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修行の巻


『車を貸してもいいが、今は村から出られないぞ』


 先生曰く、先程の地震により土砂災害が起きたらしい。

 その所為で、村と駅を繋ぐトンネルが崩れ落ちたらしく、車で村の外に出られない状況に陥っているらしい。


『恐らくトンネルの復旧は、数日かかるだろう。それに加えて、現在、交通機関は麻痺しているらしい。仮に徒歩で駅に向かって辿り着いたとしても、新幹線は動いていないかもしれない』


 どうやら俺が思っているよりも今すぐ村から出るのは難しいらしい。

 何か良い方法がないか、模索していると、酒乱天使──カナリアは俺にある提案をしてきた。


 ──修行しよう、と。


「だから、何であんたはおっぱいでかい女の子の彫像しか造れないのよっ!」


 オオカミのキーホルダーになった酒乱天使が怒鳴り声を上げる。


「仕方ねぇだろ! 俺の夢は異世界に転生して爆乳ハーレムを築く事だし!」


 反論の声しながら、俺は爆乳の女性の彫像と化した右の籠手を指差す。

 

「それがあんたのガチの願いだったら、とっくの昔にあんたの心器(アニマ)は完成しているっての!完成していないって事は、それはあんたの真の願望じゃない!」


「だったら、この爆乳の像は何なんだよ!?」


「あんたの性欲から生まれたものよ!」


 俺と酒乱天使の声が小学校の校庭の中を駆け巡る。

 そんな俺と酒乱天使を啓太郎・脳筋女騎士アラン・金郷教元教主フィルは校庭にあるブランコに乗りながら、見物していた。

 美鈴の方を見る。

 彼女は昨日の疲れがまだ取れていないのか、日陰で昼寝をしていた。

 呑気な奴め。


「というか、修行よりもやらないといけない事があるだろ!早く始祖ガイアの下に向かわないと、色々ヤバいんだろ!?」


 足下で怒鳴り声を上げる酒乱天使に抗議する。

 彼女はちっこい両手で天を突くと、身体全体を使って、反論の言葉を口にした。


「今のあんたが始祖ガイアに立ち向かった所で瞬殺されるのがオチよ!あれは私達が苦戦した純粋悪を瞬殺できる相手なのよ!?最低でも心器(アニマ)を使いこなさいと勝負にすらならないって!」


「だから、喧嘩すんのは始祖じゃなくて、この世界のバイトリーダーって言っているだろ!?」


「だから違うって!」


「違わない!」


「お前ら、いい加減にしろ」


 犬みたいなキーホルダーになった脳筋女騎士が、教主様の肩に乗った状態で此方に近づいて来る。


「時間がないんだ。くだらない言い争いで時間を無駄にするな」


「「だって、こいつが!」」

 

 脳筋女騎士が殺すぞと目で訴えたので、俺と酒乱天使は口にチャックをする。


「にしても、お前、本当おっぱいの事しか脳がないのか」


 呆れた様子で溜息を吐く教主様に苛立ちを覚える。


「はあ?健全な男子高校生だったら、おっぱいの1つや2つ考えるだろ?」


「考えない。いいか?性欲に振り回されるのはバカがやる事だ。人間である以上、常に理性的に振る舞うべきだとオレは思……」


「あっ!おっぱいみたいな雲発見!」


 明後日の方を指差す。

 教主様は俺が指差した方に視線を向けた。


「……むっつりスケベ」


「いや、違う。お前が指差したから、反射的に見ただけだ。オレはスケベじゃない」


 身につけていた右の籠手を乳房の形に変形させる。

 教主様はそれを食いつくかのような目で見つめていた。


「「ムッツリ」」


「だから、オレはムッツリじゃない!」


 教主様が年頃の男の子と分かったので閑話休題。

 顳顬を押さえた酒乱天使が強引に話を元に戻す。


「ほら、さっさと自分の真の願望を思い出す!じゃないと、いつまで経っても強くならないわよ!」


「てか、強くなるんだったら、身体を鍛えたり、必殺技を身につけたりした方が良いんじゃ、……」


「あんたに足りないのは自己理解だけよ。戦闘経験も精神力も他の開拓者(アウトサイダー)並にあるし。あとは心器(アニマ)さえ完全に使えるようになれば、始祖にだって勝てる筈」


「いや、これが使えるようになった所で化け猫を瞬殺できる相手に勝つ事は、……」


「できるわよ。だって、貴方は『ティアナ』に選ばれているから」


 『ティアナ』という単語を聞いて、俺と教主様は首を傾げる。

 どうやら教主様も知らないらしい。


「と・に・か・く!あんたの心器(アニマ)をトンネルが復旧させるまでの間に完成させるから!分かったら、とっととガチの願いを思い浮かべる!じゃないと、何も始まらないわよ!」


「大体承知」


 願いを思い浮かべる。

 右の籠手は猫耳爆乳美女の彫像に変わり果てた。


「いい加減にしないと、あんたのタマキンぶっ潰すわよ!」


「やり方を変えた方が良いんじゃないか?」


 俺達の方に歩み寄りながら、啓太郎は提案を投げかける。


「司の本当の願いを自覚させるんだろ?だったら、ここで何かするよりも思い出に浸った方が良い。幸い、ここは司の故郷だ。歩いていたら、何かきっかけを掴めるかもしれない」


 さっきまで先生を睨みつけていたのが嘘だったかのように、啓太郎はケロッとした表情で有意義な提案を俺達に突きつける。


「確かにそうね。平行世界であっても、ここがコイツの故郷である事には変わりないし。ここで時間を無駄にするよりも探索した方が有意義ね」


「……と言われてもな。この村、何もないぞ。多分、俺の真の願望とやらはないんじゃ……」


「1から思い出すんだ。時間はないが、君が思い出に浸るだけの時間はある。話がまとまったら、さっさと移動しよう。善は急げ、だ」

 

 淡々と話を進める啓太郎に違和感を抱く。

 俺はその違和感の正体に気づくも、敢えてそれを口に出さなかった。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 先週は更新できなくて申し訳ありません。

 また、来週も私情により更新を休ませて貰います。

 次の更新は来月4月1日22時頃に予定しております。

 来月は更新頻度を増やせるようにストックを作りますので、これからもお付き合いよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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