさに箱入りお嬢様といった感じだ。


「じゃあ、聞くけど、お前の好きな男性ってどんなタイプだ?」


 女の子にして良い話題に上がっていた1つを質問してみる。

 彼女はマニアックな性癖を語る男子高校生みたいに恥ずかしそうに身をよじりながら、質問に答えた。


「そう、だな……、ちゃんと私という人間を見てくれる人だな。家柄とか才能とか立場とか一切気にせずに、私個人を評価してくれる人が良い。そういう人を伴侶にしたいと私は考えている」


 健全過ぎる答えが返ってきて、俺は唖然としてしまう。

 お嬢様学校の奴等が純真過ぎるのか、それとも女子高生という生き物が純真過ぎるのか。

 俺が知っている女性陣──バイトリーダー、委員長、お巡りさんの雫さんと寮長、そして、鎌娘──は外見至上主義なため、より一層彼女の純真さが際立ってしまう。

 特に雫さんとか"ポコチンが20センチ以下の奴は男と認めない"と豪語しており、外見至上主義者の中でもアレな部類に分類されるくらい酷い。

 まあ、爆乳の子以外と付き合わないと宣言している俺が言えたもんじゃないが。

 俺も十分アレな部類なのだ。


「それ以外に求める事はないのか??ポコチン何センチ以上が良いとかなんとか」


「その質問もセクハラだ!!何で君はすぐに下の方に走ってしまうんだ!!??」


 男友達や雫さん達と話す感覚で話していたら怒られてしまった。

 彼女の男にしか見た目の所為で心のブレーキが壊れているんだろう。

 深く反省する。

 彼女の身は男だが、心は女なのだ。

 もう少し気を遣わなければ。


「こほん、で、そういう君はどういう好みなんだ?どういう女性を理想としているのだ?」


 四季咲は赤くなった頬を手で扇ぎながら、逆質問をしてくる。

 ここで素直におっぱいが大きい女の子と答えたら、また彼女に不快感を与えてしまう。

 俺はなるべく下の方に流されないように気をつけながら、彼女の質問に答える。


「そうだな、……うん、好みのタイプとしてパッと挙げられるのは、……パッと挙げられるのは、………パッと……挙げられるのは、…………」


 ヤバイ、おっぱい除いたら好みのタイプが言えなくなってしまった。

 ちょっと期待しながら、返答を待つ彼女を見て、俺は謎の使命感に似た何かに駆られてしまう。

 だが、おっぱい以外出てこない。

 頭を捻りに捻った結果、一時期、俺は金髪爆乳外国人にハマっていたのを思い出す。

 小学生の頃、パツ金チャン姉外国人が沢山出てくる映画を見たを見た俺は、将来爆乳外人と付き合いたいと一時期本気で思っていた。

 どのくらい本気だったかというと、独学で英語フランス語イタリア語ドイツ語を習得するくらい。

 それくらい俺は本気で金髪爆乳外国人と付き合いたいと思っていた。

 そんな青臭い過去を思い出した俺はおっぱい成分をなるべく削って、彼女に己の情報を提供する。


「金髪ばくに……外国人だな。うん、パツ金外人」


「乳房がはみ出てるぞ」


 削り取る事ができなかった。

 しょうがない、男の子だから。

 みっともないと自覚しながら開き直る。


「当然だ、何故なら俺は哺乳類だからな。乳が好きなのは当然の事だろ!!」


「何でそんなに誇らしげなんだ!?」


 話していてよく分かった。どうやら俺と彼女の価値観はかなり違うみたいだ。

 話が上手く噛み合わない。

 ここまで会話できたのは全部彼女が俺に合わせてくれているお陰だ。

 本当、下品で申し訳ない。


「すまんな、こんなおっぱい星人が会話相手で」

「いや、気にしなくて良い。君のセクハラは直接行為に及ばない分、遥かにマシだ。私の友人なんかもっと酷いぞ?止めてと言っても下ネタが止まらないし、気分が乗ったという理由で直接秘部まで触ってくる。ついた渾名は歩く性衝動。それはもう、……酷いものだ」


