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「缶蹴りしないか?」の巻

 翼の生えた子ども達が目にも止まらぬ速さで中空を駆け抜ける。

 俺はそれを紙一重で避けると、隣で攻撃を凌ぐジングウ──平行世界の俺──に声を掛ける。


「おい、ジングウ! この子達を任せても良いかっ!?」


「──っ!ああ、さっさとあの女を叩いて来い!」


 俺の意図を瞬時に察知したジングウは、次々に迫り来る子ども達を引き受ける。

 俺は翼の生えた子ども達の突進を躱しながら、地面に寝転んでいる前教主── 玖陽土(くぴど)華亞真(かあま)って変な名前のヤツを攻撃しようとする。


(多分、あの女は翼を生やした子ども達を従える『何か』を持っている……!それさえ手にすれば、子ども達に攻撃しなくて済む筈だ……!)


 俺達に悪意を向けていない事、前教主に恐怖心に似た何かを向けている事。

 それらの情報から、『前教主が彼等を従える何かを持っている』事を予想した俺は、気絶から立ち直ったばかりの前教主に殴りかかる。

 彼女は俺の到来を知るや否や、翼を生やした子ども達に指示を飛ばした。


「何をしているのっ!? さっさと私を守りなさい!」


 前教主の命令を聞くや否や、翼を生やした子ども達はジングウから俺に狙いを変える。

 彼等は剣を象ったエネルギーの塊を放出すると、それを俺目掛けて射出した。


「ちっ……!」


 右の籠手の力で剣を象ったエネルギーを引き寄せる。

 彼等の掌から射出された剣は、俺の右の籠手に直撃すると、勢い良く爆ぜてしまった。

 爆風により俺は前教主と離れた所に吹き飛ばされてしまう。

 背に翼を生やした子ども達は俺に追撃する事なく、前教主の下に飛び立つと、彼女の周りを取り囲んだ。


「よくも私に傷を……!この屈辱、倍にして返してあげるわ……!」


 そう言って、前教主は巨大な光の矢を生み出すと、それを俺目掛けて射出する。

 近くに啓太郎達がいる事を知った俺は、迫り来る光の矢を右の籠手越しに受け止めると、ありったけの白雷を流し込む事で破壊した。


「チッ……!私の最大火力を……!」


 自分の切札を打ち破られた前教主は、悔しそうな表情を浮かべる。

 そんな彼女を弓矢を構えたジングウが狙っていた。


「──チェックメイトだ」


 そう言って、ジングウは白雷を纏った矢を射出する。

 ジングウの攻撃に気づいた子ども達は、光の盾を召喚すると、押し寄せて来る光の矢を防ごうとした。

 しかし、ジングウが放った光の矢を防ぐ事ができず、子ども達が召喚した光の盾は呆気なく貫かれてしまう。

 そして、盾の影にいた前教主の腹部に突き刺さった。


「ああっ……!制御装置が……!」


 前教主は衣服の下からベルトのようなものを取り出す。

 ベルトについていた宝石が、ジングウの放った矢によって半分程砕けてしまった。


「これじゃガイア神も天使に改造した子ども達も意のままに動かす事が……」


 前教主が戸惑っている隙に俺とジングウは、彼女を叩くべく、地面を蹴り上げる。

 しかし、俺らのアクションは突如空間に空いた亀裂によって遮られてしまった。


「あんぎゃあああああ!!」


 巨大なガラスの手に掴まれた前教主は、間抜けな悲鳴を上げると、空間に空いた亀裂の中に連れ込まれる。 

 それを目撃した翼を生やした子ども達は、前教主を助ける──事なく、ぼんやり立ち尽くす。

 彼等の瞳には前教主の殺意と悪意が映し出されていた。

 

「おい、ジングウっ!何か頭とか性根とか悪そうな女が穴の中に連れ込まれたぞ!どうする!?追うか……!?追う!?よし、追おう!」


「此処で待ってろ……!俺が穴の中を見て来る……!」


 それだけを告げると、ジングウも空間に空いた穴の中に飛び込んでしまう。

 残されたのは俺と啓太郎と美鈴と教主様と脳筋女騎士、そして、翼を生やした子ども達のみ。

 先程まで啓太郎の近くにいた酒乱天使も何処かに消えていた。


「え、……えーと、」

 

