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地下室の巻


「……なんだ?この石像……?」


 血に塗れた石像を見つめながら、俺と啓太郎は首を傾げる。

 石像はおっさんの形をしていた。

 石像の容姿はお世辞にも見目麗しいとは言い難く、何でこんな石像を造ったのか分からない程、見応えのないものだった。


「結構、傷だらけだな。もしかして、古いものなのか?」


 石像は所々欠けていた。

 右腕が捥げているわ、右側頭部は少しだけ欠けているわで、とても悲惨な状態だった。

 

「……司、見ろ」


 啓太郎は顔を青褪めながら、恐る恐る石像の破損箇所を指差す。

 破損箇所から血と思わしき赤い液体が漏れていた。


「……なっ!?」


 石像から滴る赤い液体を見て、俺は思わず言葉を失ってしまう。

 嫌な推測が頭を過った。

 啓太郎の頭にも俺と同じ推測が過ったのだろう。

 彼は眉間に皺を寄せると、石像から視線を逸らした。


「ちっ……!」


 右の籠手を着けた俺はすぐさま石像に白雷を流し込もうとする。

 それを啓太郎は言葉で押し留めた。


「ダメだ、司……!迂闊に触るな!もしかしたら取り返しのつかない事になるかもしれないぞ……!」

  

 今までにない切羽詰まった声で迂闊な行動を取ろうとする俺を啓太郎は静止させる。

 感情のまま動くのを止めた俺は、小さく舌打ちをすると、自分の迂闊な行動を心の底から呪った。


「……先ずは情報を得よう。仮にその石像が()()()()()()()()だったら、この施設の奥に元凶がいる筈だ」


 そう言って、啓太郎は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべると、地下に続く階段を降り始める。

 啓太郎の言う通り、俺は血に塗れた石像──始祖ガイアの力を得た『美桜』によって石化されたかもしれない人──に背を向けると、階段を降り始めた。

 降って、降って、降り続けて。

 啓太郎と共に一番下の階に辿り着いた俺は、ポケットからミニライトを取り出すと、周囲を照らし上げる。

 半壊した血塗れの石像達が俺達を出迎えた。

 鉄の臭いが俺と啓太郎の鼻腔を貫く。

 階段前にいた石像と違い、目の前にいる石像達はローブのようなものを羽織っていた。


「…………やはり、この石像達は金郷教の信徒である可能性が高いな」


 そう言って、啓太郎はスマホのライトで欠損部分から血を流す石像を照らし上げる。

 

