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4月31日(24) vs化け猫の巻(後編)

 俺と酒乱天使カナリアは砂鉄の足場から飛び降りる。

 それと同時にカナリアの容貌が、少女──小鳥遊神奈子そっくりな容姿──のものからオオカミのものに変わった。


「私の背中に乗って!早く!」


「……大体承知!」


 羽根の生えたオオカミみたいな姿になった酒乱天使の背中に飛び乗る。

 彼女は俺がしがみついたのを確認すると、超高速で宙を駆け回り始めた。

 

「うおっ!?」


 不思議な力が働いているのか、戦闘機よりも速いスピードで駆け回っているにも関わらず、俺も酒乱天使も向かい風に煽られる事も身体に負荷がかかる事もなかった。


「■■■■■!!!」


 咆哮した化け猫は身に纏っている黒い炎を逆立てる。

 そして、炎を針のような形に加工すると、それを四方八方に射出し始めた。

 炎の針が宙を駆ける酒乱天使の方に迫り来る。

 咄嗟の判断で俺は右の籠手を使おうとした。

 だが、俺の行動は酒乱天使の一喝によって遮られる。


「こんなの、私1人で大丈夫だっての!!」


 有言実行。

 酒乱天使は更に速度を上げると、音速を優に超えてしまう。

 超音速飛行によって生じた衝撃波が、迫り来る無数の針を消し飛ばした。

 光速一歩手前の速さで酒乱天使はノミのように化け猫の体表を駆け始める。

 酒乱天使が化け猫の体表を蹴り上げる度、化け猫の身体に彼女の足が減り込む。

 それが苦痛なのか、化け猫の口から痛みに悶える声が少しだけ漏れ出た。


「──さあ、行くぞ。クライマックスだ」


 教主様が作った砂鉄の足場に乗ったまま、幼女は懐から試験管に似たものを取り出す。

 そして、試験管の栓を外すと、ガラスの筒から小さな光球が出てきた。


「──虚・真夏の夜の夢(エンドレスストーリー)


 試験管から出てきた小さな光球が淡い光を発し始める。

 その光に惹きつけられるように、化け猫は光球の方に視線を向けた。

 一瞬だけ化け猫に隙が生じる。

 それを察知した瞬間、俺を背に乗せた酒乱天使は化け猫の脇腹に向かって駆け始めた。

 ──1秒。

 酒乱天使は瞬く間に化け猫と肉薄する。

 ──2秒。

 化け猫の肺辺りが少しだけ膨らむ。

 ──3秒。

 酒乱天使が化け猫の脇腹の上に足を着けた瞬間、俺は彼女の背から飛び降りた。

 ──4秒。

 化け猫の脇腹を右の籠手越しに触れる。

 奴の中心部にある力の源である青い球体に白雷を流し込もうとする。

 ──5秒。

 奴の体表に浮かび上がった青い線を沿うように白雷を流し込む。

 その瞬間、化け猫は俺の存在を捕捉した。

 それと同時に俺は悟る。

 白雷が奴の中心部にある青い球体に到達するまで時間がかかる事を。

 奴の身に纏う黒い炎を剥がすのに、4秒必要である事を。


「しまっ……!」


 ──6秒。

 幼女が言っていたタイムミリットが過ぎ、奴の力の源である青い球体から膨大なエネルギーが解き放たれる。

 解き放たれたエネルギーは青い線を伝うように全身を駆け巡ると、奴に全方位攻撃するための力を与えた。

 尋常じゃない敵意と殺意が俺だけに向けられる。

 あの化け猫が何をするのか分からない。

 それでも1秒先に訪れる己の死を幻視する。

 一瞬、ほんの一瞬だけ躊躇ってしまう。

 自衛するか、それとも自滅覚悟で攻撃を続行するか。

 

「行け!」


 俺が躊躇いを覚えると同時に教主様の声が聞こえてくる。

 その瞬間、世界は紫の閃光に包まれた。

 閃光により化け猫の目蓋は閉じてしまう。

 ──7秒。

 目が眩んだ化け猫を見て、俺は理解した。

 教主様が奴の目を眩ました事を。

 

