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4月3日 (7) VS四天王の巻

2階に辿り着いた瞬間、次の階に繋がる階段から鉄の踊る声が聞こえて来た。


「ほう、お主がここにおるという事は、朱雀は倒されたという訳じゃな」


 昇り階段に腰掛けていたのは着物を着た若ハゲ男だった。彼が抱いている高そうな日本刀が目に入る。


「げ、日本刀かよ」


 銃の次に苦手な武器を持つ奴を見て、俺は溜息を吐き出す。


「それもただの日本刀なんかじゃない。『雷走』という名の神造兵器じゃ」


 彼は目にも映らないスピードで抜刀する。たったそれだけの動作であの刀の特異性を思い知らされた。


「この刀は神速の抜刀術を可能にする夢のような刀じゃ。このように普通に振るう分はただの刀と変わらんが、一旦刀に納め、抜刀すると………」


 彼は刀を鞘に納めると、再び目に映らないスピードで刀を抜刀する。とてもじゃないが、人類が躱せるスピードではなかった。


「このようにワシのようなど素人でも達人以上の抜刀術を繰り出す事ができる。さ、これで分かったじゃろ?魔法も魔術も使えないお主ではワシに勝てない。生存を諦めろ。そして、大人しくその首を我が神に捧げるが良い」


 偉そうに刀の鋒をこちらに向ける若ハゲ。奴が油断し切っていたので、俺は勢い良くガラスの床を蹴り上げる。俺の行動が予想外だったのか、彼は目を大きく見開くと、慌てて刀を突進して来る俺目掛けて振るった。だが、素人に毛が生えた程度の斬撃では俺を一刀両断する事は叶わず。俺は奴の刀を真剣白刃取りで受け止めた。


「なっ!?」


「抜刀術に特化した刀を普通に振ってどうすんだよ。長所潰しているだけじゃねえか」


 全力の右ストレートを奴の顔面目掛けて振るう。たったそれだけでハゲ男は気絶してしまった。


 もし奴が俺の接近と同時に刀を納刀していたら、勝敗は逆転していただろう。抜刀術に特化した兵器と知りながら、抜刀術を使わなかった。言葉にしてしまうと、彼の間抜けさがより際立ってしまうが、まあ、勝ちは勝ちだ。


「次」


彼の死屍──まだちゃんと息はある──を超え、次の階へ移動する。階段の段数は俺が想像していたよりあった。

3階のフロアに辿り着いた俺に待ち受けていたのは、雫さんと同い年──20代中頃くらいの女性。西洋風の鎧に身を包んだ彼女は、西洋剣を手に持っており、どこからどう見ても女騎士のコスプレをしているようにしか見えなかった。当たり前のように居座る彼女を見た俺は、思わず溜息を吐き出してしまう。


「……もしかして、フロアボス倒さないと上の階に上がれない仕組みなのか?」


「まあ、そんな所です。上に行きたければ、私を倒してから行くが良い」


「なあ、何であんたらは1人ずつ侵入者の相手しているんだ?1対1より徒党を組んで対処した方が効率的じゃないのか?」


「その答えは非常に明瞭かつ簡潔。神造兵器を持った者にとって連携は非常に非効率的だからです。この兵器1つで戦況をガラリと変えてしまえるんですよ?連携する必要があると思いで?」


