4月31日(21)「頭がイカれてんのか」の巻
「よっし!俺達はよく頑張った!今回はダメだったけど、また来年もあるさ!とりあえず、今日は土拾って帰ろう!!うん!!」
「来年もクソもあるか」
脳筋女騎士──アランに突っ込まれながら、俺はガラスの竜と茶髪の幼女改め自称作家そして、アランと円陣を組む。
ちなみに教主様はオシッコ漏らしたまま気絶しているので放置している。
「というか、さっさとアレを倒さないと違う世界に転移すると思うわよ。この世界がX世界点だから、この程度の被害で済んでいるけど、もし滅びていない世界に転移したら……いや、あんたが元いた世界に転移したら、大変な事になるわよ」
「え!?あいつ、異世界転移できんの!?どんだけチートなんだよ!!??」
遠くから聞こえてくる爆音と轟音が大地を激しく揺さぶる。
音源の方から花火でも上がってんのかと思うくらい爆発が起こっていた。
爆煙の中から猛々しい光量が無数の閃光が垣間見える。
煙の中の閃光が瞬く度、爆音が骨と内臓に響き渡った。
「………ここで倒した方が良い事は、よく分かった。けど、アレを倒せる方法があんのか?」
ガラスの竜を見る。
「私じゃ無理ね。さっきの防御で殆ど力を使い果たしたし」
作家を名乗る幼女の方を見る。
「おいおい、俺みたいな文系野郎に何とかできる訳ないだろ。何とかするのはお前の役目だ」
他人事みたいな態度を取る茶髪の幼女に腹が立ったのか、ガラスの竜が突っかかる。
脳筋女騎士改めアランは策があるのか、少し自信ありそうな顔をしていた。
アランを追求しようとした途端、俺が喋るよりも先にガラスの竜が口を開く。
「ていうか、あんたらは何のためにアレを作ったのよ。魔力の流れから察するに、あの女もコントロールできていないみたいだし。私達を倒すためとはいえ、コントロールできない純粋悪を造るのは明らかにローリスクハイリターンでしょ」
「誰がお前らを倒すためと言った。あの純粋悪は始祖ガイアを倒すために造ったものだ」
「……は?」
ガラスの竜の呆れた声が爆音に掻き消される。
「ルルは純粋悪を使って始祖ガイアを討伐しようとしているんだ。頭イカれているだろ?」
そう言って、幼女は微笑を浮かべる。
ガラスの竜は目を点にしたまま、ピクリとも動かなくなった。
「……………始祖ガイアという人類にとっての脅威を討伐するために、災厄の権現である純粋悪を造りだしたの?……え、それ、本末転倒じゃん。仮にあの化け猫が始祖ガイアを倒したとして、誰があの化け猫を倒すって言うのよ」
「その時は新しい純粋悪を造り出すらしい」
「「「頭がイカれてんのか」」」
俺とガラスの竜とアランは同じ事を同じタイミングでツッコむ。
「面白いだろ。だから、俺は奴と組む事にしたんだ」
幼女は得意げに頬を緩めながら、俺達の顔を覗き込む。
その顔は愉悦に塗れていた。
「という訳だ、青少年。俺はあのイカれ野郎がどんな末路を辿るのか、この目で見るため奴に着いていく。故に俺はお前らの味方になるつもりはない。だが、これでも俺は作家だ。物書きである以上、一度交わした約束を違えるつもりはない。だから、俺がやるのは小さい方のジングウへのアドバイスだけだ。それ以上の事をやる気はない」
「ならば、貴様を殺すだけだ」
視線だけで人を殺せそうな目でアランは幼女を睨みつける。
お前、いつも人を殺せそうな目をしてんな。
「らしいぞ、小さい方のジングウ。俺が殺されたら、お前をパワーアップさせる事ができないが、どうする?俺を見殺しにするか?」
俺を抑止力として使うつもりなのか、幼女は年相応とは呼べない嫌らしい笑みを浮かべながら、俺の方をチラ見する。
「……アラン、こいつを殺すのは後にしてくれ」
幼女の掌の上で踊らされているのを自覚しつつ、俺は脳筋女騎士にお願いをする。
「なら、さっさとパワーアップしろ。言っておくが、そんなに待つつもりはないからな」
アランが嫌そうに言葉を紡いだ途端、今まで聞こえていた爆発が鳴り止む。
「どうやら魔力の流れから察するに、あのフクロウと褐色野郎、一時撤退したみたいだな」
「え?今まであの日本刀持っているフクロウと褐色の青年が化け猫と闘っていたのか?」
"え?お前、何そんな当たり前の事を聞いてんの?もしかして魔力の流れを把握できないの?"みたいな目でアランとガラスと幼女が俺の顔を見る。
え?何この空気。
魔法使いじゃない俺が魔力の流れを把握できる訳ねぇだろうが。
「次の標的は恐らく俺達だ。気を引き締めろ、少年少女。紛い物とはいえ、アレは純粋悪。幾ら開拓者と言えど、隙を見せれば一瞬で御陀仏だぞ」
「大体承知。んじゃあ、さっさと俺を何とかし……」
「おい、そこの第14人類始祖の成れの果て。純粋悪の所に行くから、さっさと足場を作れ。そこの脳味噌筋肉で出来てそうな女騎士は奥の手を使う準備をしろ。この中で純粋悪に致命傷を負わせる事ができんのはお前だけだからな。で、いつまで寝てんだ、この小便垂れ小僧。さっさと起きろ」
俺の事を無視して、幼女は彼女達に指示──と言うよりは命令──を飛ばす。
「はぁ!?私、さっきので力を使い果たし……」
「余力がある事は見れば分かる。死にたくなければ、さっさとやれ。じゃないと、始祖としての力を取り戻すよりも先に死を迎えるぞ」
「おい、貴様。誰の脳味噌が筋肉でできていると?」
「お前の事だ、脳味噌筋肉娘。こんな安い挑発でカッカするくらいなら、さっさと用意をしろ。予定通り動いてくれないと、物語はバッドな終わり方してしまうぞ」
彼女達を挑発しながら、幼女は気絶している教主様を叩き起こす。
本当、こいつ愛らしいのは容姿だけで毒しか吐かないな。
どういう育ち方したら、こんな捻くれた子どもになるんだろう。
「というか、お前、純粋悪を倒すつもりはないんだろ?何で純粋悪を倒す前提で話を進めているんだ?」
ふと思った疑問を幼女にぶつける。
「さあ?何でだろうな。当ててみろよ、見事当てる事ができたら、1発やらせてやるぞ童貞」
歳不相応の発言に呆れながら、俺は幼女の申し出を丁重に断る。
「金髪爆乳美女か獣っ娘爆乳美女になってから出直して来い、クソガキ」
「は!だから、童貞なんだよチェリーボーイ。自分の好みを追っていても女を抱く事はできんぞ。童貞卒業の秘訣は"妥協"だ。覚えとけ」
「お前、本当に幾つなんだよ」
起きない教主様に電気あんまを仕掛ける幼女から目を逸らしつつ、俺は化け猫の方を見る。
視線を送った瞬間、奴の瞳と目が合う。
俺達の姿が奴の瞳に映し出された途端、純粋悪"魔猫"はその巨体を動かし始めた。
いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。
次の更新は11月10日水曜日12時頃に予定しております。
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追記:申し訳ありません。次の更新は11月10日水曜日と告知しましたが、今週はお休みを頂きます。次の更新は11月17日水曜日にさせて頂きます。本当に申し訳ありません。