 四季咲は明後日の方向を見ながら、酷く疲れたような顔をする。

 今までの彼女の純真さから察するに、俺達が普段話しているような下ネタと比べると可愛いものだろう。

 彼女の言う通り、同性や異性の秘部に触らない分、俺らの方が遥かにマシなのかもしれない。


「でも、そいつもお嬢様なんだろ?そこまで過激な行為に及ばないんじゃ、……」


「いや、君の想像してる10倍は酷いと思うぞ。……去年までの彼女は虫さえも殺せないくらい可憐で大人しい乙女だったんだ。だが、去年の今頃に"無敵"という2つ名を持つ不良に助けられてから、彼女は変わり果ててしまってな。最初は助けてくれた不良に淡い恋心を抱いていたが、どんどんその想いがエスカーレトしてしまって。今ではその無敵という輩に会うため、近隣高校を牛耳る暴走族らを性的不能になるまで尋問したりとか、同じ寮にいる女の子の肢体を舐め回したりとか、とにかく笑って許せないくらいのギリギリのラインを攻めまくっているのだ」


「は、はあ……」


 彼女は友人の尊厳を守ろうとしているのか、具体的にその友人が何をしたのかは敢えて言わなかった。

 多分、女の子の肢体を舐め回す行為がギリギリ言える範囲なのだろう。

 流石に俺の知り合いでも女の子を舐め回す程の変態はいない。

 というか直接接触型の変態とは会った事がない。

 俺らは際どいネタでキャッキャ言ってるだけで、性犯罪ギリギリの線を攻めた事は一切ないのだ。

 多分だけど、俺らよりも四季咲の友人の変態度は高いだろう。

 俺も数多の不良と遭遇して来たが、流石に性的不能になるまで追い込んだ事はない。

 てか、どうやったら人を性的不能になるまで追い込む事ができるんだよ。

 話を聞くだけでゾッとする。


「それって、馬女や蛇女の事じゃねえよな?」


「ああ、彼女達ではない。その友人は幸か不幸か思い人である"無敵"を追って、今県外の病院にいる。何でも苦瓜が入ったらいけない所に入ったらしくてな。彼女は彼女で大変な目に遭っているらしい」


「ん?その入ったらいけない所って何処だ?もしかして、気道とかか?」


「……大丈夫だ、命に別状はない」


 彼女は曖昧な笑みを浮かべるだけで具体的に何処かは答えなかった。

 どこに入ったのか、すっげえ気になる。


「てか、何でヤンキー追ってたら苦瓜で病院送りになるんだよ。因果関係が全く見えないぞ」


「……女の子にも色々あるという事だ」


「なんだ、そりゃ。まあ、その友人が思い人である無敵とやらに会える事を祈っとくよ」


「止めろ、祈るな。彼女の思い人が苦瓜の被害者になる」


「苦瓜は凶器か何かなのか?」


 深刻な表情で無敵とやらの不良の心配をする四季咲。

 まあ、大丈夫だろ、無敵という2つ名貰ってるんだし。

 てか、俺も一匹狼や黒猪みたいなカッコいい2つ名欲しい。

 何で全国各地のヤンキーから喧嘩売られてるのに俺だけ2つ名ないんだよ。めちゃくちゃ腹立つ。

 そんな事を考えていると、頭上から薄い敵意を感じ取った。


(敵、か……?)


 全意識を聴覚に傾ける。

 今、この町にいる人々は全員昏睡状態に陥っている。

 そのため、生活音や車のエンジン音など全く聞こえない。

 聞こえるのは家から漏れ出るテレビの音と風の音、そして、翼の音。


 違和感を抱いた俺は慌てて空を仰ぐ。

 夜空には女面鳥身の化物──ハーピーがいた。

 翼と下半身が鳥となった少女は翼から生じた緑の衝撃波を躊躇う事なく、俺らに浴びせようとする。

 俺は直様四季咲を抱き寄せると、迫り来る緑の衝撃波から彼女を守った。

 瞬間、彼女のいた地面に減り込みが少しだけ陥没する。


「……なっ!?何が起こっ……」


「やっぱ、現れるよな……!!」


 遥か上空に位置する半人半鳥を睨みながら、右の拳を握り締める。

 この喧嘩で1番恐れていた事が今、現実のものとなって俺達に襲いかかって来た。


「四季咲、気をつけろ!相手は魔法使いだ……!!」


 いつも読んでくれてありがとうございます。

 今朝確認したらブックマークが増えていたので、この場を借りてお礼を申し上げます。

 そして、いつも読んでくれている人、変わらずブックマークしてくれている人達に深い感謝の意を申し上げます。

 本当にありがとうございます。

 まだまだ未熟ですが、みなさんが読んで良かったなと思えるような作品を提供できるように頑張ります。

 これからもよろしくお願い致します。

 

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