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「好き勝手やる事にした」の巻


「司、僕は君を信頼している。だから、君の思うように動くといい。君なら最善に近い方法を選ぶ事ができるだろう」


 啓太郎は全ての決定権を俺に託した。

 なので、遠慮する事なく、好き勝手やる事にした。


「オラァ!クソ親父にクソババア!車貸せや、オラァ!!」


「好き勝手動けとは言ってないぞ!」


 実家の扉を蹴破った俺に激しいツッコミを繰り出す啓太郎。

 それを無視して、俺は両親が寝ているであろう寝室に向かう。


「ちょ、お兄ちゃん何しているの!?ていうか、何を考えているの!?」


「この世界のバイトリーダーをぶん殴って、始祖ガイアをコロコロする。そのために、俺の両親から車を強奪する」


「暴力は良くないぞ!」


「うっせー、教主様。お前だって、俺や美鈴をボコボコにして目的を達成しようとした癖に」


「そうだよ、貴方に発言権はないよ。だから、その臭い口を閉じて」


「ぐっ……!」


 俺と美鈴の口撃により、教主様は顔を曇らせる。


「いいか?暴力は根本的な問題を解決できない。けど、問題を有耶無耶にする事ができる。だから、今回は暴力で有耶無耶にしよう。後の事はこの世界の奴等が何とかしてくれる筈だ」


「清々しい程の他力本願ね」


「おい、啓太郎とやら。こいつを自由にさせたら不味いんじゃないか?火事場に油を注いでいるように見えるが」


 酒乱天使と脳筋女騎士が何か言っているが、敢えて聞かないフリをする。

 今までアウト何ちゃらとか何ちゃらサイダーとかに振り回されていたんだ。

 こっから先は俺のターンだ。

 これ以上、主導権は誰にも握らせないぜ!


「おらぁ!起きろ、クソジジイ!クソババア!早起きは三文の何ちゃらって言葉を知らないんちゃら!」


「朝っぱらからうるせえええええ!!」


 寝室の襖を開けた途端、下着姿の母が俺の顔面に飛び蹴りを浴びせる。

 敵意も悪意も感じなかったので、避ける事ができなかった。

 モロに母の蹴りを受けた俺は仰向けの体勢で倒れる。


「今、何時だと思っていんだ、このバカっ!もう少し寝かせろ!!」


 そう言って、母は俺が開けた襖を力強く閉めた。


「……流石は司の母だな。司と似ている」


「ていうか、何で下着姿で寝ているのよ。今、4月だったよね?」


 啓太郎と酒乱天使が呆れたような目で血に伏せた俺を見つめる。

 

「んじゃ、両親からの承認も得たし、車借りるか」


「いや、得ていないから。お兄ちゃんが蹴られただけだから」

 

