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4月31日(1)違う世界の巻

「寒っ!!」


 雪の上に着地した途端、俺の身体に冷気が襲いかかった。

 周囲を見渡す。

 桑原神社の境内には白い雪が降り積もっていた。

 

「な、何で雪が……」


 寒さに耐え切れなかったので、とりあえず俺は暖を取るため、桑原神社の本殿の中に入る。

 本殿の中には御神体である鏡の他に厚手の着物や保存食、ラジオなどが置いてあった。


「なんか、そこはかとなく生活臭が漂うな。ホームレスでも住んでんのか?」


 未だ気絶している美鈴を床に置いた俺は、彼女の身体に厚手の着物をかける。


「さて、これからどうするべきか」


 厚手の着物を羽織りながら、俺は状況を整理し始める。

 あの正体不明のフクロウの話が正しければ、ここは平行世界(しらないせかい)だ。

 ここがどういう世界か知る必要がある。


(美鈴を置いて聞き込み調査する訳にはいかないし、どうしようか)


 じっと待っている事が苦手な俺は、今できる事をやろうとする。

 先ず本殿の中にあったラジオの電源を点けた。

 どの局にも繋がらなかった。

 

「ラジオさえやっていないのか……」


 先日、返ってきたばかりのスマホをジャージのポケットから取り出すと、ダメ元でネットに繋いでみる。

 ネットには繋げた。

 が、検索したら文字化けしたページしか出てこないので、使い物にならなかった。


「ネットがダメなら、電話だな」


 とりあえず、逸れた啓太郎に電話を掛ける。

 電話を掛ける事はできたが、繋がらなかった。

 ダメ元精神で小鳥遊に電話を掛ける。

 彼女はワンコールで出てくれた。


「…………も、もしもし」


「あ、もしもし、小鳥遊?」


「神宮ぅ!?」


 小鳥遊の裏返った声で耳がキーンってなる。


「え、ど、どうしたのよ、こんな夜更けに……もしかして、私とピロトークしたか……」


「単刀直入に聞く。お前は俺が知っている小鳥遊神奈子か?」


「え、何その哲学的な問い。あんた、頭おかしくなった?」


 どうやら俺が知っている小鳥遊みたいだ。


「正直に答えてくれ。今、そっちは雪積もっているか?」


「今、4月末よ?雪積もる訳ないじゃん。もしかして、ガチで頭おかしくなったの」


 この辛辣な物の言い方、間違いなく小鳥遊だ。

 多分、元の世界の彼女に電話が繋がったのだろう。

 これは良い機会だ。

 小鳥遊に伝言を頼む事にする。


「小鳥遊、伝言頼んでいいか?俺、諸事情で寮に帰れない状況に陥ってさ。寮長に暫く帰れない事を伝えてくれないか?」


「は?寮?何言ってんの?」


 俺が想定していた反応じゃなかったので、つい戸惑ってしまう。


「あれ?言ってなかったっけ。俺が桑原学園の寮生だって事」


「は?ガチで何言ってんの?あんた、一人暮らしじゃん」


「は?」


「てか、あんた、桑原学園の生徒じゃないでしょ。東雲高校の生徒でしょうが」


「………………あー、大体承知した。うん、そういう事か」


 今、俺と話している小鳥遊が俺の知っている小鳥遊でない事に気づく。

 恐らく彼女は"東雲学園に通っている平行世界の俺"の知り合いなんだろう。

 この世界にはいない上、寮長への伝言も頼めそうにないので、電話を切る事にする。


「ていうか、あんた、何で私の苗……」


「ありがと、小鳥遊。お前のお陰で少し状況が分かった」


「あ、ちょっと!」


 何か言いかけていたが、小鳥遊との通話を一方的に切る。

 今度は寮長に電話を掛けてみた。

 が、何回掛けても繋がらず。

 バイトリーダーや雫さんにも掛けてみた。

 彼女達も電話に出てくれなかった。

 なので、一応、念のために四季咲にも電話を掛けてみる事にする。


「ん?司か?」

 

 第一声でこの四季咲が俺の知っている彼女ではない事に気づかされる。

 なので、彼女がこの世界にいるかどうか試しに聞いてみた。


「四季咲、そっちは雪降っているか?」


「いや、降っていないんだが……司、何故、私の苗字を呼んでいるのだ?」


 そっちの世界の俺は四季咲の事を下の名前で呼んでいる事を理解させられる。


「あー、えと、それはだな……」


「というか、何故今日はバイトに来なかったんだ?幾ら電話をしても繋がらないし……一体、君の身に何が起きたというんだ?」


 食い気味に尋ねる別世界の四季咲。

 面倒なので、適当な事を言って、通話を切り上げようとした。


「あー、えと、おっぱいバフに行ってた」


「あ゛?」


 スマホからドスの利いた声が聞こえて来る。

 殺意と好意が入り混じった四季咲の声は俺に多大なプレッシャーをお与えになられた。

 

「あ、いや、ウソウソ。ジョークだよ、ジョーク。アメリカンジョークさ、アハハハ」


「いや、笑えないのだが」


 彼女の冷え切った声により、俺の背筋は凍てつく。

 え?何これ?俺、どういう状況に陥ってんの?


「司、付き合う前に私は言ったよな?浮気は許さないと。私以外の女とエッチな事をするなと。なのに、君は……きみは……」


 四季咲の声色が刺々しいものから弱々しいものに変わっていく。

 すると、啜り泣く彼女の声が通話口から漏れ始めた。

 どうやらガチ泣きしているらしい。


「なんで私以外の女とイチャコラしているんだ?イチャコラしたいんだったら、私とすれば良いだろ、バカ、アホ、スケベ。結局、君は私の事を性玩具程度にしか思っていないんだろ?性欲さえ解消する道具としか見てないんだろ?」


 どうやら違う世界の俺と四季咲は付き合っているらしい。

 そんな事実を把握しながら、俺は頭の中で言い訳の言葉を模索する。

 その時だった、俺のスマホの充電が切れたのは。


「あ」


 電源ボタンを長押しする。

 スマホはうんともすんとも言わなくなった。

 ごめん、違う世界の俺。

 彼女の手厚いフォロー、頼んだ。


「手掛かりなし、か……」


 スマホを仕舞いながら、俺は白い溜息を吐き出す。

 さっきの電話で分かった事はただ1つ。

 電話を掛けたら、違う世界の人に掛かってしまうという事だけだ。

 ……まあ、それだけ分かっても意味がないのだが。

 寝ている美鈴を横目に俺は本殿の床に寝そべる。

 とりあえず、美鈴が起きるまでの間、身体を休めよう。

 今、できる事はそれくらいだ。

 瞼を閉じた俺は筋肉痛に似た痛み──超身体能力を使った反動により生じた痛み──に苛まれる身体を休める。

 が、幾ら休もうと思っても、気持ちがソワソワし過ぎて眠る事はできなかった。



 ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、本当にありがとうございます。

 今週は月・水・金に更新しますのでお付き合いよろしくお願い致します。

 次の更新は明後日の19時頃に予定しております。

 よろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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