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ビデオテープの巻


side:赤光の魔導士。


 異空間。

 世界と世界の間にある狭間にある世界。

 固形化した極光に彩られた異空間。

 赤光の魔導士とカナリア──司が酒乱天使と呼んでいる少女──は、始祖ガイアの力を手にした少女──『美桜』の周囲に上がる爆煙と爆炎を見て、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


「……まあ、予想できてたけど、これはこれで堪えるわね」


 爆炎の中から出てきた黒い球体を見て、カナリアは顔を歪ませる。

 すると、黒い球体は身体の中に収めていた『美桜』を吐き出すと、瞬く間に黒い盾に変わった。


「──イージス・キルクルス・ラクテウス」


 白銀の髪を靡かせながら、『美桜』は黒い盾──『自らの心器(アニマ)』の真名を口にする。


「始祖の力だけじゃなく、心器(アニマ)も使えるのか……かなり厄介だな」


 他人事のように呟きながら、赤光の魔導士は溜息を吐き出す。


「恐らくあの黒い盾は因果逆転を引き起こす心器(アニマ)ね。『攻撃を防いだ』という結果を作ってから『盾を出す』という原因を作る。つまり、()()()()()()()()()()()()()んじゃなくて、()()()()()()()()()()()()()と思うわ」


「なるほど。心器(アニマ)を発動したと同時に『攻撃を防いだという結果』が成立しているのか。どおりで俺の攻撃が通用しない訳だ」


「多分、あの黒い盾は連発できるものじゃないと思うけど、今の私達の手札じゃ、あの盾を突破するのは不可能ね……よし、逃げるわよ」


「だな」


 三十六計逃げるに如かず。

 カナリアと赤光の魔導士は確実に生き残るため、後々逆転の一手を勝ち取るため、『美桜』に背を向けると、この場から逃げ出そうとする。


「逃がさないよ」


 自らに背を向けたカナリアと赤光の魔導士を見つめながら、『美桜』は右掌を前に突き出す。

 その瞬間、『美桜』の背後に巨大な硝子の槍が突き刺さった。


「あ、やっぱ生きてたんだ」


 身体に纏った『絶対性(アブソリュート)』により、背中に突き刺さった巨大な槍を無効化しながら、『美桜』は背後に視線を向ける。

 しかし、『美桜』に攻撃を仕掛けたであろう『ガラスの皇女』は何処にも見当たらなかった。

 赤光の魔導士とカナリアはその隙に異空間から脱出してしまう。

 一瞬の隙を突かれた事で、赤光の魔導士とカナリアを逃してしまったアイは、舌打ち──する事なく、無表情で溜息を口にする。


「さて。邪魔者もある程度一掃したし、元の世界に戻ろうかな」


 まるでこうなる事を予期していたかのような言葉を残すと、『美桜』は元の世界──神宮司達が漂着した平行世界──に戻ってしまった。






─────絶対悪:『機械仕掛けの神』顕現─────







◇神宮司side


「んじゃあ、脳き……じゃなかった、アラン。美鈴達をよろしく頼む」


 夜21字過ぎ。

 喜多駅近くにあるビジネスホテルに背を向けながら、俺は出入り口付近で俺の背を見つめるアラン──今は全長15センチくらいの犬のキーホルダーみたいな姿になっている──に声を掛ける。


「金郷教って所に殴り込みに行くのか?」


「ああ。俺の予想が当たっているにしても当たっていないにしても、とりあえず、金郷教という組織を潰さないと事態は進展しないと思う」


 財布の中に運賃が入っている事を確認しながら、俺はアランの疑問に答える。

 

「俺が戻って来るまで、美鈴達をビジネスホテルに留めておいてくれ。金郷教本部がどんな所か分からないけど、多分、夜明け前までには帰って来るから」


「お前の不在について聞かれた場合、彼等になんて答えればいい?」


「あー、とりあえずエロ本買いに行った……じゃあ、美鈴の教育に悪いから、何か適当な理由をでっちあげてくれ」


「了解した」


 脳筋女騎士は肯定の言葉を吐き出すと、俺の瞳をじっと見つめる。

 その目は俺の価値を見定めているように見えた。


「今回の件、私は口を挟まない。お前のやりたいようにやれ。お前のツレは任せろ。お前がここに戻って来るまでの間、私があいつらを守ってやる」


 ビジネスホテルの一室で眠っているであろう美鈴・教主様・啓太郎に意識を向けながら、アランは俺の顔を仰ぐ。

 何故か知らないけど、彼女は俺に信頼していた。


「大体承知。んじゃあ、細かい事は任せた」


 そう言って、俺は脳筋女騎士に背を向けると、バス停に向かって走り始めた。

 人気のない裏路地を小走りで駆け抜ける。 

 すると、懐かしいデザインをした自動販売機の裏から見覚えのある青年──松島啓太郎が立ちはだかった。


「……啓太郎」


 『何でお前がここに?』という疑問は啓太郎の声に遮られる。

 

「司、僕を連れて行け」


 啓太郎は明後日の方を見つめると、俺に一方的な要求を突きつける。


「いや、お前を連れて行ったら危険……」


「金郷教の実態について知りたい。もし僕の要求を呑んでくれたら、これを君に差し出そう」


 懐から何かを取り出す。

 それはビデオテープと呼ばれる骨董品だった。


「それは、……?」


 啓太郎は俺がビデオテープに興味を抱くや否や、ニヤリと笑う。


「さっきこの辺りにあるエロビデオ屋で買ったAVだ。このビデオは伝説のAV女優『キャサリン・モロンロー』のデビュー作でな。マニアに売れば、高く売れるぞ」


 AV・伝説のAV女優という単語で『啓太郎を巻き込みたくないなー』という思考は跡形もなく消え去ってしまう。


「しかも、このAVには伝説のおまけ──キャサリンモロンローを模した等身大ビニール人形もついていてな。僕の知り合いによると、ビニール人形についているオナ……」


「よし、ついて来い啓太郎!足引っ張んじゃねぇぞ!」


 啓太郎の手にあるAVビデオと彼の懐から出てきた萎んだビニール人形を奪い取ると、俺はルンルン気分でスキップし始めた。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイント・感想・いいねを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方といいねを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 そして、この場を借りて、未完成のものを掲載した事に対して謝罪の言葉を申し上げます。

 本当に申し訳ありません。

 8月19日23時20分現在、完成したものを掲載させて頂きました。

 いつも更新直後に読んでくださっている方、未完成のものをお見せして申し訳ありません。

 この場を借りて深く謝罪申し上げます。

 また、今月締め切りの公募用小説に注力するため、来週の更新はお休みさせて貰います。

 次の更新は来月9月2日金曜日22時頃です。

 9月も公募小説の締め切りに追われると思うので、更新頻度減るかもしれませんが、ちゃんと完結させますのでお付き合いよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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