 閉じ始める穴から目を逸らしながら、俺は翼を生やした子ども達と向かい合う。

 もし彼等──天使とやらに改造されたっぽい子ども達がいなかったら、俺も穴の中に飛び込んでいただろう。

 しかし、彼等が巨大な力を持っている以上、野放しになんてできない。

 もし彼等を放置したら、啓太郎達だけでなく、他の人にも危害が及ぶかもしれない。

 そう思った俺は近くにいる子ども──何処となく委員長と鎌娘に似ている女の子の方に視線を向ける。

 彼女は呆然とした様子で立ち尽くしていた。


「……こほん」


 軽く咳払いする事で俺は背に翼を生やした子ども達と啓太郎達の注意を惹きつける。

 狙い通り、彼等の注意を惹きつけると、俺はこんな提案を口にした。


「……とりあえず、缶蹴りしないか?」


 俺の問いに答える事なく、子ども達が襲いかかってきた。



◇ジングウside

 

 世界と世界の間にある(はざま)の世界。

 固形化した極光(オーロラ)の上に着地したジングウ・ツカサは血に濡れた口元を拭うガラスの皇女──美鈴をそのまま大きくしたような美女──を睨みつける。


「──食べたのか、彼女を」


「ええ、あっちの世界で好き勝手動くためにね」


「なるほど。他の世界の人間を捕食する事で、その世界のティアナ──集合無意識を欺こうとしているのか」


「ええ、そういう事よ。貴方、意外と賢いのね」


 ガラスの皇女は指を鳴らすと、褐色の青年を呼び出す。


「ソウスケ、ヤツを殺しなさい。これから先の私の計画にヤツは邪魔過ぎるわ」


「君の計画とやらは、始祖ガイアの力を奪い取る事なのか?」


「ええ、そうよ」

  

 ガラスの皇女は自らの計画をジングウに教える。


「貴方の事は……いや、貴方達の事は十分分析できているわ。ジングウツカサ、貴方は全ての魔法使い・魔術師・魔導士相手なら、例外なく相性有利に立つ事ができる。貴方の全ての魔を否定する白雷は、魔法使い達にとって最恐最悪の代物よ。だから、……」


 褐色の青年は『魔法も魔力も使う事なく』、ジングウとの距離を一瞬で詰める。

 そして、『魔法も魔力を使う事なく』、拳に炎を灯すと、ジングウに殴りかかった。


「私は拳法で魔法を再現できるソウスケをぶつける。貴方にとっての天敵を打つける事で、私は貴方という存在を排除する」


 褐色の青年の猛攻により、ジングウは強制的に後退させられる。  

 

「グッバイ、ジングウツカサ。もし次に貴方と会う時が来れば、……その時は私は『第14始祖』になっているかもしれないわね」


 そう言って、ガラスの皇女は神宮司と始祖ガイアの力を手にした『美桜』の下に向かおうとする。

 

 が、突如来週した白銀の神の美少女──『美桜』の登場によって、そのアクションは遮られてしまった。


「……え?」


 唐突に起きた異常事態を理解する事ができず、ガラスの皇女は素っ頓狂な声を口にする。

 そんなガラスの皇女に構う事なく、『美桜』は腕を振ると、ガラスの皇女の首を斬り落とした。

 いつも読んでくださった方、ここまで読んでくださった方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、いいね・感想を送ってくださった方、本当にありがとうございます。

 先週は告知通りに更新できなくて申し訳ありません。

 夏風邪(PCR検査受けて陰性だったので多分ただの風邪だと思います)を引いて動けない状態になっていました。

 本当に申し訳ありません。

 今後このような事が起きないように気をつけますが、もし万が一体調を崩したり、急用によって更新できなくなった場合は、Twitterの宣伝垢(@Yomogi89892)或いは雑談垢(@norito8989)で告知致しますので、よろしくお願い致します。

 次の更新は7月22日金曜日22時頃に更新予定です。

 もう暫く続きますが、ちゃんと綺麗に完結させるので、最後までお付き合いよろしくお願い致します。


 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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