「……行こう、啓太郎。本当にその石像が金郷教信者だったら、多分、この奥にこの世界のバイトリーダーが……『美桜』がいる筈だ」


 無言で頷く啓太郎を目視した後、俺達は地下室の奥の奥に移動する。

 すると、奥の方から呻き声のようなものが聞こえてきた。

 幼さを感じさせる呻き声が、俺達に不快感を与える。

 奇襲を警戒しながら、俺達は奥の奥に向かう。

 俺達の前に扉が立ちはだかった。

 躊躇う事なく、俺は扉を蹴破る。

 部屋はの中は真っ暗だった。

 刺激臭が鼻腔を荒らす。

 俺と啓太郎はライトの光で地下室を照らし上げた。


「っ……!」


 地下室の光景を見た瞬間、俺も啓太郎も言葉を失ってしまった。


「な、……なんだ、これは……」


 地下室は地獄みたいな所だった。

 地下室は人の形を失った子ども達が占拠していた。

 膨張した肉塊に着いた子どものものと思わしき頭頂部を見て、俺と岩塊のジェルは声なき悲鳴を上げる。酷いのはそれだけじゃなかった。

 ゲル状と化した少女。

 蜥蜴のような肉塊の背中から生え出る少年少女の顔面。

 肉の球のような形になった少年。

 虫みたいな形をした幼女。

 地下室は地獄みたいな所だった。

 呼吸音が僅かであるが聞こえて来る。

 恐らくこの地下室にいる数人は生きているんだろう。

 残酷な光景を前にして、俺の頭の中は真っ白になってしまう。

 自らの糞尿に塗れた状態で汚い床に寝転ぶ彼等の姿は見ていて、気持ち良いものじゃなかった。


「……うぇ」


 目の前の惨状を見て、啓太郎は口から何かを吐き出す。

 すると、部屋の奥の方から物音が聞こえてきた。

 反射的に音源の方に視線を向ける。

 暗くて何も分からなかった。

 音源の方をライトで照らし上げる。

 錆びついた扉が俺達の前に立ちはだかった。

 周囲に転がる人間だったものから目を逸らしながら、俺は錆びついた扉の方に向かう。

 俺と啓太郎以外の呼吸音が部屋中に響き渡った。

 扉の前に辿り着く。

 扉は施錠されていた。

 押しても引いてもびくともしなかったので、扉を蹴破る。

 案の定、中は真っ暗だった。

 ライトの灯りで部屋の中を照らし上げる。

 部屋の中は紙と本で埋め尽くされていた。

 壁や天井に描かれた魔法陣と床に落ちている資料から察するに、恐らくこの部屋は魔法使い専用の研究室なんだろう。


(……脳筋女騎士を連れて来るべきだったな)


 魔法に関する知識がない事を悔やみながら、俺はゆっくり周囲を見渡す。

 再び物音が聞こえて来た。

 瞬時にそちらの方に目を向ける。

 本棚から脱出しようとする本の勇ましい姿が俺の視界に映り込んだ。

 床に落ちた『重要』と書かれた書類が目に入る。

 俺はそれを拾うと、資料に記載されている情報に目を通した。

「『神堕し』……」

 英語で書かれた書類に目を通す。

 資料には神堕し── 神器と呼ばれる人間に神を憑依させる事を目的にした大規模魔術儀式──をやるための方法が簡略的に記載されていた。

 他の資料に目を通す。

 その資料には神器を造ろうとして沢山失敗した事が記載されていた。

 資料に添付されている神器の失敗作──異形と化した子ども達の写真を見る。

 それらの殆どは先程俺が見た彼等── ゲル状と化した少女。蜥蜴のような肉塊の背中から生え出る少年少女の顔面。肉の球のような形になった少年。虫みたいな形をした幼女──と酷似していた。


「…………あの子達が人の形を失ったのは、神器とやらの実験の所為なのか」


 反吐が出そうだ。

 くしゃくしゃに丸めた資料を投げ捨てた後、新たな資料を手に取る。

 資料の表紙には大きな赤丸が描かれていた。

 中を見る。

 そこには金髪金眼の少女の顔写真──この世界のバイトリーダーの写真が添付されていた。

 資料を一読する。

 資料にはクオン・ミオが神器としての適性が高い事と彼女の身体を始祖に改造するための設計図が記載されていた。


「……司、何か分かったか?」


 顔を青褪めた啓太郎が研究室らしき部屋の中に入室する。

 すると、少女の声が俺の鼓膜を軽く揺らした。


「……っ⁉︎」


 第三者の存在により、俺と啓太郎は身構えると、慌てて音源の方に身体を傾けた。

 何の変哲もないドアが俺達を睨みつける。

 ドアは言った。

 この奥に人がいるぞ、と。


「俺が先陣を切る。啓太郎はここで待機しといてくれ」


 啓太郎に待機を命じ、俺はドアを蹴破る。

 案の定と言うべきか、扉の向こう側の部屋は灯り一つ点いていなかった。

 それでも部屋の中心に居座る『何か』の存在感を感じ取る。

 手に持っていたライトで部屋の中心を照らす。

 そこには俺と啓太郎が予想していなかった人物が居座っていた。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、いいね・感想を送ってくださった方、そして、新しくいいねを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 今回のお話はあまり新情報がない+内容が暗めである事を考慮して、次回更新日を9月16日金曜日から9月12日月曜日22時頃に変更させて頂きます。

 これからも完結目指して更新していきますので、お付き合いよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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