「■■■■!!!!」


 だが、教主様が稼げたのは1秒だけだった。

 即座に化け猫は視界を回復させる。 

 そして、俺に攻撃を加えようと再び青い球体からエネルギーが放出される。

 ──8秒。

 化け猫が全方位に攻撃を繰り出す直前、何もない場所から白雷を纏った赤い龍が現れた。

 突如、現れた赤い龍は化け猫の右顳顬を撃ち抜く。

 その赤い龍を見て、何故か俺は平行世界の俺(ジングウ)と赤光の魔導士を思い出した。

 赤い龍が化け猫の右顳顬に突き刺さった瞬間、化け猫は全方位攻撃を中断する。

 そして、全エネルギーを右顳顬を回復させるために使用し始めた。

 ──9秒。

 たった1秒で化け猫は右顳顬を完治させる。

 それとほぼ同じタイミングで俺が流し込んだ白雷が奴の力の源である青い球体に到達した。

 ──10秒。

 化け猫は青い球体からエネルギーを放出する。

 その膨大なエネルギーに混じった白雷が奴の全身を駆け巡ると、奴の体表を覆っていた黒い炎を消し飛ばした。

 ──11秒。

 化け猫の目は大きく見開かれる。

 酒乱天使は役目を終えた俺を再び背に乗せる。

 そして、音速を超える速さで化け猫から大きく距離を取った。

 酒乱天使の背に乗った俺は、落下している脳筋女騎士アランとすれ違う。

 アランが落下しているのを目視した茶髪の幼女は、教主様の首根っこを掴むと、空間に穴を開けた。


「よくやった、後は任せろ」


 ──12秒。

 俺達を褒め称えるアランの声が鼓膜を揺らす。

 酒乱天使は高度5000メートル辺りまで駆け抜けると、そこで静止した。

 俺達の右横にあった空間に穴が空く。

 そこから茶髪の幼女と教主様が現れる。

 彼等から目を逸らした俺は、即座にアランの方に視線を向ける。

 彼女は地面に落下したまま、白金色に輝く剣を構えていた。

 ──13秒。

 彼女の手中にあった白金色に輝く剣から眩い光が放たれる。

 その光は瞬く間に世界を真っ白に染め上げた。

 太陽の如く輝く剣が世界を白金色の閃光で照らし上げる。

 一眼見ただけで、あの光が尋常じゃないエネルギーを保持している事を理解できた。

 彼女の持っている白金色に輝く剣は、俺が持っている右の籠手と同じ類のものだ。

 俺の籠手が防御に特化したものであれば、彼女な剣は攻撃に特化したもの。

 遍く魔を斬り伏せる万能(かみ)殺しの剣。


「統べるは人の祈り。響く輪唱。束ねた燭光は暗海を裂く」

 

 あれは彼女の願望(こころ)を形にしたもの。

 神造兵器と似て非なる概念(アルティメット)武装(ウェポン)


「──平伏せ!!」


 ──14秒。

 アランの持っていた剣が肥大化する。

 瞬く間に巨大化した彼女の剣は、文字通り天を衝く。

 剣の形をした白金の光。

 その大きさは全長100キロメートル級の化け猫でさえ遥かに凌ぐ程に巨大かつ荘厳。

 そんなこの世のものとは思えない程に巨大化した剣をアランは化け猫の脳天に振り下ろす。

 

「──原初に叛し燭光の剣(バルムンク)っ!」


 ──15秒。

 アランは剣を振り下ろした。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 次の更新(或いは次々の更新)で9万PV達成記念短編「4月31日(破)」は完結です。

 来月から10万PV達成記念短編「4月31日(急)」を投稿していきたいと思います。

 恐らく「4月31日(急)」は「4月31日(破)」のように長くならないと思うので、遅くても来年の3月頃には完結すると思います。

 まだまだ続きますが、ちゃんと番外編であるこの話も完結させるので、お付き合いよろしくお願い致します。

 次の更新は11月30日火曜日12時頃に更新予定です。

 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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