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「笑えばいいと思うぞ」の巻

「いい機会だ、正直に話しておこう」


 金郷教本部とやらがある八熊に向かって歩きながら、俺は珍しくシリアスな雰囲気を漂わせる啓太郎に視線を向ける。

 彼は眉間に皺を寄せると、重苦しい口調で俺に衝撃的な事実を告げた。


「君も薄々気づいていると思うが、僕は女子高生が大好きだ。家には女子高生モノのAVが沢山置いてある」


「なにシリアス口調で性癖暴露してんだ!」


「あと本物の女子高生でビクン♡と来た事はない。むしろ成人女性が制服を着ているシチュエーションにビクン♡と来る」


「だったら、それは女子高生好きじゃねぇよ!お前が好きなのはコスプレものだよ!」


「あ、ちなみに僕の弟分が君の恩師である光洸太の所為で自殺に追い込まれた。僕は今でも光洸太を恨んでいる」


「さらっと重い発言するなっ!どう反応したら良いのか分からなくなるだろ!」


「あと、僕はエリと同棲している」


「エリって誰だよ!?」


「君が鎌娘と呼んでいる女の子の愛称だ。ちなみに朝ご飯と夜ご飯は彼女に作って貰っている」


「はあ!?鎌娘と同棲!?何で!?どういう事!?」


「ほら、山口に行った時、僕とエリは君達と逸れただろ?なんだかんだあって、僕は彼女の人生を背負う事を選択したんだ」


「ちょっと待て!人生を背負うってなに!?お前ら、そういう関係なの!?」


「あと僕はナース服も好きだ」


「今はお前の性癖について聞いてねぇんだよっ!」


「かつて僕には弟分がいてな。近所に住んでいた年下の子どもを弟のように可愛がっていた」


「話が重い方に飛んだ!」


「僕が中学に入ると同時に疎遠になったが、それでも僕は彼を弟のように思っていた。しかし、今から十数年前。僕が実の弟のように可愛がった弟分は自殺てしまった」


「おい、ちょっと止まれ。こっちはお前の所為で感情ジェットコースター状態なんだよ。話題の高低差激し過ぎて、耳がキーンってなっているんだよ」


「虐めの主犯格によると、自殺した彼の担任──光洸太がイジメのきっかけを作ったらしい。いや、彼はきっかけを作っただけではなく、実際にイジメに加担していたみたいだ。だが、虐めの主犯格の少年達も虐めのきっかけを作った担任も証拠不足により罪を問われる事はなく。結果、僕の弟分を死に追いやったヤツらは、今も裁かれる事なく、のうのうと生きている」


「弟分死んだ話を性癖や同棲云々とごちゃ混ぜに語るなっ!どういう気持ちで聞けばいいのか分からなくなるだろ!」


「その時、抱いた悪感情を僕は今でも覚えている。弟分に何もしてやる事ができなかった罪悪感。事件の犯人を追い詰める事ができなかった無力感。それらは今も僕の中に残り続けている」


 今日の晩飯を語るような軽い口調で啓太郎は淡々と語る。

 彼がどんな感情を抱いているのか分からない所為で、俺は狼狽える事しかできなかった。


「僕がお巡りさんになったのも、月に1度墓参りに行くのも、全部、十数年前に抱いた後悔を少しでも晴らすためだ。弟分を助ける事ができなかった後悔は今でも僕の中に残り続けている」


「…………そうか」


「あと、エリは最低子ども5人欲しいって言っていた」


「だから、唐突に話題を変えるの止めろ!俺はどんな気持ちでお前の話を聞けばいい訳!?」


「笑えばいいと思うぞ」


「だったら、話を1つに絞るつかつライトなものにしてくれねぇかな!?人が死んだ話をヘラヘラ聞く程、俺は人でなしじゃねぇよ!」


「まあ、人でなしは僕の弟分を自殺に追い込んだ光洸太の方だけどな。ハッハッハッ」


「重過ぎて笑えねえよ!」


「という訳だ。これで分かっただろ?僕が光洸太を敵視している理由が」


 明日の天気を語るような気軽さで啓太郎は眉間に皺を寄せる。

 ……彼がどういう感情を抱いているのか、全然理解できなかった。

 というか、こっちはお前の所為で感情めちゃくちゃにされているんだけど。

 何お前も被害者面してんだよ。

 気まずいのは俺の方だわ。


「まあ、前置きはさておき」


「置くな。前置きこそが本題……」


「司、君はこれからどうするつもりだ?」


「あん?んなの金郷……」


「違う、その先の話だ」


 一瞬、ほんの一瞬だけ、啓太郎は俺ではなく『誰か』──多分、亡くなった弟分──に視線を向ける。

 その後、俺の目を真っ直ぐ見つめると、こんな質問を投げかけた。


「──君はどんな大人になるつもりだ?」


◇◇◇◇


 金郷教本部に辿り着いた。

 パッと見、金郷教本部は唯のビルにしか見えなかった。


鎌娘(エリ)曰く、金郷教信者達はこのビルの地下で信仰を行なっていたそうだ」


「大体承知。啓太郎、なるべく俺の背後にいてくれ。いざって時に守れなくなるから」


 そう言って、俺は金郷教本部の中に入る。

 深夜であるにも関わらず、金郷教本部の玄関は鍵がかかっていなかった。

 一歩、足を踏み入れる。

 その瞬間、鉄の臭いが俺達の鼻腔を擽った。


「啓太郎……!」


「ああ、恐らく地下からだ」


 一瞬で臭いの正体を看破した俺と啓太郎は臭いの源に向かって駆け出す。

 金郷教本部は人の気配を一切感じなかった。

 走って、走って、走り続けて。

 俺と啓太郎は地下に繋がる階段を見つける。 

 それと同時に階段の近くに転がっている『モノ』に視線を奪われる。

 それは血に塗れた『石像』だった。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、いいね・感想を送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方・いいねを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 先週はお休みを貰って申し訳ありません。

 今月も公募小説に集中するため、お休みを貰うかもしれませんが、必ず完結させるので、お付き合いよろしくお願い致します。

 今のところ来週(9月9日)と再来週(9月16日)は更新する予定です。

 再々来週以降(9月23日と9月30日)は公募小説の進み具合でお休みを貰うかもしれないですが、お休みを貰う際は最新話の後書き・Twitter(宣伝垢:@Yomogi89892・創作垢:@norito8989)で告知させて頂きます。

 また、次の更新は9月9日金曜日22時頃に予定しております。

 残り僅かになりましたが、これからも『真・金郷教騒動編』の完結目指して投稿し続けるので、お付き合いよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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