「あると思うぞ」


 今まで倒してきた神造兵器持ちの奴を思い浮かべながら肯定する。多分、あいつらが手を組んでいたら、間違いなく俺は死んでいたと思う。


「なら、胸に刻み込むが良い。神造兵器を持った者は一騎当千だという事実を!」


 彼女は手に持った西洋剣を黄金色に輝かせる。


「この剣はかの聖剣エクスカリバーを模して造られた神造兵器!魔力を溜めた一撃は山3つ分、余裕で吹き飛ばせます!」


「なあ、儀式場ってこの上にあるんだろ?」


「ええ、それがどうかしましたか?」


「それをぶっ放したら、間違いなく上にある儀式場も吹っ飛ぶぞ」


「あっ……」


 彼女は魔力を溜めるのを止めると、脂汗を垂れ流し始める。


「だ、だが、聖剣が持つ必殺技が使えなくても、この剣が神造兵器である事に変わりはない!」


 そう言って、彼女は西洋剣を上段に構えると、そのまま俺目掛けて突撃する。だが、体力がないのか、たった数回、剣を振り回しただけで彼女は息を荒上げた。


「幾ら武器が立派だとしても、使い手が未熟だったら、宝の持ち腐れだ」


「ば、馬鹿にするなっ!まだ攻撃は終わっていない!!」


 彼女は鎧をガチャガチャ言わせながら、俺に剣を当てようとする。握力も限界を迎えていたようで、フルスイングすると共に彼女は剣を手放してしまった。彼女は膝に手を突くと、物凄い形相で息を吸い込み始める。


「出直してきな。今のあんたじゃ、話になんねぇよ」


 彼女が息切れを起こしている隙に俺は上の階へ移動した。下から彼女の抗議の声が聞こえて来るが完全無視。何であいつ、運動神経ない癖に鎧着ていたんだろう。謎だ。


 次の階で待ち受けていたのは厳つい鎧を着込んだ男だった。


「ほう、他の四天王を全て倒したか。だが、俺は四天王最強の男!お前に傷を負わせた奴等よりも俺は遥かに強い!!肉体強化の魔術でトータル300キロの鎧を着こなせる俺に不覚はない!!」


 俺に傷を負わせた四天王──多分、神装兵器を持った人達の事だろう──を思い浮かべる。誰1人俺に擦り傷1つ与えていなかった。ふと、彼の右の籠手に既視感を覚える。よくよく見ると、俺が教主に奪われた籠手とデザインがそっくりだった。


「その鎧、もしかしてアイギスって名前なのか?」


「おうともよ!って言っても、教主様のと違ってビリビリは出ねぇけどな!だが、この鎧はどんな攻撃にもビクともしねえ!お前がどんな銃火器持ってようが、あいつらから奪った神造兵器を持ってようが、この鎧には無意味だって事だ!!」


「つまり、絶対的な防御力を持っているって事か」


「そういう事だ!そして、俺はこの防御力を有効活用する事ができる!それがこの必殺技!"猪突猛進フィルガロ・バランディーノ“だ!!」


 そう言って、鎧の主は重い鎧を着込んでいるのにも関わらず、常識的範疇のスピードで俺にタックルを仕掛ける。

総重量300キロ級の突進を難なく躱す。もし直撃したら間違い無く異世界転生してしまうだろう。死を連想させるくらい破壊力を秘めた一撃だった。……まあ、一直線に走って来るだけなので、余裕で避けられたんだが。


「逃げても無駄だ!俺のタックルを止められる奴は何処にもいねぇ!」


「だろうな、お前の攻撃は誰にも止められない」


 鎧武者は勢いを殺す事なく、ガラスの壁に激突する。そして、壁を粉々に砕くと、そのまま止まる事なく塔の外に飛び出てしまった。


「自分自身でさえもな」


「ぎゃあああああああ!!!!!」


 壁に空いた穴から聞こえて来る鎧武者の絶叫がどんどん遠退いていく。暫くすると、物凄い音量の落下音が塔の下から聞こえてきた。


 ズキズキ痛む頭を押さえながら、俺は儀式場がある最上階に移動する。さっきの鎧武者が最後だったのだろう。階段を昇り切った俺の前に教主と気絶した美鈴が現れた。教主は俺の姿を見ると、少しだけ驚いたような顔をするが、すぐさま余裕振った表情を取り繕った。


「よくぞ辿り着いた、ジングウツカサ。先ずは貴様の蛮勇を褒めてやろう。と、言っても、ここに辿り着くまでの代償は高かったみたいだな」


 塞がっていた筈の傷口からかなりの血が零れ出る、そんな満身創痍な俺を見て、教主はニヤリと微笑む。多分、この傷は四天王が負わせたと勘違いしているのだろう。色々言いたい事はある。けど、先ず、これだけは言わせて欲しい。


「あんたんとこ、馬鹿しかいねぇのか」

 本日は13時頃にも更新予定です。

 よろしくお願い致します。

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