 のっそり起き上がる俺に美鈴はコミカルなツッコミを繰り出す。


「実の息子だから分かる。アレは母さんの照れ隠しだ。素直に"はいどうぞ"と言えなかっただけなんだ。だから、無断で車を借りても良いと思う」


「無断って言ってるじゃないか」


 脳筋女騎士は呆れたように俺を睨む。


「というか、司。仮に車を借りれたとして、誰が運転するんだ?僕はこの世界の運転免許証を持っていないぞ」


「啓太郎、運転に必要なのは免許じゃない。技術だ」


「何かメチャクチャな事を言い始めたわよ、こいつ!」


 頭を抱える酒乱天使を無視して、俺は再び襖を開ける。

 襖を開けると、パンツ一丁の父が俺達を出迎えた。


「……司、車は修理に出している。今、手元にないから他を当たってくれ」


「大体承知。んじゃあ、お前ら!次は先生の所に行くぞ!!」


 先生から車と免許証を強奪するため、俺は実家を後にしようとする。


「司、何で車が必要なんだ?どこか行く気か?」


「ああ。ちょっと知り合いに似た奴をぶん殴りに」


「……さっき起きた地震と関係しているのか?」


 妙に勘が鋭い父に思わず戸惑ってしまう。

 何て答えたら良いのだろうか。

 考える時間が無駄だったので、とりあえず質問に答える事にする。


「ああ。どうやら、その知り合いに似た奴が地震を起こしたらしくて。止めないと世界が滅びてしまうらしい」


「いきなりスケールが大きくなっていないか?」


「大丈夫だ、俺が何とかするから」


「未来の息子が逞し過ぎる」


「ちなみに俺は未来から来たんじゃなくて、平行世界から来たらしい」


「なるほど。つまり、司はこの世界の司と限りなく酷似している世界から来た司なんだな」


「お兄ちゃんのお父さん、理解力凄過ぎない?」


「大丈夫だ、美鈴。父さん、理解している風の顔をしているだけで、殆ど理解できていないから」


 父と母の力を借りられそうになかったので、俺は美鈴達を引き連れて、家から出ようとする。


「司」


 玄関で靴を履き替えていると、寝癖をつけた父が俺に封筒を差し出した。


「ん?何だ、この封筒?」


「君達に必要なものだ」


 父に手渡された封筒を開ける。

 そこには万札が何十枚も入っていた。


「なっ……!?金ぇ!?」


「何をするか分からないけど、何をするにしても金は必要だろ?」


 欠伸を浮かべながら、父は後頭部を掻き上げる。


「い、いや、父さん、あんまり理解していないだろうけど、俺は未来から来たんじゃない。他の世界から来た神宮司で、この時代の俺と限りなく似ているそっくりさんみたいなもんだ。言わば、赤の他人と言っても過言じゃな……」


「司は司だろう?」


 つまらない事を言うなと言わんばかりの表情で、父は再び欠伸を浮かべる。


「目の前にいる司が司のそっくりさんだろうが、関係ない。司は司だ。なら、親としてやるべき事は唯一つ。君の選択を尊重する事だ」


 父は俺の目を真っ直ぐ見据える。

 彼の目尻に目ヤリがついていた。

 イマイチ締まらない。

 けど、俺の事を思いやっている事だけは理解できた。


「……俺の選択が間違っていると思わない訳?」


「子どもを信じない親がどこにいる」


 父の尻から間抜けな音が生じる。

 情緒がめちゃくちゃになるから、カッコつけるのかバカやるのかハッキリして欲しい。


「それに、このお金の大半はこの世界の司が今まで貰ったお年玉だ。損をするのは、この世界の司であって、父さんと母さんのお金じゃない。だから、好きに使うといい」


「俺の感動を返せ」


 父の冗談を敢えて真に受けながら、俺は封筒をポケットの中に入れる。


「……気をつけろよ、司。あまり無茶な事をしないでくれ」


「へいへい、大体承知」


 父の忠告を軽く流した後、俺は美鈴達を率いて先生の家に戻る。


「で、今度はどこに行くんだ?」

 

 田園に囲まれた田舎道を歩きながら、教主様は俺に質問を投げかける。


「先生から車を貸して貰う。んで、駅まで行った後、新幹線で移動する」


「というか、そもそもの疑問なんだけど、新幹線動いているの?地震の影響で動いていないかもよ?」


 俺の浅過ぎる結論を美鈴の左肩に乗ったキーホルダーサイズの酒乱天使が否定する。

 

「そもそも奴が何処にいるのか把握できているのか?魔力から察するに、奴等は各地に出没する純粋悪を狩るため、瞬間移動を酷使しているみたいだぞ」


 教主様の右肩に乗ったキーホルダーサイズの脳筋女騎士が現状を知らせる。


「それに関しては問題ない。あいつらの本拠地は分かっている。そこに行けば、この世界のバイトリーダーには会えなくても、何かしらの情報を掴める筈だ」


 教主様の方を見ながら、俺は脳筋女騎士の疑問に答える。

 彼は『金郷教のアジトなら分かっているぜ』みたいなドヤ顔を晒すと、力強く頷いた。


「とにかく、この村から出ないと話にならない。とりあえず、先生の所に行って、ダメだったら他の人に車を……」


 自分の考えを述べながら、先生の家に向かう。

 すると、先生が愛用している車が俺の視界に飛び込んできた。

 ナイスタイミングと思いながら、俺は先生の下に駆け出そうとする。

 その時、俺の背後から殺意と怒気を感じ取った。


「……っ!?」


 反射的に振り返る。

 殺意と怒気は俺に向けられていなかった。

 殺意と怒気の源は啓太郎だった。

 啓太郎はじっと運転席に映る先生の姿を瞳に映し続けた。

 その姿に恐怖を覚える。

 啓太郎と先生の間に何があったのかは分からない。

 けど、彼等を会わせない方が良いだろう。

 

「……お前ら、ここで待ってろ」


 そう思った俺は彼等に静止を呼びかける。


「お兄ちゃん、何するつもりなの?」


「決まっているだろ」


 穴の空いたニット帽を頭から被り、玩具の拳銃を取り出す。

 

「あの車を強奪する。追い剥ぎだぜ、ヤッハー!」


「「「なに厄介事増やそうとしているんだ、このバカ!!」」」


 酒乱天使と脳筋女騎士と教主様に怒鳴られてしまった。

 

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 先週は更新をお休みして申し訳ありません。

 今月来月は公募用の小説に注力するので、もしかしたらまた急遽お休みを貰うかもしれません。

 なるべく週一更新できるように頑張りますので、最後までお付き合いよろしくお願い致します。

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