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4月3日(4)封山の言い伝えの巻

「まさか神宮の坊主がこんなにデカくなるとはなぁ!」


「でも、身体が大きくなっても、顔は殆ど変わっていないわね。どう?司ちゃん、お化粧してみる?おばさんに任しときゃ、司ちゃんを美人さんに仕立て上げられるわよ」


「だったら、ウチの娘の服を持ってくるわ!こりゃあ、長身の別嬪さんが生まれるぞ!がーはっはっはっ!!」


「誰が女装なんてするか!ジジババ共!!」


 両親に未来から来た事がバレて数時間経ったある春の日の夜。

 何やかんやあって、俺と美鈴は俺の実家である神宮家で夕飯を食べていた。


「ていうか、俺、男っぽくなっただろうが!低身長だった昔はともかく今は化粧したくらいで女っぽくならねぇから!!」


「諦めろ神宮のせがれ!お前はあの父ちゃんと母ちゃんの血を継いでいるんだ!幾ら背が大きくなった所で男っぽくならねぇ!」


「んだと、コラァ!!」


 巨大ちゃぶ台の上に乗った大量の唐揚げを食べながら、俺は何故か実家(ここ)にいる近所のジジババ十数人に怒声を浴びせる。

 ちなみに俺の実家に押し寄せてきた近所のジジババは俺達が未来から来た事を知っている。

 多分、母が漏らしたんだろう。

 人の口には戸が立てられない。

 というか、ウチの母、口が軽過ぎる。


「んで、司!彼女はできたか!?」


「できる訳ねぇだろ、だって、神宮のせがれだぜ?」


「喧嘩売ってんのか、ジジイ共!」


 彼等は俺が怒っているにも関わらず、俺の顔をいじり続けた。


「ごめんな、司。父ちゃん、女顔で」


「諦めな、司。母ちゃんと同じで、お前は一生童顔を背負って生きてかなきゃならないんだよ」


「いいや!将来、俺は洋画に出てくる俳優みたいな渋いダンディになるから!顎髭とか生やしてダンディ道を貫くから!」


「ところで、神宮の坊主!下の毛は生えたか!?」


「とっくの昔に生えているっての!」


 俺を子ども扱いする近所のジジババ共に怒声を浴びせる。

 が、ジジババ共は聞く耳を持つ事なく、俺を揶揄い続けた。


「大丈夫だ、司。生えていないのも需要あると思うから」


「うっせー!クソ親父!!」


 ズレたフォローをする父に一喝した後、俺は本題を切り出す。


「なあ、ジジババ共。俺の他に未来から来た奴を見かけたか?多分、この村にいる筈なんだけど」


「どんな奴?」


 酒を飲みながら、母は俺に疑問をぶつける。


「1人は見るからに軽薄そうな警官。もう1人はヘタレ臭隠し切れない元教主。で、あとはお酒大好きな少女と脳味噌に筋肉詰まっていそうな女性」


「どれも見た事ないわね」


「ああ、でも、変な奴なら見たぞ」


 お茶をちびちび飲みながら、父は俺に情報を与える。


「今日のお昼頃だったかな。霜月の爺ちゃんが黒いローブを着た怪しい集団を見かけたって言っていたぞ」


「黒いローブを着た怪しい集団……?そいつらはどこに行ったんだ?」


「確か封山(ふうざん)の方って言っていたけど」


「大体承知。んじゃあ、ちょっと見てくるわ」


 母が作った晩飯を平らげた俺は山の方に向かおうとする。


「こんな時間からか?」


「先手を打たないと、後々厄介な事になるからな」


 金郷教騒動で犯した失敗を思い出しながら、俺は汚した食器を台所に持って行こうとする。


「美鈴はどうする?ここに残るか?」


「わ、私も行く!」


 美鈴は取り皿の上にあった唐揚げを平らげると、俺の後を追うように食卓を後にする。


「もう行っちまうのか、神宮のせがれ!」


「行く前に今年の有馬の結果教えてくれ!全財産ブッパするから!」


「競馬に興味ねぇから知らねぇよ!」


 ジジイ共の戯言に反応しながら、俺と美鈴は食器を洗い場に置く。

 すると、村で1番長生きしている超ババアが口を開いた。


「この時間帯に封山(ふうざん)行くのは止めといた方がええ。社に封じられている"鬼"に食われちまうぞ」


「鬼……?」


 超ババアの忠告に美鈴が反応する。


封山(ふうざん)って所に鬼が封印されているの……?」


「ああ、そうだ。村の言い伝えによると、戦国時代の頃にな、神流(かみながれ)っていう神殺しの剣術家があの山に鬼を封じ込めたそうじゃ」


 いつものように超ババアは村の言い伝え──文献等が残っていないので信憑性は皆無──を語り始める。

 幼い頃から何十回も聞いている俺は"またいつものか"と思いながら、欠伸を浮かべた。


「じゃが、鬼の封印は完全じゃなかったらしくてな。時々、鬼は社から出て、山の中を彷徨っているそうじゃ。じゃから、夜は近寄らん方がええ。今夜は大人しく寝なさい」


「大丈夫だ、超ババア。俺、全集中の呼○使えるから。鬼が現れても水の何ちゃらで闘えるから」


「ぜん、しゅうちゅう……?なんじゃ、それは?」


「お兄ちゃん、この時代にその漫画はまだ存在していないと思うよ」


 美鈴のツッコミにより、ここが過去である事を今更ながら思い出す。

 

「まあ、何だ。鬼が出ようが蛇が出ようが関係ねぇよ。俺、神様殺したし」


「母さん。未来の司は厨二病を患っているようだ」


「あー、私の若い頃を思い出すわー拳で関東制覇するって言っていた頃の痛々しい思い出が蘇るわー」


 父と母は俺の神殺し発言にドン引きする。

 いや、本当だから。

 厨二病とかじゃないから。


「数多の神を屠った風の神流(かみながれ)でさえも殺せなかったのが鬼じゃ。神を殺せる程度の実力では"鬼"に勝つ事はできまい」


 超ババアだけが俺の話を信じる。

 俺の話を信じた上で俺に驕るなと忠告する。


「言い伝えが本当なら、アレは純粋な悪じゃ。遍く生命に害を成す存在。人の形をした災厄。全能に程遠い存在が敵う相手ではない」


 純粋な悪。

 その単語がきっかけで、俺は数時間前に遭遇した化け猫の事を思い出してしまった。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマ・評価ポイントを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 皆様のお陰で本作品の総合評価1000pt超えを達成する事ができました。

 この場を借りてお礼を申し上げます。

 ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、本当にありがとうございます。

 これからも皆様が読んで良かったと思えるような作品を書いていきますので、来年もお付き合いよろしくお願い致します。

 次の更新は1月7日金曜日18時頃に予定しております。

 来年も定期的に更新していきますので、よろしくお願い致します。

 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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