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4月4日(2)"価値なきものに金塊を"の巻

「恐らく、……お前の言う金郷教信者は、神器に入れるものを探すため、この地に来たと思う」


「神器に入れるもの……?」


 午前3時半過ぎ。

 調子に乗った教主様を殴った後、俺は彼等──酒乱天使カナリアと脳筋女騎士アランと金郷教元教主フィル──と情報を交換した。


「オレが教主になる前の金郷教は神堕しをやるため、神に値するものを探していたんだ」


「神に値するもの……?ガイア神は?お前らはガイア神を降ろそうとしていたんだろ?何でガイア神じゃなくて、神に値するものを探しているんだ?」


「その頃、ガイア神を降ろす方法が確立されていなかったんだ。だから、金郷教はガイア神を呼ぶために、神に値するものを探しに、日本中を駆け回っていたんだ」


「……ん?じゃあ、お前らはガイア神を召喚するため、神に値するものを探していたのか?」


「ああ、そういう事だ」


「なんのために?」


「ガイア神を呼び出し、全ての人を『金の郷土(りそうきょう)』に送り出すためだ」


 ……ガイア神じゃなくて、神に値するものに理想郷送りして貰えば良いんじゃね?

 無粋なツッコミは話の本筋と関係ないので控えつつ、俺は新たに生じた疑問を口にする。


「ん?そういや、バイトリーダーは金郷教を『神を造る事』を目的にした宗教団体って言ってような……」


「それは秘密結社『価値なきものに金塊を』──デウス・X・マキナ側の目的だ。オレが教主になる前の金郷教という組織は『価値なきものに金塊を』の一部でな。秘密結社の一員であった前教主は、金郷教を利用する事で神を造ろうとしていたんだ」


「その秘密結社の一員だった前教主は、何で神を造ろうとしてたんだ?」


「世界を作り変えるためだ」


 また話の規模(スケール)がデカくなった。

 これだから金郷教絡みの話は嫌なんだ。

 無駄にスケールがデカいかつ曖昧な言葉を使い始めるから、話についていけなくなる。

 もっと俺みたいなバカにも分かるよう具体的に話せ。

 理想郷とか世界を作り変えるとかフワフワし過ぎて、よく分からねぇんだよ。


「……デウス・X・マキナ、ねぇ。本当、あの組織はどの世界郡にも存在するわね」

 

 オオカミのキーホルダーみたいな姿になった酒乱天使カナリアは、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。


「知っているのか?」


「違う世界で何回かバトった事があるわ。第14人類始祖……いや、あんたらには人造始祖って言ったらピンと来るか。要はデウス・X・マキナは『万能の生命体を作る事』を史上の目的にしている組織って事」


 犬みたいなキーホルダーになった脳筋女騎士アランは首を縦に振る。

 彼女も苦い顔をしていた。

 恐らく平行(ちがう)世界でバトった事があるんだろう。


「へえー、そうなのか」


 だが、興味がなかったので聞き流す事にした。

 だって、この時代の金郷教とバトる事なさそうだし。


「大体読めてきたわ。つまり、この世界に逃げ込んだ始祖ガイアは、金郷教が用意している神器に逃げ込む事で力を取り戻そうとしているって訳ね」


 ……この先の展開に深く関わりそうなので、金郷教の話をちゃんと聞く事にする。

 

「いいや、その可能性は限りなく低い。金郷教が1回目の神堕しを行ったのは、数年前……いや、ここが過去の世界だと数年後の話だ。まだこの時代では神器は完全していない」


「あら?あんた、この世界が過去の世界だと思っているの?」


 酒乱天使が意味深な一言を呟く。

 その瞬間、突如部屋が縦に揺れ始めた。


「うおっ!?何だ!?」


 突然の地震にびっくりしたのか、啓太郎が飛び起きる。

 酒乱天使の治療が良かったのか、彼の顔色は良さそうに見えた。

 

「なに!?なにがおきているの!?」


 まだ覚醒状態じゃないのか、美鈴は寝ぼけた様子で周囲を忙しく見渡す。

 啓太郎同様、彼女も元気そうだった。

 

「──っ!?この気配、まさか……!?」


「ああ、どっかのバカがやらかしたらしい──!」


 キーホルダーサイズになった酒乱天使と脳筋女騎士が何かを感じ取る。

 何も感じ取れなかったので、教主様の方を見た。

 俺と目が合うと、彼は戸惑った様子で首を横に振る。

 どうやら彼も今の状況を把握できていないらしい。

 ……ああ、お前もこっち側なのか。


「おい!お前!何でオレに憐れみの視線を送る!?バカにしてんのか!?」


 被害妄想に囚われる教主様を敢えて無視する。


「舐めているだろ!?やっぱ、お前、オレの事舐めているだろ!?」


 そりゃあ、お前、めちゃくちゃ喧嘩弱いし。

 小心者かつお調子者な上、頭の出来も俺と同じくらいだから、本当、恐れる要素が何処にもないんだよな。

 悲しい事に。


「その眼を止めろオオオオ!!!心に来るだろうがああああ!!!」


 視線だけで教主様を半泣きにさせてしまう。

 そんな教主様を美鈴はゴミを見るような目で憐んでいた。


「教主様、絶対に美鈴の方を見るなよ。死人が1人増えるから」


 ガラスハートに忠告を告げると同時に揺れが収まる。

 意外と大きかったなと思いながら、俺は酒乱天使の方を見る。

 彼女の目は青褪めていた。


「……テレビを点けて」


 彼女に言われるがまま、テレビを点けた。

 テレビの中に男性の姿が映し出される。

 男性はニュースの原稿を淡々と読み上げていた。

 どうやら北部九州で大きな地震が起きたらしい。

 震源地は東雲市。

 震度は不明。  

 どうやら今回の揺れは地殻内部の急激な変化によるものじゃないらしい。

 ……つまり、どういう事?


「あんたも経験した筈よ、純粋悪"魔猫"との闘いで」


 酒乱天使の指摘により、俺と教主様は地震の原因を把握する。

 

「じゃあ、この地震は……」


「ええ」


 テレビの画面に中継先が映し出される。

 画面にはマイクを持った女の人が映し出されていた。

 画面に映った女の人の背後には、少し高めの山と山並みに大きい黒い"何か"が映し出されている。

 その"黒くて大きい何か"は紐みたいな形をしていた。

 

「こいつが、……地震の原因……」


 俺の呟きを聞いた酒乱天使は首を縦に振る。

 そして、地震の原因の名を口にした。


「ええ、それが『純粋悪"魔蛇"』よ」



 ──純粋悪"魔蛇"大現

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 次の更新は2月11日金曜日20時頃に予定しております。

 同時連載中の爆破令嬢の終わりが見えてきましたので、2月下旬頃から更新頻度を上げようと思っております。

 これからも更新し続けますので、最後までお付き合いよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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