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4月9日(5)女子高校生に殺されるの巻

 美鈴と別れて数十分後。

 生徒会室にあった総重量20kgの紙の束が入った段ボールを抱えた俺は、会長と共に聖十字女子学園行きのバスに乗る。

 聖十字女子学園は俺が通っている高校から、ちょっと離れた所──と、言っても隣町の隣にあるのだが──にある。

 風の噂によると聖十字女子学園はお嬢様学校らしく、由緒正しい家柄の人が多く在籍しているらしい。

 当然、農家の子であり、身も心も男性である俺には縁もゆかりもない学校であり、もし会長から声を掛けられなかったら、学園の敷地内に足を踏み入れる事は一生なかっただろう。

 そんな学校に俺は向かっている。

 

「女子校、……か」


「どうしたんですか?そんな浮かない顔をして」


「いや、沢山女子がいそうだなぁって」


 今朝の占いを思い出した俺はこれから待ち受ける苦難に身震いしてしまう。


「女子校ですから当たり前です。何か女子校に嫌な思い出があるんですか?」


「今流行りの占いアプリによると、魚座の人は今週1週間、女難の相が出てまして」


「意外ですね、貴方が占いの結果を気にするなんて。占いは所詮バーナム効果と統計学をミックスさせた催眠術です。未来を妄想するものであって、未来を予測するものではないんですよ」


「それは理解してますけど、……今週1週間貴方は女の子に袋叩きされますって言われたら、誰だって気分落ち込むじゃないですか」


「なら、別の占いの結果を見て気持ちを紛らわせた方が良いでしょう」


 そう言って、会長はポケットからスマホを取り出すと、検索エンジンにて1番最初に出てきた占いのサイトをタップする。

 俺は会長に占いに必要な情報を伝え、彼女に自分の運勢を占ってもらった。


「………あ」


 俺の占いの結果を見た途端、彼女は顔を青くした。

 結果は見るまでもない。

 悲惨なものだったのだろう。

 一応、念のために聞いておく。


「金運は普通でしたが、健康運と仕事運、そして総合運は最悪でした」


「……何に気をつけろと書かれてましたか?」


「女と蜘蛛です」


「会長。俺、女子校の外で待っときます」


「それだと不審者扱いされて、逆に不利な状況に陥ると思いますよ。とりあえず、女子校にいる間は私が守りますから、安心して着いてきて下さい」


 占いの胡散臭さを証明するための行為が、逆に占いの信憑性を増す結果になってしまった。

 他の占いサイトを調べようとした所で、バスは女子校前に着いてしまう。

 今の俺にとって女子校は絞首台にしか見えなかった。

 13階段を昇るような心境で俺は女子校の敷地内に足を踏み入れる。

 敷地内に入った途端、帰宅途中の女子生徒──しかも高貴なオーラが滲み出ているお嬢様らしい女の子──から、陰のある目で見られた。

 先程の占いの結果もあって、詰られているようにしか思えない。


「か、会長、………やっぱ、俺外に出た方が……」


「わ、私から離れないでください!近くにいたら幾らでも守れますが、近くにいないと何も守れません……!」


「そういや、会長って何座でしたっけ?」


「魚座ですが何か?」


「会長!さっさとここから逃げましょう!!魚座のあんたじゃ俺を守り切れねえ!!」


 打ち合わせがある事を忘れ、俺は慌てて女子校から出ようとする。


「待ってください!!何処に行こうとしているんです!?」


「こんな所にいられるか!!俺は寮に帰らせてもらう!!」


「古典的な死亡フラグを立てないでください!!」


 会長に首根っこを掴まれた俺は引きずられる形で打ち合わせ場所である聖十字女子学園生徒会室に連行される。


「うぎゃあああああ!!!女子高生に殺されるううううう!!!!」


「人聞きの悪い事を言わないでください!!聖十字女子学園の生徒達はみんな良い人達です!!」


「嘘だ!あいつら全員おっぱいにミサイル搭載してんだろ!?俺が何かやらかしたら、おっぱいミサイルで俺を殺すんだろ!?知っているからな、俺は!!だって、俺、賢いから!!」


「賢い人間はおっぱいミサイルなんて単語を口走りません!!ていうか、貴方は女子高生を何だと思ってるんですか!?」


「対魚座殲滅人型兵器。おっぱいミサイルで魚座を爆殺し、お尻ソードで魚座を刺殺する魚座を殺すためだけに生まれた哀しい兵器」


「哀しいのは貴方の被害妄想です!小学生の方がまだまともな思考しますよ!!」


 こんな感じで揉めていると、会長の頭に何処からか飛んできたソフトボールが激突する。

「きゃいん」 


「会長おおおおおお!!!!」


 魚座の会長は踏まれた犬みたいな声を出すと、その場で気絶してしまう。

 俺は魚座の運命を嘆く事しかできなかった。


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