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4月9日(15) 蛇女の巻

「……こんばんは。元会長、そして、ジングウツカサ。女王様の命で貴方達を殺しに来ました」


 遊具1つ無い夜の公園に半人半蛇の化物が俺達の前に現れる。

 彼女の着ている制服から察するに、隣にいる四季咲の学友らしい。

 俺はおにぎりを食べながら、目の前の化物に話しかける。


「ふぉふぉふぅ?ふぁふぃふぃふぇんふぁ?(殺す?何言ってんだ?)」


「せめて食べるか聞くかどっちかにしてくださいまし」


 優香里と呼ばれた化物は眉間に皺を寄せながら、俺を睨みつける。

 彼女に言われたので、俺は食べる事に専念した。


「……もしかして、わたくし舐められていらのでしょうか?」


「神宮、話が進まないから食べるのを一旦中断してもらっていいか?」


 四季咲に言われたので、俺は渋々ながら食べる手を止める。


「で、あんたはここに何しに来たんだ?」


「女王様に命じられて、貴方達を殺しに来ました。……って、これさっきも言いましたよね?」


 蛇の彼女は半ば呆れながら、俺らを物理的に見下す。


「優香里、本当にそれは君の意思なのか?」


 四季咲は怯えた様子で目の前の蛇女に尋ねる。


「…….はい、私の意思で貴方達を殺しに来ました」


 蛇女はちょっとだけ言い淀むと、躊躇いを帯びた視線で四季咲を見つめる。

 四季咲は酷く動揺していた。

 彼女がまともに喋れない状況みたいなので、彼女が聞きたかったであろう質問を俺が引き継ぐ。


「人間に戻るためか?」


 俺はコンビニで買ったお茶を飲みながら彼女に質問を呈する。


「……これ以上、人の形を失わないためですよ。もし女王様に逆らったり、命令を遂行できなかったら、私は物も喋れない蛇になってしまうのです」


 ここに来る前、人の形を失った聖十字女子学園の生徒達を思い出す。

 多分、俺が生き残ったら目の前の蛇女も彼女達みたいな惨めな姿になってしまうだろう。


「なら、一生その女王様とやらの言う事を聞き続けるのか?」


 ペットボトルの蓋を閉めながら、淡々と事実だけを突きつける。


「女王様とやらの機嫌を取り続けたら人間に戻れるのか?逆らわずに素直に言う事を聞き続ければ状況は改善するのか?」


 目の前の蛇女は何も答えない。

 いや、答える事ができない。

 思考を止め、盲目に魔女の言う事を聞く今の彼女に答えなんか出せる訳がない。


「今のお前は状況が悪化する事をただ恐れているだけだよ。そんな生産性も欠片もない選択肢を選ぶ人間に俺らの命はやれない。……来いよ、蛇女。俺らの命を奪いたかったら、力尽くで奪ってみせろ」


 蛇女は感情任せに大樹の如く太く逞しい蛇の尾を俺の頭上目掛けて振り下ろした。

 俺は隣に座っていた四季咲を突き飛ばすと、頭上から迫り来る攻撃を難なく避ける。

 俺が座っていたベンチは蛇女の尻尾により粉砕されてしまった。

 尾が地面に当たった衝撃により俺に突き飛ばされた四季咲は地面に尻餅をつく。

 俺は彼女を巻き込まないよう、全力でその場から離れた。


「逃がしませんわ……!」


 蛇女は横薙ぎに尾を振る。

 俺はそれを身を屈める事で回避すると、蛇女から距離を取る。

 蛇女は自身の尾を器用に振り回しながら、俺を徐々に追い詰めた。

 太い鞭のような攻撃を間一髪の所で躱しながら、俺は四季咲を巻き込まない場所まで後退していく。

 躱す度に彼女の攻撃は遅く鈍いものに変わっていった。

 息が上がってないにも関わらず、だ。


「くっ……!この、ちょこまかと!!」


 蛇女の攻撃を躱していくと、いつの間にか俺はアスファルトで舗装された道路上まで移動していた。

 ここなら四季咲を巻き込まないと判断した俺は右の拳を思いっきり握り締める。


「さ、蛇のお嬢様。ちょくら喧嘩しようぜ」


 奴は自らの尾をアスファルトの地面に叩きつける。

 奴の重い一撃は呆気なくアスファルトの地面を軽々と粉砕した。

 次に放たれた横薙ぎの一撃が俺の背後にあった塀をぶち壊す。

 尻尾が当たっただけで、塀は豆腐のように崩れ去った。

 直撃したら間違いなく異世界転生だ。

 一撃でも貰えば、女神様から貰ったチート能力と現代知識を駆使して、第2の人生──異世界スローライフというのは名ばかりの爛れたハーレムライフを送る羽目になる。

 転生するなら爆乳獣っ娘がいる世界に転生したいなと思いながら、蛇女の連撃を大縄跳びをするような感覚で避け続ける。

 彼女はまだ自分の身体の扱い方に慣れていないのか、動きがぎこちなかった。

 だから、避けるのは非常に簡単だった。

 多分、あの尾の破壊力に怯えなければ、小学生でも避けられるだろう。


「な、何故当たらないのです……!?」


 ただのステップだけで避け続ける俺に違和感を抱いたのか、彼女は焦りながら俺に攻撃を加える。


「お前が人間だからだよ」


 食後の運動の所為で腹が痛くなってきた。さっさとこの喧嘩を終わらせようと、俺は蛇女との間合いを一足飛びで詰める。

 そして、彼女の顔面に右の拳を叩き込んだ。

 案の定、人間部分の所は人間の時よりも強度が増しているらしく、右の拳に硬い感触と手応えのなさが伝わってきた。

 

(手加減し過ぎたか……)


 半人半蛇の奴と闘った事がないから勝手が分からない。

 麻薬を過剰摂取した人間や魔法使い、そして、神様。

 人外染みた奴等と喧嘩した事は多々あるが、全員人の形は辛うじて保っていた。

 だが、今目の前にいる彼女は違う。

 上半身は人だが、下半身は蛇そのものなのだ。

 だから、勝手が分からない。

 さっきの攻撃も彼女の足が人のものだったら、一撃で気絶させる事ができただろう。

 恐らく、彼女は無意識ながら蛇の尾を使う事で背後に退いていたんだと思う。

 その所為で拳が入るのが浅かったのだ。

 人間でもあり、蛇でもある。

 そんな彼女に俺は調子を狂わされる。


(ちょっとやり難いな……)


 非常に面倒だと思いながら、俺は欠伸を浮かべた。暁上程斗(あけのぼのりと)

 いつもお世話になっております暁上程斗"あけのぼのりと"です。

 非常に遅れましたが、この場を借りて、ブックマーク・評価してくださった方、そして、いつも読んでくださっている方にお礼を申し上げます。

 本当にありがとうございます。


 あと、もう一つだけこの場を借りてお伝えしたい事があります。

 今日から1日1話投稿と言いましたが、あれ嘘です。申し訳ありません。

 本日はもう1話だけ投稿させて貰います。

 更新は16時頃にする予定です。

 これからも不定期的に2〜3話投稿する事がありますが、その時は後書きやツイッター(@Yomogi89892)などで報告させて貰います。

 これからも完結予定日である4月まで毎日更新続けていきますので、よろしくお願い致します。

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